来週の株式見通し(2020/8/31〜9/4)
来週(2020/8/31〜9/4)の東京株式市場は9月相場入りとなる。日経平均株価の予想レンジは23,000円-23,700円。上値を試す展開が予想されるが、外部環境次第では波乱含みか。ジャクソンホール会合や米共和党の全国大会が終わることで、米中の景況感の改善モメンタムが株価を左右しそうだ。中国8月製造業PMIや米8月ISM製造業景気指数から米8月雇用統計まで重要指標が多く、これまでの改善スピードが弱まったニュアンスで受けとめられると高値圏にある株安のきっかけになる。トルコとギリシアとで外交的な問題が混迷を深めている点、南シナ海を巡る米中の応酬など地政学リスクが新たなリスク要因になりつつある。
需給面やセンチメントからみると地合いは良好である。海外投資家は8月第2週に現物・先物を合わせて日本株を1兆円近く買い越した。続く第3週は1,600億円程度の売り越しとなったものの、株価の動きを見る限り大幅売り越しに転じた兆しは見えない。とはいえ、2003年以降、海外投資家は9月は年間を通じて売り越す傾向が強い点には注意が必要である。
東証1部の騰落レシオ(25日)は100%前後と過熱感はない。個人の待機資金の流入やマザーズ市場で売買したリスクマネーの回転が維持できるかも好地合いのポイントになる。
物色面では、月替わりでリターンリバーサル的な売買が先行する可能性があり、8月の月間騰落率下位にランキングする電気機器、情報通信、医薬品など、いわゆるグロース系セクターへの物色に注目だ。NY原油先物が高値圏で強含んでおり、商社株も含め資源関連の動向にも目が離せない。
騰落レシオは値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率で、一般的には25日間の平均で示す。120%以上で天井圏に近く、70%以下で底値圏と判断するが、期間がより長い75日平均と併用すると違った見方ができる。
図表1は、東証1部の騰落レシオでみたものであるが、25日平均が80%あたりから上昇したものの、75日平均を上回り切れていない。TOPIXが6月高値を上抜けられない状態が続いていることも要因である。過去、この長短クロスが出現した後、25日平均が75日平均を上回っている間は相場が強くなる傾向がある。
最近、特に強いマザーズ市場の方は、25日平均が75日平均をすでに上回っており、マザーズ指数も6月の高値を大きく更新している。
TOPIXは去年までの直近3年間、8月までの調整を経て、いずれも9月上旬頃から相場が上放れた経緯がある。米国の大統領選挙があった2016年は後ずれして10月に上放れる結果となったが、4年連続の9月もみ合い放れにまずは注目したいところだ。
図表1:TOPIXと騰落レシオ(2019/2/5-2020/8/27)
- 出所:QUICKよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表2)は6/9高値(23,185円)に続いて8/14高値(23,338円)を上回り、順調に水準を切り上げている。8/26は伸び悩んだものの、下方のマドを埋めることなく前日の小陽線に並ぶような格好で終えた。陰陽足の「並び赤」ともいわれ、先高期待の強さを表している。
一方、RSI(9日)は46.0%(8/28)と強弱の分岐点である50%割れ。株価の上放れが早々に実現しなければモメンタムの減速につながりかねない。
当面の上値のフシは、昨年11月高値レベルの23,600円処、6/9高値から6/15安値までの下げ幅の1.5倍返し24,000円、6/9高値から6/15安値までの下げ幅の倍返し24,841円などに注目。3/19安値から3/25高値までの上昇幅を6/15安値から上げた24,735円にも近く、上昇継続の場合の重要なフシとなる。
一方、気になる点は、概ね1年間の平均を表す、200日移動平均線(22,016円 8/28)の傾きである。現在の200日移動平均線は横ばいで推移しているが、株価の上値の重さが続くようだと、まもなく下落基調に変わるネガティブな要因が増えることになる。3月安値(16,358円)からすでに7,000円程度上昇している点も注意が必要だ。
今のようなもみ合い相場はコロナショックで急落する前にもあった。2019年12月〜今年2月まで続いたもみ合いのあと、2018年10月(24,270円)の高値水準を前に急落した経緯がある。今回も6月〜8月までのもみ合いは、絵柄(チャート形状)からみると1月高値(24,083円)を前に、比較的大きな下げがあっても不思議ではない。
図表2:日経平均株価の日足チャート(2019/8/1-2020/8/27)
- 出所:QUICKよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
主要な国内経済指標の発表では、7月商業動態統計、7月鉱工業生産(8/31)、7月失業率、7月有効求人倍率、4-6月期法人企業統計、8月新車販売台数、8月軽自動車販売台数(9/1)がある。
