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2024-04-12 23:50:19

銅価格の調整はそろそろ終了か

2022/5/25
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

中国景気の指標の1つである「ドクター・カッパー」銅が急落、一時3ヵ月先渡し価格は9,000ドルを割り込んだ。これまでは供給面が意識される中で上昇してきたが、懸念していたほどの供給途絶になっていないことが確認され、結果的に景気に焦点が当たる形になり水準が切り下がった。景気を材料とする下落はその他のリスク資産も同様であり、主な材料は以下の通りだ。

・景気の循環的な減速(昨年後半に製造業PMI等で確認できる各国の景況感は既にピークアウトしている)
・米国の金融引締め加速とそれに伴う経済オーバーキル
・中国のロックダウンによる工業活動の減速
・中国の景気減速とロシア問題を背景とする欧州の景気減速

といったところであり、現状の改善がなければ非鉄金属を含む工業金属の価格は下落する可能性が高い。なお、足下の銅価格はLME指定倉庫在庫の動向よりもS&P500との連動性が高く、需給ファンダメンタルズというよりは市場のセンチメントに左右されている可能性が高い。実際、LME指定倉庫在庫の増加傾向は続いているが、在庫の増加ペース以上に水準が切り下がっている。このことは現物需給以上にセンチメント(パニック売り)が価格を左右していたことの証左だ。また、米国が急速に進める方針のQTも先々の流動性を低下させるとみられ、このことも銅価格下落に寄与した。米国の金融市場の流動性の指標であるシカゴ連銀金融環境指数も需給タイト化を示している。

出所:シカゴ連銀、LME

では需給面の影響がないのかといえばそうではなく、中国の金融緩和姿勢の強化に伴い人民元が対ドルで急速に水準を切下げており「輸出に有利だが、輸入には不利」な環境になっている。人民元建てのLME銅価格は過去最高水準で推移しており、価格上昇が需要を減じる「レーショニング」を引き起こしていると考えられる。このことは中国国内で足下、ダブついていると見られる現物の海外流出を加速させ、LMEベース価格の押し下げに寄与、LME上海のスプレッドは縮小している。逆に言えばそろそろ輸出に伴う裁定取引の機会はなくなりつつあり、中国からの輸出は減少する可能性があるということになる。

しかしFRBは景気をオーバーキルさせるほどの利上げ・QTの方針を微調整する可能性はある。また、ある意味人為的に行われている中国のロックダウンも、それに伴う景気減速が顕著になると、3期目を目指す習近平国家主席の将来の政権での自由度を低下させるため、早晩解除される可能性は高い。そして恐らく、ロックダウン解除後には景気刺激のための対策が打たれると予想され、銅需要が増加すると見られる。

さらに、ここまでの下落で価格上昇のドライバーだった投機筋の買いポジションの解消が進んでおり、ポジションが軽くなっているため、センチメント転換時の買い戻し余地はあると考えられる。以上を勘案すると、銅価格は再び上昇に転じると予想される。しかし、米金融引締めが続き、景気も循環的に減速するとみられることから年末に掛けては再び水準を切り下げる展開になるのではないか。

出所:LME

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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