投資調査部　鈴木　英之

8月末の日経平均株価は16,887円40銭と前月末比1.9%上昇しました。7月下旬の日銀によるETF買い入れ額増加決定に対する評価はそれほど高くはありませんでしたが、マイナス金利深堀りが見送られ、銀行株等が上昇したこともあり、株式相場は大きな波乱もなく推移しました。8月下旬のジャクソンホール会合で、イエレンＦＲＢ議長が、米金融政策に対しどのようなスタンスを示すかが注目され、様子見気分が強まる場面もありました。しかし、同会合でイエレン議長等が利上げに前向きな姿勢を示したこともあり、月内に一時100円を割った円高・ドル安が一巡し、日経平均も月間騰落率プラスで切り抜けることができました。

個別銘柄の物色動向をみると、8月の当社売買代金ランキング（買い）では、日銀による追加緩和策としてＥＴＦの年間買い入れ額が3.3兆円から6兆円に増額されたことから、日経平均株価に寄与度の高い銘柄が人気化しました。ソフトバンクグループ （9984）が3位にランクアップ、ファーストリテイリング （9983）が新規に8位にランクインしています。「ポケモンＧＯ」人気は継続し、任天堂 （7974）が7月続き1位でした。
はじめてお取引された銘柄（現物）では、相変わらず株主優待銘柄の人気が高く、ビックカメラ （3048）が2位に、ＡＮＡホールディングス （9202）が3位にランクアップしており、吉野家ホールディングス （9861）が5位、ヤマダ電機 （9831）が6位、オリエンタルランド （4661）が7位に新規ランクインしています。また、台湾の鴻海（ホンハイ）精密工業による出資金の払い込みが完了したシャープ （6753）が10位にランクインしています。
また、はじめてお取引された銘柄（信用）では、8月権利確定の株主優待のつなぎ売り需要で、1位イオン （8267）、2位吉野家ホールディングス （9861）、3位ビックカメラ （3048）、4位サイゼリヤ （7581）、5位ミニストップ （9946）、6位ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス （3222）、7位クリエイト・レストランツ・ホールディングス （3387）に新規ランクインしています。
ETF/ETN人気ランキングでは、上位10銘柄の中で、日経平均株価に関する銘柄が5銘柄と人気でした。純金上場信託（現物国内保管型） （1540）が10位に新規ランクインしています。

9月の日経平均株価は買い先行でスタートしました。2日に発表された米雇用統計は、雇用者数が市場予想を下回ったため、米国の9月利上げ観測が後退し、米株高につながり、それを好感して日本株も買われました。しかし、雇用者数の下振れは円高・ドル安要因となるため、それが日本株の下押しとなる場面もあるようです。今後は21日の日銀金融政策決定会合や、FOMCを控え、日米の金融政策を意識した展開が続きそうです。日経平均株価は三角保ち合いをいったんは上放れているので、形の上では堅調に推移しても不思議ではないとみられます。