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2019年の国内株式
中国を中心とした減速感が顕著だった2018年スマホの“第4の眼”とも言われるToF センサーに期待感が
調整色が強まった2018年
2018年はスマホ市場の減速と米中貿易摩擦の影響に対する懸念に翻弄された一年でした。思い返せば1年前の2017年には、スマホやパソコンが成熟しても、AIを活用したIOTや自動運転システム、ロボット、仮想通貨関連などの新用途の拡大が続くこと、自動車の電動化(EV関連)が進むこと、などにより半導体市場にはサイクル(好・不況)がなくなり右肩上がりに成長が続くという、いわゆる“半導体スーパーサイクル論”がもてはやされました。ところが、2018年の半導体市場ではメモリーやマイコンなどで調整色が強まり、液晶ディスプレイも有機ELパネルへのシフトも加わり苦戦しました。FA関連も人手不足や品質に対する要求度の高まりといった構造的な変化によりスマホが減速しても自動化投資は拡大するという楽観的な見方が2018年 年初には多かったもの、月を経るに連れて中国を中心に減速感が顕著に現れました。
2019年はどうなるか?
2018年の株価や業績動を振り返る中で想起されるのは、“チャイナショック”があった2015年の翌年である2016年から2017にかけて、中国関連で売られた銘柄の多くが復活していたことです。もちろん、マクロ景気や米中貿易摩擦が、これ以上悪化しないことが条件ですが、減速が見られるのはスマホ関連の一部に限られること、スーパーサイクル論や自動化投資を必要とする構造的な前提条件の多くが、現在も続いている事を考慮すると、2019 年に、今年、大きく売られた半導体、FA関連が復活する可能性は、それほど低くはないかもしれません。
2019年の注目テーマは?
スマホ市場の台数成長率は鈍化傾向にあります。また、スマホ1 台あたりの BOM(Bill of Material、部材費)の上昇も限界に来ています。このため、中長期的には“脱スマホ依存”が電機セクターには重要なテーマとなります。
ただし、スマホも依然として巨大市場であるため無視することができません。そこで注目したいのが、スマホの“第4の眼”とも言われるToF センサーです。ToF センサーは、光源から発した光が、対象物に反射してから、センサーに届くまでの光の飛行時間(時間差)を検出することにより、対象物の距離を測定(測距)するセンサーです。スマホに搭載されることで顔認証、AR(拡張現実)/MR(ミックスト?・リアリティ)等に活用されることが期待されます。
また、脱スマホ依存という観点では、IOT、AIの社会インフラ(水処理、電力インフラ、鉄道など)や製造現場での活用の広がりが注目されます。
最後に、米中貿易摩擦が簡単には解消しないことを考えると、米中貿易摩擦の激化から「漁夫の利」を得るという逆転の発想も日本の電機セクターには必要となりそうです。知的財産権の保護や国防上の理由などから、先進国市場で中国企業を締め出す動きが既に顕在化しています。そのことが、5G移動体基地局を製造する日本の通信インフラメーカーにとって追い風になるのか、また、今後、こうした事例が他にも波及していくのかが注目されます。さらに、日本では一部の大手端末メーカーに人気が集中していましたが、割高感が強まってきたこと、端末と通信料金の分離プランが本格化しつつあること、などから値ごろ感のある日本製端末の人気が高まる可能性も考えられます。今後、こうした変化にも注目したいと思います。
和泉 美治(いずみ よしはる)
SBI証券 企業調査部(エレクトロニクス、半導体・電子部品担当 シニアアナリスト)
1983年にエルコインターナショナル(現:京セラエルコ)に入社。1990年に英国バーミンガム大学にてMBAを取得。1991年よりUBS証券、JPモルガン証券の株式調査部で産業エレクトロニクス、民生エレクトロニクス、半導体・電子部品等の業界・企業分析に携わってきた。大型株に加え、アナリストカバレッジの少ない中小型の調査にも注力。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。2008年から2012年Institutional Investor誌アナリストランキング、日経ヴェリタスでも常に上位にランクイン。2018年4月より現職。
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