来週の株式見通し(2018/5/28〜6/1)
来週(2018/5/28〜6/1)の日経平均株価の予想レンジは21,900円-22,600円。ボラティリティが高まりかねない懸念材料が重なっており、様子見姿勢の中で週初を迎えることになろう。米朝首脳会談は中止となったが、現時点では緊張感が再び高まる雰囲気ではなさそうだ。一方、トランプ政権が自動車に対する輸入関税の導入検討を示唆したことで、6月の日米通商協議に向け貿易不均衡是正に対する圧力が強まるかたちになっている。円売りポジションの巻き戻しによって円高圧力がかかりやすいことや、通商問題は日本の企業業績や経済に直接影響を与える要因だけに、株式市場には逆風となる。輸入関税に関する報道直後には自動車株を中心に主力の外需関連までも大きく下落しており、日経平均株価の調整以上に中身が悪い印象を受ける。
イタリアのEU懐疑派連立政権の政策への警戒、ユーロ圏の景況感の悪化などもクローズアップされており、買い方の手控え要因となる。
米国では、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)が近づく中、来週は重要経済指標の発表が続く。米10年債利回りは上昇が一服し、足元は25日移動平均線を下回る程度まで低下している。サプライズでもない限りは上昇しづらく、経済指標が予想前後の着地であればアメリカ株は緩やかに戻りを試す公算が大きい。ただし、原油相場の上昇一服やドル高を背景として、大型株(ダウ平均やS&P500)よりも、ディフェンシブ系やハイテク系(ナスダック)、小型系(ラッセル2000)などが相対的に優位か。
一方、日経平均株価は3月安値からほぼ2ヵ月間上昇が続いた直後の調整局面にあり、値幅・日柄調整にしばらく時間を要する可能性が高く、アメリカ株が堅調であっても短期的には追随できない場面が増えそう。
再び円安方向に戻ったとしても日本株を積極的に買える状況ではなく、週を通して短期筋の売買が中心か。売り仕掛けで下げれば買い戻しで下げ渋り、買い戻しが一巡すれば再び新規売りで弱くなる循環が予想される。売り方優位のバイアスが続く中で外部環境に悪化がみられれば、裁定取引を解消する現物売りにもつながり、下落幅を広げる展開なども想定しておきたい。
国内の経済指標では、4月有効求人倍率(5/29)、4月鉱工業生産(5/31)、1-3月期法人企業統計(6/1)に注目。 海外の経済指標では、米5月消費者信頼感指数(5/29)、米5月ADP雇用統計、米1-3月期GDP改定値、ベージュブック(5/30)、中国5月製造業PMI、米4月個人支出、米5月シカゴ購買部協会景気指数(5/31)、米5月雇用統計、米5月ISM製造業景況指数(6/1)など重要指標が多い。
日経平均株価(図表1)は今週は変化週のタイミングを迎えた。5/23には最近では見られない比較的長い陰線を形成し、5日移動平均線(22,803円 5/24)や一目均衡表の転換線(22,708円 同)を下方にブレーク。5/24は一目均衡表の基準線(22,411円 同)は終値で維持したものの、心理的節目にあった25日移動平均線(22,504円 同)までもあっさりと下回った。RSI(9日)は58.6%→35.4%に低下し、上昇モメンタムは完全に沈静化した。
3月安値以降の上昇基調を維持するには、5/23の陰線高値を超える陽線(陰線逆上がり)を早期に形成できるかがカギとなる。
中期トレンドを示す75日移動平均線(21,918円 5/24)が現在は下向きで推移している。75日移動平均線が今と同じように下向きだったのは、2015年8月高値からの急落後のリバウンド局面である。
当時は、日経平均株価が急落後の安値から終値で75日移動平均線を上抜けたタイミングから、営業日数にして18日後に戻り高値を付けた。今回は75日移動平均線を上抜けたのが4/24であり、その18日後は5/22であった。
当面の下値メドとしては、200日移動平均線(21,721円 5/24)などが重要になる。一方、調整値幅の目安となるのは、2/27高値〜3/5安値までの1,565円、3/12高値〜3/26安値までの1,624円幅が重要となる。直近5/21高値(23,050円)から同値幅下げると仮定すると、21,426円〜21,485円水準までは下げの許容範囲となる。
図表1:日経平均株価の日足チャート(2017/9/1-2018/5/24)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表は、4月企業サービス価格指数(5/28)、4月有効求人倍率、4月完全失業率(5/29)、4月商業動態統計、5月消費動向調査(5/30)、4月鉱工業生産、4月住宅着工統計(5/31)、1-3月期法人企業統計(6/1)がある。
企業決算では、プラネット、DyDo、タカショー(5/28)、スリープロ、菱洋エレク(5/29)、アイ・ケイ・ケイ、ACCESS、内田洋(5/30)、エイチ・アイエス、パーク24、東和フード、大和コン、はてな、トリケミカル、ナトコ、ダイサン、共和工業、アルチザ(5/31)、伊藤園、ゼネパッカー、巴工業、五洋インテ、ピープル(6/1)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表は、日露首脳会談(5/26)、米3月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米5月消費者信頼感指数(5/29)、米5月ADP雇用統計、米1-3月期GDP改定値、ベージュブック(5/30)、中国5月製造業PMI、米4月個人所得、米4月個人支出、米5月シカゴ購買部協会景気指数、米4月NAR仮契約住宅販売指数、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(〜6/2カナダ・ウィスラー)(5/31)、米5月雇用統計、米4月建設支出、米5月ISM製造業景況指数(6/1)などが注目される。
