来週の株式見通し(2019/5/27〜5/31)
来週(2019/5/27〜5/31)の日経平均株価の予想レンジは20,800円-21,300円。東京株式市場は米中貿易摩擦の激化・長期化への警戒感が根強く、投資家の手控え姿勢が続きそうだ。トランプ米大統領は5/25に国賓として来日し、5/28まで滞在予定。その間のツイートリスクは軽減されそうだが、米中の通商協議は現時点では米中両国とも妥協を許さない姿勢には変わりはなく、トランプ米大統領の発言や中国からの報道にも警戒が残る。
一方、中国の華為技術(ファーウェイ)への米国の輸出禁止措置などを通じて売り込まれた村田製作所やTDK、東エレク、ソニーなどが下げ渋ってきており、反発に転じれば指数上昇への寄与は大きくなる。反面、ディフェンシブを中心とした内需系の業績安定株への買いは減少する可能性は高いが、米国株の持ち直しや円高一服があれば、月末要因を背景に全般買い戻し優勢が予想される。
国内の経済指標では4月鉱工業生産指数(5/31)に注目。海外でも米1-3月期GDP改定値(5/30)、中国5月製造業PMI(5/31)など重要指標が週末に集中する。
前回紹介した騰落レシオ(25日)と同様、売られ過ぎを示す指標にRSI(相対力指数)がある。騰落レシオが市場全体の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率で表すのに対して、RSIは特定の指数や個別株の値上がり幅と値下がり幅を比べ、現在が過熱ゾーンにあるか、底値ゾーンにあるかを判断する。ある特定期間の値上がり幅÷(値上がり幅と値下がり幅の合計)で求める。50%を中心に動き、一般的に70%以上を過熱ゾーン、30%以下を底値ゾーンと判断する。
図表1のように、東証1部全体の値動きを示すTOPIX、ドル円相場を25日間でみると、ともに連動しながら、足元は底値ゾーンにあることがわかる。つまり、年後半に向けては円安がともなう株価上昇のシナリオが浮上する。
短期的には米長期金利はリスク回避で低下余地を探る展開となっているが、6/7発表の米5月雇用統計までの経済指標を皮切りに、今後米景気に対する疑心暗鬼が一時的にとかれていくかがポイントになる。
図表1:TOPIXとドル円のRSI指標(25日、2018/8/1-2019/5/22)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表2)は5/14安値(20,751円)から緩やかながらも戻り歩調が続いている。RSI(9日)は直近ボトムの7.6%から39.6%(5/23)に上昇し、目先の底入れを確認したことが判断できる。強弱の分岐点となる50%を上回ると反発基調を強めることができそうだ。
短期的には25日移動平均線(21,713円)に突っかけられるかどうかがポイント。3/22高値(21,713円)〜3/4高値(21,860円)付近のフシにも近く、重要な上値の壁ともなりうる。
一方、直近安値である5/14安値(20,751円)を割り込むと、4/24高値(22,362円)起点に二段下げの調整パターンとなりそうだ。その際、2/8安値(20,315円)を下回ると2万円をいったん割り込む可能性が高まるが、2012年の安値水準を起点に2016年安値や昨年12月安値を通るトレンドライン上までで下げ止まれば、長期上昇波動は維持される公算。
図表2:日経平均株価の日足チャート(2018/1/4-2019/5/23)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
主要な国内経済指標の発表やイベントは、日米首脳会談(5/27)、4月企業サービス価格指数(5/28)、4月有効求人倍率、4月完全失業率、5月都区部消費者物価指数、4月鉱工業生産指数、4月商業動態統計、4月住宅着工統計(5/31)がある。
企業決算では、プラネット、DyDo、ウチダエスコ(5/27)、スリープロ、タカショー(5/28)、日鉄鉱(5/29)、アイ・ケイ・ケイ、パーク24、内田洋、菱洋エレク(5/30)、東和フード、大和コン、はてな、トリケミカル、キタック、ダイサン、ACCESS(5/31)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標やイベントでは、米3月FHFA住宅価格指数、米3月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米5月消費者信頼感指数(5/28)、米1-3月期GDP改定値、米4月NAR仮契約住宅販売指数(5/30)、中国5月製造業PMI、米4月個人所得・個人支出(5/31)などが注目される。
