今週の株式見通し(2023/3/6〜3/10)
今週(2023/3/6〜3/10)の日経平均株価の予想レンジは27,850円-28,400円。3/3の米国株式相場は米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ観測が後退し、大幅続伸となった。米10年債利回りは節目の4%を割り込んでおり、東京株式市場はグロース株への買い戻しが先行しそうだ。3/7にパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長による米上院銀行委員会公聴会での証言があり、タカ派的かハト派的な内容かが焦点となる。日銀金融政策決定会合(〜3/10)や黒田日銀総裁会見、米雇用関連指標の発表、メジャーSQなど重要イベントが目白押し。良くも悪くも変動率が高まる可能性が高く、3月相場では重要週となる。
直近の経済指標では、米2月ISM製造業景気指数は低調だった一方、中国2月製造業PMIは2カ月連続で改善し、約10年ぶりの水準と対照的な結果となった。中国の上海総合指数を米国のS&P500で割った相対指数でみても、去年の日経平均株価が下げる場面では上海総合指数の相対的な強さが下値を支えてきた(図表1)。
今年の業種の物色面からも中国頼みがうかがえる。最近、流行りの株価純資産倍率(PBR)1倍割れの企業を多く含む業種が上位に目立つが、1倍を上回る業種でも機械や電機といった中国景況感と関係が強いハイテク業種が入っており、年初からは中国の景況感改善を織り込む動きが続いている。機械や電機は昨年1年間で大きく下げた業種で出遅れ感があることや、日経平均株価への寄与が大きい業種でもあり、中国の景況感改善は期待のポイントになる。
一方、米金利動向に株式市場がかく乱させられる不安感は残る。かつてほど金利が上昇しても株安連鎖は生じていないが、中国の景況感の改善が続く場合でも米長期金利がこれ以上上昇すると、株価の上値を抑える要因になる。
ただ、この不安は期待の裏返しだ。米10年債利回りとRSI(相対力指数)をみるとヒントがある。利回りは去年12月の高い水準を明確に上回り、一時4%に乗せる局面があった。一方、相対力指数の方は12月の水準を上回れずにピークアウトの兆しも出ている。去年、利回りが低下局面に移る前にも相対力指数が先にピークを打つ先行サインとなった経緯がある。このところは月ごとに上昇と低下を繰り返していることも踏まえると、3月は低下する局面入りを予想することができそうだ。
日経平均株価は過去30年程度のデータでは、3月は12カ月のうちで、高値と安値の変動率が11%と最も大きくなりやすい月だったことがわかる。2月は3%程度も動いていないため、短期的に米10年債利回りが低下に向かえば、株価の意外高も考えられる。
図表1:日経平均株価と米中株価の相対力指数(2022/7/1-2023/2/27)
- 出所:QUICKよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表2)は2月につけてきた取引時間中の高値(ザラ場高値)を更新。3/3は前日からマドを開けて高寄りし、上値を試す展開となった。25日移動平均線(27,510円 3/3)が横ばいに変わる局面入りが近かったことで、3/3の動きはポジティブである。昨年8月高値を起点に11月や12月の戻り高値を通る右下がりの抵抗線も上抜けた。1月からの上昇基調が続いていることが確認できたことで、目先の調整を入れながらも上値目線を継続か。ボリンジャーバンド(20日線)でもプラス2シグマを終値で上回るトレンド発生サインがみられ、2/22の陰線によるマイナス2シグマ割れがヘッドフェイク(バンドが縮小から拡大に変わる直前、一時的にトレンドと逆方向にブレイクアウトすること)となった可能性が高い。
一方、12/16の急落で形成したマド埋め(27,987円)ならずとなった点や、昨年11月後半と同様に75日移動平均線(27,287円 同)が上向きづらい局面にあり、2月から水準をやや切り上げるもののモミ合い気味の動きが続くパターンも考えられる。
上値メドとしては、心理的フシ(28,000円)、12/14高値(28,195円)、11/24高値(28,502円)、8/19安値(28,913円)など。短期的な下値メドは、25日移動平均線や27,300円前後、2/22安値(27,046円)、1/23高値(26,938円)などがある。
図表2:日経平均株価の日足チャート(2022/7/1-2023/3/3)
- 出所:QUICKよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
主要な国内経済指標の発表やイベントでは、2月景気ウォッチャー調査(3/8)、日銀金融政策決定会合(〜3/10)、10-12月期GDP改定値、2月都心オフィス空室率、2月工作機械受注(3/9)、黒田日銀総裁会見、メジャーSQ、2月企業物価指数(3/10)などがある。
