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2019年の国内株式
キーワードはCASEとMaaS
モバイル端末化する車を使った様々なサービス分野の台頭が本格的に始まる年
2019年の自動車セクターの展望
前半は小じっかり、後半は難しい局面が多くなると予想する。世界の自動車需要は、日本が10月の消費税引き上げを睨み、上期に駆け込み需要が発生するものと思われるが、下期はその反動減により弱含み推移であろう。米国は既に頭打ちの状況であるが、金利上昇が影響し、4年ぶりの1,700万台割れが視野に入る。中国も足元の減速傾向が一段と加速する恐れがある。東南アジアやインドなどの新興国は、堅調な販売増が続くと見られるが、伸びは小規模に留まろう。このような需要動向の中、益々環境規制が厳しくなり、EVやPHEVの強制的な販売増が課せられるか、環境性能に優れたより燃費の良い小型車に需要の比重が移ることで、製品構成の悪化も予想される。収益的には更に厳しくなる年となろう。
2019年のキーワードはCASEとMaaS
Connected(コネネクテッドカー)・Autonomous(自動運転)・Sharing(シェアリング)・Electrification(電動化)の頭文字を取ってCASEと呼ばれる戦略分野での競争が更に加速される。またMaaS(Mobility as a service:サービスを主体とした車の役割)と呼ばれる、今までのハード(開発・生産・販売)を主体とした自動車産業ではなく、モバイル端末化する車を使った様々なサービス分野の台頭が本格的に始まる年となろう。GoogleやUber、GrabやAmazonといった今までは自動車産業とは分野を異にしていた企業群との競争、ないしは彼らとの共同事業が拡大し、トヨタとソフトバンクの提携に見られるような、異業種との競争・共同が、自動車や自動車部品業界に新しいビジネスモデルを与えるのか、はたまた今までのキャッシュカウの基盤を失うのか、東京五輪の前年に当たる2019年は、その予兆のようなものが見えるかもしれない。
無人運転の実用化が始まる
2019年はまた、現在Level2の段階にある無人運転が飛躍的にその技術を向上させる年となる。Level3どころか、ほぼ完全無人運転に近いLevel4の実際のサービスが、2020年の東京五輪で実用化されるのを前に、シェアリング・タクシー・物流・清掃などの分野で、多くの無人運転技術の実用化が始まる。GPAやセンサー・画像認識や遠隔操作などの技術の進歩に加え、人手不足が顕在化する日本に於いて、また交通事故数の削減や環境対策の一環としての自動運転技術は、公道での実証実験を経て、商業化への最終ステップを踏み出す年となる。これは道路だけに留まらず、空飛ぶタクシーなど、ドローン技術の飛躍的な発達が進む。これら技術やその基盤となるデータをバックアップするため、サイバーセキュリティーやコネクテッド技術の実用化も進む時代に入る。
遠藤 功治 (えんどう こうじ)
SBI証券 企業調査部(自動車、AI・ロボット担当 シニアアナリスト)
1984年に野村證券入社、以来、SGウォーバーグ、リーマンブラザーズ、クレディスイス他、外資系投資銀行にて活躍、証券アナリスト歴は通算32年に上る。うち、約27年間が、自動車・自動車部品業界、3年間が電機・電子部品業界の業界・企業分析に携わる。その間、日経アナリストランキングやInstitutional Investors ランキングでは、常に上位に位置(2000年日経アナリストランキング自動車部門第1位)。その豊富な業界知識と語学力を生かし、金融業界のみならず、テレビや新聞・雑誌を中心に、数々のマスコミ・報道番組にも登場、主に自動車業界の現状分析につき、解説を披露している。また、“トップアナリストの業界分析”(日本経済新聞社、共著)など、出版本も多数。日系の主要な自動車会社・部品会社に招かれてのセミナーや勉強会等、講義の機会も多数に上る。最近では、日本経団連や外国特派員協会での講演(東京他)、国連・ILOでの講演(ジュネーブ)や、ダボス夏季会議での基調講演など、年間10回前後の海外出張を通し、海外の自動車・自動車部品メーカー、また、大学・研究機関・国連関係の知己も多い。2016年7月より、SBI証券に移籍、引き続き自動車・自動車部品関係のリサーチを担当すると供に、最近では、新素材、自動運転(ADAS)、人工知能(AI)、ロボット分野のリサーチにも注力している。ネットメディア大手の、“Japan in depth”の自動車業界関連記事も担当、幅広い読者に支持を得ている。
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