米企業決算では、コストコ、ギャップ、ダラー・ツリー(5/30)などが発表を予定している。
なお、5/27の米国市場は戦没者追悼記念日(メモリアルデー)のため休場。英国市場はスプリング・バンク・ホリデーで休場となる。
新規上場では5/30にバルテス(4442)がマザーズに上場する。ソフトウエアのテストサービスが主力。社名の「Valtes」は「VAlue created through TESting」の最初と最後の単語を組み合わせた造語。そのほか、アプリ開発やオフショアサービスなどソフトウエアの品質に関するサービスを提供している。
来週の注目銘柄!(5/27〜5/31)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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4568 | 7,300 | 5,100 | 国内製薬大手。5月下旬に、同社が一般医薬品(大衆薬)事業の売却交渉を進めていると報じられた。売却対象となっているのは大衆薬事業を手掛ける完全子会社の第一三共ヘルスケア。すでに国内外の複数の企業と交渉を進めており、最終的な売却金額は1,000億円規模になる見通しだという。継続的な薬価下落に伴う売り上げ減少リスクを切り離すということになり、売却資金によって他の成長事業の加速が長期的に期待され、資金は向かいやすいと考える。ターゲットは7,300円、ロスカットは5,100円 | |
6501 | 4,700 | 3,250 | 総合電機・重電首位で事業広範囲。2019年3月期の連結営業利益は7,549億円。しかし、社会産業で300億円の損失引当が計上されており、これを除くと力強い内容となった。加えて、建設機械部門、情報・通信システム部門で増収・収益性改善が見てとれ、成長への安心感は強い。株価は2019年に入ってから堅調な値動きをキープ。4月には52週移動平均線を上抜けており、今後も良好な推移を見せる公算が大きいと考える。ターゲットは4,700円、ロスカットは3,250円 | |
7012 | 3,200 | 2,200 | 総合重機大手。4月に発表した2020年3月期の連結営業利益予想は720億円(前期比12.4%増)と、市場予想780億円を下回る水準。これを受けて株価は下落し、今現在PERは11倍台と低水準だ。しかし、5月に入って同社が国内メーカーで初となる水素を液化する設備の商用化に、2020年をめどに乗り出すと伝わった。水素を使う燃料電池車や水素ステーションの拡大、水素を活用した発電など利用機会が広げられるとされ、成長事業への期待から低バリュエーションを調整する押し目買いが向かいそうだ。ターゲットは3,200円、ロスカットは2,200円 | |
8028 | 3,700 | 2,600 | 伊藤忠傘下のコンビニ大手。2020年2月期の連結純利益(IFRS基準)予想は500億円(前期比10.2%増)と、市場予想並みの見通し。市場ではパン・パシフィック・インターナショナルとの協業効果などが期待されている。また、米中貿易摩擦の激化懸念が高まる中で内需銘柄への物色が強まっている。週足では、2,700円付近のラインをサポートに、持ち直しの動きが見て取れる。今後は13週・52週移動平均線を上抜けた後、上昇トレンドにシフトすると考える。ターゲットは3,700円、ロスカットは2,600円 | |
9437 | 3,300 | 2,300 | 携帯電話で国内最大手。2020年3月期通期の連結営業利益(IFRS)予想は8,300億円(前期比18.1%減)と市場予想8,869億円を下回る見通しとなったものの、市場では来期からの業績回復が期待されている。同社は6月から広い認識(三親等内)の家族割引を軸にした新しい料金プランを、端末分離で導入する。それにより今期こそ減益計画ではあるが、それ以降は各施策の効果により利益は成長しそうだ。それに伴って配当金の成長の継続も予想され、今後は資金が流入するとみる。ターゲットは3,300円、ロスカットは2,300円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証1部銘柄で5/23現在、時価総額が4,000億円以上、PBRが3.0倍以下、配当利回りが1.2%以上、信用倍率(5/17現在)が5.0倍以下の中から、業績面や話題性、材料性、テクニカル面などを総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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