国内企業の決算では、アスカネット(3/6)、アイル、ファーマフーズ(3/7)、ステムリム、楽天地、Bガレージ、ミライアル(3/8)、積水ハウス、菱洋エレク、鎌倉新書、テンポスHD、アイモバイル、サトウ食品、Casa、アルチザ(3/9)、クミアイ化、ラクスル、シーイーシー、ソフトウェアサー、丹青社、gumi、オハラ、サムコ、フリービット、鳥貴族HD、シルバーライフ、トーホー、神島化、ユークス、HEROZ、エイチーム、エッジテクノ、ケア21、トビラシステム(3/10)が発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、米1月製造業受注(3/6)、中国2月貿易収支、パウエルFRB議長が米上院銀行委員会公聴会で証言(3/7)、米2月ADP全米雇用リポート、米1月貿易収支、米10年国債入札(3/8)、中国2月生産者物価指数、中国2月消費者物価指数(3/9)、米2月雇用統計、米2月財政収支(3/10)などがある。
今週の注目銘柄!(3/6〜3/10)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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2760 | 9,100 | 7,450 | 東京エレクトロン系列の半導体商社。扱いは米国製が主で産業用に強い。半導体商社株はPERが低めということもあり、米金利が上昇してグロース株が嫌われる局面でもネガティブな反応はあまり見られない。配当利回りも3.8%程度ある。株価は2月に入っても右肩上がりの上昇が続いている。上場来高値は2021年につけた9,270円。今月に入って8,000円台に乗せてきており、上場来高値が射程圏内に入っている。直近の高値圏推移であるがゆえの好需給の側面もあり、9,000円台や大台の1万円に向けて騰勢を強める展開が予想される。ターゲットは9,100円、ロスカットは7,450円 | |
4180 | 2,550 | 1,690 | AIを活用した販促分野のサービス開発などを手がける。今期は先行投資費を増やしつつも、大幅な増収増益を見込む。昨年12月には東証プライムへ市場変更。時価総額1,000億円以上かつ、成長性も備えていることから、機関投資家からの注目も高まりやすいと考える。株価は昨年5月に695円まで落ち込んだが、その後は上昇トレンドに移り今年2月半ばには一時2,100円を回復。同月後半からはグロース株売りに巻き込まれたものの、75日移動平均線付近で下げ止まり反発している。出来高も以前より増えてきており、活発な商いとともに上昇継続の展開を予想する。ターゲットは2,550円、ロスカットは1,690円 | |
4477 | 375 | 255 | 社名にもなっているECプラットフォーム「BASE」の運営などを展開している。今期は積極的な投資を抑制する方針であり、会社計画のレンジ上限では各損益とも赤字幅縮小の予想。売上高も上限で2ケタの伸び率を見込む。赤字続きだが、現金200億円以上を持つ隠れたキャッシュリッチ企業でもあり、今後の資金有効活用に期待したい。株価は長らく下落が続いていたが、2月上旬に75日移動平均線上へ浮上。過去の推移では75日移動平均線上での推移が長続きしなかったものの、今回は一度割り込んだ後にすぐ下げ止まり、再び上昇する展開となっている。一目均衡表の抵抗帯(雲)も上抜けてきたことから、トレンド転換とみた買いが強まると予想する。ターゲットは375円、ロスカットは255円 | |
6201 | 9,000 | 7,840 | トヨタグループ。フォークリフト、車両組み立て、コンプレッサー、ディーゼルエンジンなどを手がける。株価は昨年9月に6,820円まで下落した後は上げ下げを繰り返しながらも上値と下値をともに切り上げている。昨年11/28につけた7,980円は200日移動平均線に頭を抑えられる格好となったが、その後の調整を経て持ち直しが鮮明になっている。直近は一時8,330円まで上昇し、昨年3月につけた戻り高値8,830円が視野に入ってきた。これから上向き角度が強くなってくる25日移動平均線を支持にしながら上値追いが期待できそうだ。ターゲットは9,000円、ロスカットは7,840円 | |
8016 | 440 | 310 | 複数ブランドを展開するアパレル大手。コロナ禍からの回復に加え、値引き販売を極力抑える販売施策などにより利益率が改善傾向。構造改革の進展によりさらなる業績改善に期待したい。配当利回りは3.5%、PBR0.6倍台と、昨今の物色対象になりやすいバリュエーションであることにも妙味があると考える。株価はコロナショックによる下落から戻りきっていないものの、昨年8月以降から足元まで堅調に推移。2/27は権利落ち日だったが、寄り付き直後が安値となり下げ幅を縮める展開となった。下ヒゲ陽線を形成して5日移動平均線上に回帰、現在は25日移動平均線上なども保っており、業績回復と株主還元強化への期待による買いが続くと予想する。ターゲットは440円、ロスカットは310円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・3/3現在、プライム・グロース銘柄で時価総額 300億円以上、PBRが8.0倍以下、株価が13週・26週移動平均線を上回っている、今期増収予想(日経予想)の中から、出来高推移、成長性、話題性など総合的に考慮した上でピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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