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2024-06-17 07:07:30

銅価格急騰の背景

2024/5/22
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

4月1日以降、非鉄金属セクターには積極的な買いが入り、原稿執筆時点の前期末からの価格上昇率は+15.2%と、エネルギーセクターが+0.6%、貴金属セクターが+7.0%であることを考えるとかなり極端な価格上昇になっている。当コラムでも3回連続で非鉄金属について取り上げているが、LME非鉄金属のベンチマークである銅の価格の上昇率は+15.0%と亜鉛の+23.0%に次ぐ上昇となっている。
非鉄金属価格の上昇は複数の要因が重なったことによるものだが、今回の価格上昇は投機的な取引の加速の影響が大きいと考えている。弊社が重要と考えてその説明力を分析している対象55項目の中で最も価格に対する説明力が高いのは投機筋のネット買い越しポジションであり、次いでドル指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数、独IFO景況感期待指数と続く。フィラデルフィア連銀製造業景況指数や独IFO景況感期待は、製造業の景況感の先行指標であるため、将来の銅需要動向の期待指数であり米欧の景気回復への期待がそれなりに非鉄金属価格を押し上げていることが分かる。しかし、投機筋のネット買い越しポジション、ドル指数は明確に銅の需給ファンダメンタルズ要因ではなく、実需「以外」の要因だ。2024年4月24日付けの「非鉄金属価格高騰〜期間構造の変化に注目」、2024年5月1日付けの「アルミ価格高騰と欧米の制裁の影響」でも解説しているが、今年3月31日に発表された中国製造業PMIの改善や、米経済統計の減速に伴う利下げ期待の高まりなどが材料になり、投機筋がショートポジションを一気に買い戻しせざるを得なくなったことが影響している。その後、日本政府が為替市場で介入を行ったと見られ、それがドル安を誘発したことも金融面で銅価格を押し上げた。
銅の場合は、世界供給の約1%を占めるファースト・クアンタム・ミネラルズがパナマに保有する中南米最大の「コブレ・パナマ鉱山」が閉山に追い込まれたことにより、鉱石の供給が減少したことを固有の材料として、プラスαで価格上昇が意識された。規模や業態にもよるが、鉱山が生産した鉱石を精錬業者が精錬して精錬銅に加工していくが、この鉱石の段階での供給が減少した影響が大きい。

しかし、こうした鉱山から掘り出した鉱石を製錬して製造される精錬銅の需要は決して強いとは言えない。商品の場合、為替や債券、株と異なり、実際の現物の需給バランス関連統計の発表は2〜3ヵ月程度の時間差の遅れでしか発表されないため、足下の需給環境を把握するためには、一般的に、期間構造や現物プレミアム動向が参考になる。今回のレポートではよりデータが取得しやすい期間構造に焦点を当てるが、期間構造がコンタンゴの場合(順ざや・順イールドの場合)は足下の精錬銅需給バランスがタイト化していないことを示唆している。通常、現物(キャッシュ)価格と最も取引の流動性が高い3ヵ月先渡し取引との価格差が需給バランスを占う上での指標となる。銅などの先物価格は現物価格に金利と倉庫の保管料が上乗せされるため、3ヵ月後に先渡しされる価格の方が高い。仮に金利が年率10%、倉庫の保管料が年率10%、銅の現物価格が10,000ドルだとすれば、3ヵ月後の受渡価格は10,000ドル×(1+(10%+10%)×3ヵ月÷12ヵ月)の10,500ドルとなる。これが通常の状態だが、仮に現物の需要が増加、需給バランスがひっ迫した場合、先物の価格が10,500ドルで変わらないまま現物価格が12,000ドルに上昇するということが起こる。銅を利用する工場は「価格が高いから銅を調達して製品を作りません」という訳にはいかないため、需給がひっ迫する中では我先に現物を確保する動きが強まるからだ。そのため先物価格が現物価格よりも高い状態の場合は、現物の調達がそれほど困難ではないことを意味し、逆に現物の価格の方が先物価格よりも高い場合は、現物の調達が困難であることを意味する。現在、LME銅市場はコンタンゴの状態であるため、需給が緩和していると考えられる。実際、グラフの通りLME指定倉庫在庫は減少しているが、期間構造は3ヵ月先渡し価格の方が高くいわゆる「コンタンゴ(順鞘、順イールド)」の状態になっている。そのため、足下の価格が上昇したとしても、それはコブレ・パナマなどの鉱石供給減少に伴う上昇、というよりは投機筋の買いによる上昇と考える方が妥当だろう。なお、米COMEX銅は5月から急速にバックワーデーション(逆鞘、逆イールド)が進んでおり、局地的に精錬銅が不足している市場が発生しているのも事実で、この状態が継続するかどうか注視する必要がある。

出所:LME

仮に投機筋の買いが価格を押し上げているとするならば、物価上昇でやはり金融引き締めをせざるを得ない、ないしは株価が調整する、パナマなどの鉱山生産・鉱石供給の再開といった事態が起きれば調整する局面はあると考えられる。しかし、この4月以降の価格上昇で重要なチャートポイントを上抜けしてしまったため、下落にはそれなりに材料が必要なこと、この状況においても脱炭素が継続すること、実際に鉱山生産の回復に遅れが出ていることから当面は高値維持とならざるを得ないと予想する。

新村 直弘

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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