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2024-06-02 02:23:43

小麦市場動向分析〜2024年5月米農務省需給報告より

2024/5/16
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

先週5月10日に米農務省より月例の需給報告が発表された。米農務省のレポートは世界2位の穀物(穀類)生産国(1位は中国)である米国が作成する見通しであり、同レポートでは主要生産国・輸出国・消費国の生産や消費動向が詳細に解説されていることから注目度が高い。特に米国のシカゴ商品取引所(CBOT)での取引価格は、穀物取引のベンチマークとされていることも、同レポートへの注目が高い理由の1つである。

レポートの構成は自国、米国の状況を詳述し、その後世界の動向についてデータが開示される形となる。ただこれだけだと数字の羅列になるため、穀物市場全体がどのような状態になっているか、前月の統計からどの程度何が変更されたか、その要因は何かといった項目に関して分析をする必要が出てくる。当コラムでは小麦を対象に今回の米需給報告を紐解いていきたい(なお、今後数回にわたってトウモロコシと大豆についても解説をする予定だ)。

米国の小麦需給は緩和の見通し
まず2023/24年度の米国の旧穀の需給予想を見てみよう。なお、穀物市場では収穫時期の違いなどから新年度が始まる月が穀物の種類や国によって異なる。米国の小麦の場合は5月末が2023/2024年の年度末であり、6月1日が新年度(2024/2025年度)となる。旧穀は新年度よりも前(この例では2024年5月31日以前)に収穫されたものを指し、具体的には米国では昨年6月〜8月に収穫された冬小麦、8月〜9月に収穫された春小麦が該当する。新年度以降に収穫されたものを新穀と呼んでおり、云わばこれから収穫される小麦である。

ところで小麦は用途により品種が異なるが、硬質小麦とは強力粉に用いられる小麦でパンや中華麺などに、軟質小麦は薄力粉に用いられる小麦で、ケーキやお菓子などに用いられる。小麦は米国では2回生産され、播種(種まき)の時期で冬小麦と春小麦に分けられる。冬に播種が行われるものが冬小麦、春に播種が行われるものが春小麦と呼ばれ、生産量は冬小麦の方が多い。その他、先物市場は存在しないが、パスタ用のデュラム小麦はよく知られている。なお、米国には小麦を取引する先物市場は2か所、3品種あり、CBOTでは軟質冬小麦及び硬質冬小麦が上場されている。前者は略称のSRW(Soft Red Winter)あるいはシカゴ小麦、後者は以前取引されていた旧カンザスシティ商品取引所に由来してKC WheatあるいはHRW(Hard Red Winter)、カンザス小麦と呼称されている。また硬質春小麦(Hard Red Spring、HRS)はミネアポリス穀物取引所に上場されている。

米国の小麦旧穀の期末在庫は輸出需要が前月から+10百万ブッシェル(※)増加する見通しであることから、期末在庫の水準は▲10百万ブッシェル減少する見通しとなった。

次に2024/25年度の米国の新穀需給について、米国の全小麦の生産量は収穫面積、単収増から前穀物年度比+46百万ブッシェル増を予想している。但し増加の大半は硬質冬小麦であり、軟質冬小麦については今年度比▲105.4百万ブッシェル減(▲23%)の343.6百万ブッシェルに留まる見込みで、市場の予想平均も下回った。

小麦全体では生産量の増加から期末在庫は+78百万ブッシェルの積み増しとなり、米国の期末在庫率は40.4%(前年比+2.9%)と上昇が見込まれている。在庫率とは年度末の在庫水準をその年の需要で割ったもので、この数字が大きければ需給が緩和、小さければ需給がタイトであることを示唆する。この統計では在庫率が上昇するため価格の下押し要因となる。供給量を需要量で割った需給率は価格に対する説明力が高いが、71.3%(前年比▲1.4%)と前年から低下見通しであり需給率の低下も価格の下押し要因となる。

※1ブッシェルとは、約35リットルの容器に入る穀物の重量のこと。米農務省の換算では小麦・大豆は0.027216トン、トウモロコシは0.025401トンとなっている。

世界全体の小麦需給はタイトさがやや緩和
世界全体では、小麦は今月末が23/24穀物年度の期末となるので微調整の域は超えないが、旧穀の輸出シェアが24.8%(23/24年見通し)に達する首位ロシアの輸出見通しが53.5百万トンと前月見通しから+1.5百万トン上方修正されている点が目につく。小麦の輸出市場においては、ロシア(24/25輸出シェア見通し24.1%)の他、EU(15.7%)、カナダ(11.3%)、豪州(10.4%)、米国(9.8%)、ウクライナ(6.5%)が主要輸出国となる。そのため、今回のロシア・ウクライナの戦争の小麦市場への影響は小さくない。

生産面ではロシア(前年比▲3.5百万トン)、ウクライナ(▲2百万トン)の減産をカナダ(+2百万トン)、豪州(+3百万トン)の増産が相殺し、世界全体では前年比+10.5百万トンの増産が予想されている。主要輸出国であるロシア、ウクライナの生産減から輸出見通しも両国合計で▲5百万トンの減少となるが、米国など他の主要輸出国がこれを補い、全体では+34万トンの小幅な増加が見込まれている。以上の結果、世界全体の需給バランスは▲418万トンの供給不足と前年の▲1,261万トンから供給不足幅は縮小の見込みであるが、需給率は80.0%と前穀物年度からは+0.3%の上昇と、価格には上昇圧力が掛かりやすくなることが想定される。

出所:USDA

今年は異常気象と引き続きロシア・ウクライナ情勢が鍵
この需給報告を受けて5月10日当日の小麦市場は、軟質冬小麦(=シカゴ市場)が強気で、ベンチマークであるシカゴ小麦が急伸した。今後の展開であるが、本需給報告を前提として生育途上の冬小麦及び現在進行中の春小麦の作付け進捗及び作柄の推移が焦点となるが、春小麦の新穀需給見通しは過去の単収(単位面積あたりの収穫量)トレンドが継続したと仮定した「トレンド単収」を前提に予想が策定されているため、この通りになるか否かは生育期の順調な天候推移が前提条件となる。また冬小麦は実地検証をベースに生産量が推定されているが、今後の天候次第で収穫量は大きく左右する。

地球規模の天候パターンは現在エルニーニョが終息しつつあり、夏前には中立状況、また夏以降はラニーニャに移行する可能性が高まっているが、ラニーニャがもたらす天候パターンの具現は秋以降になると予想される。そのため、短期的には目先の天候、中期的には主要産地で乾燥傾向が起こりうるのかが大きなポイントとなろう。投機筋は春先まで膨らませて来たショートポジションの手仕舞いを現在急いでいる状況であり、目先の天候パターン次第ではこの後買い先行に移行して行くシナリオも否定出来ない。夏場まで小麦市場は上昇リスク>下落リスクと見たい。

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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