企業決算では、菱洋エレク、トリケミカル、内田洋、パイオラックス、日工営、オリバー、マクロミル、イトーキ、東和フード、日精蝋、サンリツ(8/31)、伊藤園、アインHD、ウチダエスコ、ダイサン、ナンシン(9/1)、スカパーJ(9/2)、ロックフィール、泉州電、ラクーンHD、アルチザ、不二電機(9/3)、カナモト、ソフトウェアサー、日駐、ハイレックス、アイル、ポールHD、フジコーポ、モロゾフ、ファースト住、日ハウスHD、ナトコ、ケア21、ザッパラス、ティーライフ、ゼネパッカー、エイケン工業、ナガノ東、桂川電、トミタ電機(9/4)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、中国8月製造業PMI(8/31)、ユーロ圏7月失業率、米8月ISM製造業景気指数、米7月建設支出 (9/1)、米8月ADP全米雇用リポート、米7月製造業受注、ベージュブック(9/2)、米7月貿易収支、米8月ISM非製造業指数(9/3)、米8月雇用統計(9/4)などがある。
来週の注目銘柄(2020/8/31〜9/4)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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3909 | 850 | 600 | ウェブサイト最適化技術により成約率高める「ナビキャスト」が主力。同社は8月上旬、2020年12月期上期(1-6月)の連結営業損益が1,400万円の赤字(前年同期は6,000万円の黒字)だったと発表した。マーケティングSaaS事業において新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、新規大型商談が大幅に減少したことで新規販売数が伸び悩んだ。しかし、業績悪化は織り込み済みの面が強く、株価はそこまで大きくは下落せず。以降は悪材料出尽くしの買いによって底堅い動きを見せ、足元では52週移動平均線を上抜ける動きも見せている。もともと売上高の伸びが堅調でグロース感の強い銘柄だっただけに、今後は底打ちからの買いがさらに優勢になると考える。ターゲットは850円、ロスカットは600円 | |
4686 | 10,000 | 7,000 | 「ATOK」等ソフトや法人業務システムなどを展開。新型コロナウイルスによる感染者の増加を受けて、自宅での教育に同社が取り扱う「スマイルゼミ」の需要が高まるとの思惑から買いが向かっている。2021年3月期1Q(4-6月)の連結営業利益は43.1億円(前年同期比4.0%増)となり、伸びの弱さから一時売られる場面も見られたが、事業環境の良好さへの期待感から買いは弱まっていない。株価は約20年ぶりの高値更新を継続しており、今後もトレンドフォロー的な資金流入が向かうと考える。ターゲットは10,000円、ロスカットは7,000円 | |
7524 | 720 | 500 | 居酒屋「酔虎伝」「八剣伝」「居心伝」を運営。新型コロナウイルスの影響で居酒屋の事業環境は大きく悪化し、株価は2月以降に大きく下落した。しかし、欧米を中心に治療薬・ワクチン開発が進み、国内でも治療薬の調達計画の見通しが立つなど、新型コロナウイルスに対する警戒感は徐々にだが後退しつつもある。時価総額は小粒だが、それが奏功して株価の値動きは軽く、7月以降の持ち直しの勢いも強めだ。今後も下値拾いの買いを背景に右肩上がりの推移を見せると考える。ターゲットは720円、ロスカットは500円 | |
7921 | 3,100 | 2,160 | 上場企業のディスクロージャー事業大手。2021年5月期通期の営業利益予想は25.0億円(前期比11.2%増)と堅調な見通しとなっている。2020年5月期の営業利益も22.5億円(前の期比26.3%増)と大きく伸びた。コーポレート・ガバナンス・コードの適用を受けてニーズが増加している「株主との対話」を目的としたサービスが伸びており、市場では業績拡大期待が高まっている。株価は約20年ぶりの高値圏にあり、右肩上がりの長期トレンドも買い安心感へとつながっている。今後も買いが買いを呼ぶ展開になると考える。ターゲットは3,100円、ロスカットは2,160円 | |
8715 | 6,080 | 4,200 | ペット保険の草分けで業界首位。2021年3月期1Q(4-6月)の経常収益は117億円(前年同期比17.0%増)、経常利益は6億円(同3.1倍)と堅調な着地となった。商品開発の強化や販売チャネルの営業活動強化などに注力したほか、堅調なペット飼育需要によって保有契約数も伸びた。株価は多少荒さもありながら2012年から右肩上がりを続け、コロナ禍でもすぐに値を戻し、上昇トレンドに回帰するなど非常に強い。直近では株式分割も発表したことで流動性も向上するため、今後も堅調な値動きが期待できそうだ。ターゲットは6,080円、ロスカットは4,200円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証1部上場銘柄で8/27現在、時価総額が7,000億円未満、PBRが1.0倍以上の中から、テクニカル面や業績面、話題性などを総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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