米企業決算の発表では、セールスフォース・ドットコム、ヒューレット・パッカード(5/29)、コストコ、ダラー・ツリー(5/31)などが予定している。
なお、5/28は米国市場はMemorial Dayのため休場となる。
来週は、ファブレス・インターネット印刷業のラクスル(4384)がマザーズに上場する。中小の印刷業者を束ねたシェアリングプラットフォーム「ラクスル」の運営を通じ、小ロットからの印刷物を販売している。また、物流版の「ハコベル」も運営している。日本版シェアリングエコノミーの成功例として経済メディアに取り上げられる有力ベンチャー。稼働率の低い印刷業界の問題を逆手に取り、ウィンウィンの関係を構築することで成長してきた。吸収額は170億円前後と新興市場としてはかなり大きく、需給的に上値は重いだろうが、知名度も高く空白期間明けの効果も追い風に堅調なスタートが期待できそうだ。
来週の注目銘柄(2018/5/28〜6/1)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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3853 | 1,600円 | 1,170円 | 国内初の「XML」専業のソフトウェア開発。主力のデータ連携用「アステリア」は導入社数6500社超。データ管理用「ハンドブック」も市場シェアトップで快走中である。3月に東証1部にくら替えした。仮想通貨関連。株価は2017年高値(1,745円)からの調整続くが、13週移動平均線や26週移動平均線が上向き転換。もち合い相場から一歩抜け出す気配が出てきており、新たな上昇トレンドの始まりか。信用残は売り残と買い残がきっ抗しており、需給面に不安はない。PERやPBRの割高面を無視できれば、素直に買い参入ではないか。ターゲットは1,600円、ロスカットは1,170円 | |
4312 | 1,090円 | 810円 | 設計用CAEソフト主力。富士ソフト子会社。ライセンス販売が約70%で電機・自動車向けが大半である。自社製品を強化中。中国や台湾などは光学系ソフトが堅調に推移している。配当金に関しては、配当性向50%か、純資産配当率3.0%を参考にしている。株価は堅調。2016年高値(1,230円)からの調整局面で信用買い残の減少が続いており、需給面の改善が続く。13週移動平均線をサポートにやや加速気味になってきており、相場全体が調整含みになる中で、強い銘柄に資金シフトが起きる公算が大きい。PERに特に割安感はないが、高配当が下支え。4ケタ乗せは必至だろう。ターゲットは1,090円、ロスカットは810円 | |
4344 | 950円 | 719円 | PC用パッケージソフトの開発・販売が主力事業。低価格で豊富な品揃えが特徴である。PC セキュリティソフトのシェア3位。スマホ向けにもアプリ提供。超小型通訳デバイス「ポケトーク」が銀座ルノアールに採用されるなど、今後も外国人利用客が増加している都心店舗中心に引き合いが強い。株価は13週移動平均線と26週移動平均線は横ばいであるが、高値もみ合いから一段高に期待したい。信用買い残と売り残がともに増加基調。PERやPBRに割安感はないが、買い残の減少などによる取組改善が上値余地を決める要素になりそうだ。ターゲットは950円、ロスカットは719円 | |
4722 | 1,600円 | 1,290円 | ITシステムのコンサルティングを手がける。独自のAI技術が強み。流通系や食品系が躍進ほか、地銀向け営業支援なども展開している。需要予測や融資審査向けなども増加し、収益が底上げ。大手企業との戦略的パートナーシップの拡大を目指す。2017年から動意付いた上昇トレンドも2年目迎え成熟段階にある。ただ、依然として13週移動平均線上にあり、順張りスタンスが有効だろう。週足では直近高値で形成した「十字足」以降、連続陰線が続いており、13週移動平均線に接近した足元は押し目買いの準備はしておきたい。信用買い残は低位で安定しており、需給面に不安なし。ターゲットは1,600円、ロスカットは1,290円 | |
9997 | 1,710円 | 1,290円 | 婦人服主体のカタログ通販大手。生活雑貨、化粧品、サプリメントも手がける。折り込みチラシによる開拓が得意。顧客は40代以上の女性が約80%。店舗は収益性が改善していることに加え、ECモールによる伸びしろが市場の評価基準になっている。株価は26週移動平均線を中心としたもみ合いは上放れ。年初来高値(1,535円)が射程圏に入っている。上昇基調が強くなってきた13週移動平均線まで揺り戻しの可能性もあるが、押し目狙いが有効だろう。年初来高値は2006年高値(1,375円)を抜けた直後に付けたものであり、中長期的には過熱感があるとはいえない。ターゲットは1,710円、ロスカットは1,290円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証1部上場銘柄で5/23現在、時価総額が200億円以上、配当利回りが0.4%以上、PBRが8.0倍以下、PERが33.0倍以下、今期増収・営業増益予想(日経)、株価が25日、75日、200日移動平均線を上回っている銘柄の中から、成長性や話題性などを総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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