投資情報部　鈴木　英之

＜足元の株式相場の動き＞
2月の東京株式市場は、波乱という言葉が相応しい1ヵ月でした。月末の日経平均株価は前月比8.9%の下落（月足ベースでは続落）となりました。
新型コロナウイルスの感染は中国湖北省武漢市を中心に、1月中旬ごろから拡大が本格化しました。世界の感染者数は1/24（金）には1千人に満たない状態でしたが、1月末に1万人弱、2月末には約8万5千人まで増加しています。新型コロナウイルスは2月第4週以降、韓国やイラン、イタリアで感染拡大が加速し、パンデミック（世界的流行）へ移行する兆しをみせています。中国や欧州から地理的に離れていたこともあり危機感に乏しかった米国でも、少しずつ感染者数が増加し、サンフランシスコでは非常事態宣言を発令するに至りました。結局、2/20（木）〜2/28（金）のNYダウは7営業日続落し、この間の累計下落幅は3,938ドルに達しました。
NYダウをはじめ世界株安が連鎖する中、日経平均株価は2/21（金）〜2/28（金）には5営業日連続安となり、2/28（金）および3/2（月）には21,000円を割り込む場面もありました。
こうした中、我が国では政府が2/26（水）に、全国的なスポーツ・文化イベントの中止・延期を勧告し、2/27（木）には全国の小学校、中学校、高等学校について春休みまでの休校を要請する等、徐々に対策が動き始めています。また、2/28（金）には日銀総裁が「潤沢な資金供給に努める」とする異例の談話を発表し、同日には日銀が通常の4割増しに相当する約1千億円のETFを市場から買い入れるという動きを見せました。

＜2月に人気を集めた銘柄の「なぜ」、話題のポイントは＞
「SBI証券でのはじめての取引」では純金上場信託（1540）がトップとなりました。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、世界的に株価の波乱が続く中、安全資産として金の需要が高まるであろうとの投資家の読みが背景と考えられます。第2位には日本航空（9201）、第3位にはオリエンタルランド（4661）など、株主優待で人気の銘柄が新たにランクインになりました。株主優待等に関心の深い投資家の多くにとって、市場の波乱は買い好機に映った可能性がありそうです。
レバレッジを使ったはじめての信用取引では日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信（1570）が第2位から第1位にランクアップとなっています。月足データでみると、日経平均株価の高値を安値で割った比率は12.9%であったのに対し、同投信は32.2%です。値動きの大きさとレバレッジ効果の相乗効果で、投資家は大きな値動きを志向した形になっています。
SBI証券の売買代金ランキング（売り・買い）は、第1位は日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信（1570）で前月と変わりませんでした。第2位は、前月の第3位からひとつ順位を上げたソフトバンクグループ（9984）でした。基本的に、上位銘柄の組み合わせに大きな変動はありませんでした。
SBI証券のETF/ETN人気ランキングでは、日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信（1357）が、前月トップの日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信（1570）を抑えてトップになりました。結局、2月の日経平均株価は8.9%下落しましたが、この商品は19.1%上昇と、「お約束通り」に約2倍も逆方向に動きました。市場を弱気とみる投資家が信用取引を使わずに「買い」で大きな利益を確保できるチャンスを提供したことになります。
SBI証券のREIT人気ランキングでは第1位のインヴィンシブル投資法人（8963）第2位のジャパン・ホテル・リート投資法人（8985）、第3位のいちごホテルリート投資法人（3463）といずれも、先月の順位を維持しました。

＜当面の相場見通し・ポイント＞
政府の対策発動への期待もあり、3/2（月）の日経平均株価は6営業日ぶりの反発となりました。これを含め3月初頭の東京株式市場は総じて落ち着きを取り戻しつつあります。米国市場でも、主要中央銀行が緩和的金融政策で協調するとの期待（実際にFRBは緊急的に0.5%の大幅利下げを実施）に加え、米大統領選挙の民主党候補者選びで穏健派のバイデン氏が勢いを盛り返したこともあり、反発の様相を呈しています。
ただ、新型コロナウイルスが終息する兆しを見せた訳ではありません。むしろ、欧州ではイタリアのみならず、フランスやドイツ等へも拡大する兆しをみせています。供給能力の減退や需要の減少が、世界経済へどこまで影響を及ぼすのか、着地点も不透明なままであると考えられます。全般的な株価はまだまだ波乱含みであると予想され、物色対象の選定には十分気を付けるべきと考えられます。