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2024-04-19 18:50:34

小麦の価格上昇リスクは残存

2022/7/11
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

小麦生産に大きな影響を及ぼすと考えられているラニーニャ現象が発生し、不作への懸念が高まっていたところに、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻の影響で、ウクライナ産の小麦輸出がほぼ停止している状態となり小麦の価格は一時14ドルを上回っていた。しかし、5月中頃から下落に転じ、今は200日移動平均線を割り込み、下げ基調を強めている。価格下落の要因は輸出が不可能とみられていたウクライナ産の小麦が恐らく陸路を通じて輸出されており、その数量がそれなりに有ると考えられること、黒海の「蛇島」を巡る攻防でウクライナが同島を奪還、ウクライナからの小麦輸出が再開されるのではとの期待が高まっていることが考えられる。

これに加えて、米国の金融引締め強化観測が強まっており、2月のロシアのウクライナに対する軍事侵攻を受けて積極的に買い上がってきた投機筋が、利益確定の動きを強めていることが金融面でも価格を下押ししていると考えられる。投機に焦点を当てると、概ね2月のロシアの軍事侵攻前の水準まで小麦は調整しており、さらに下落するかどうかは今後の生産・供給動向に左右されることになろう。

しかし、6月の米農務省の需給報告をみるに、基本的に世界の小麦の需給バランスはまだタイトであると考えられる。2022-2023穀物年度の世界の小麦の需給バランスは、2021-2022年の▲817万トンの供給不足に続く、▲943万トンの供給不足が見込まれている。2年連続で供給不足となるのは2006-2007、2007-2008年以来のことだ。

出所:USDA

穀物相場動向を占う上で弊社は供給を需要で割った「需給率」を重要な指標として参考にしている。この数値が上昇するときは、1.供給が減少する、2.需要が増加する、3.1.2.の両方が起きる、ことになる。即ち需給がタイトになるとこの数値が上昇する。今のところ米農務省の数値を参考にすると、小麦の需給率は78.7%と前年の77.9%から0.8%程度上昇することが予想されている。過去10年のデータを元にすると、需給率1%の上昇でブッシェルあたり40セント程度上昇するため、見通し通りの生産・需要となった場合でも2022年の平均価格は2021年比で上振れする可能性が高い。全体を俯瞰すると、やはり2022年〜2023年にかけての小麦価格は高値を維持すると考えるのが妥当だろう。

出所:USDA、CBOT

恐らく小麦の動向を占う上で、しばらく重要になるのが、冒頭の下落要因として挙げている輸出動向であるが、ロシアの軍事侵攻で南部の耕作が事実上不可能になっているウクライナの生産見通しは、前年比▲1,151万トンの2,150万トンに激減する見通しである。同国の輸出の見通しも前年比▲900万トンの1,000万トンとなる見込みだ。ただ、この10年の穀物年度の輸出平均が1,544万トンであることを考えると▲544万トンも減少しており、ウクライナが置かれている状況が厳しいことに変わりはない。一方、ロシアは生産が+584万トンの8,100万トン、輸出が+700万トンの4,000万トンが見込まれており、輸出の多くは同盟国の中国、軍事的にも繋がりの強い中東・北アフリカ地区向けになるが、全体で見た場合ウクライナからの供給減少の多くを相殺出来る見込みとなる。世界全体でもカナダ(+810万トン)、EU(+650万トン)、カザフスタン(+100万トン)などの輸出増加が、インド(▲153万トン)、米国(▲82万トン)、豪州(▲350万トン)、アルゼンチン(▲250万トン)の輸出減少を相殺するため、輸出は前年比+520万トンの2億459万トンとなり、輸出市場での供給は数字の上ではそれほど問題がないということになる。

しかし、基本的には生産から需要を引いた残りが輸出に回される訳だが、主要生産国で生産下方修正や輸出停止などの動きがみられており、米海洋大気庁の見通しでは、58-59%の確率でラニーニャ現象は今年の冬まで続くと予想されており、生産が下触れするリスクは小さくない。また、ウクライナの港から本当に小麦の輸出できるのか、に関しても戦闘状態に左右されるため、なんとも言えないところである。調達面で問題がなかったとしても、ロシアからの肥料輸出の減少やガス供給の制限・価格高騰で肥料の価格が上昇しており、この生産コストの上昇が小麦価格の押し上げ要因となる。恐らくこれら諸々のリスクが顕在化するのは、北半球の収穫期である秋以降となる。足下の小麦価格は下落しているが、決して危機が去った訳ではないと考えるべきだろう。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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