来週の株式見通し(2017/9/19〜9/22)
来週(2017/9/19〜9/22)の日経平均株価の予想レンジは19,650円-20,050円。週前半は9/19-9/20に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果待ちで様子見姿勢になりやすく、売りに押される場面がありそうだ。FOMCの結果が判明するのは日本時間で9/21の早朝となり、週後半は動意が強まる可能性もある。
FOMCでは米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート縮小を10月に開始することを決定する見込み。一方、年内(12月?)の利上げに関しては、最近の低インフレなどを理由に市場の織り込み度合いは決して大きくない。ただ、米主要指数が史上最高値を更新するなど、数週間前に比べると米政局リスクや地政学リスクはやや緩和されている状態にある。9/14に発表された米8月消費者物価指数(CPI)は前月比で+0.4%と7カ月ぶりの大きさとなった。足元の米長期金利の上昇が年内の利上げを織り込みに入っている動きであれば、ややタカ派的な内容にならないとも限らない。
米長期金利の上昇や円安への戻りの追い風になるような内容の場合は、米国株の反応にもよるが日経平均株価の2万円突破のきっかけになるとみられる。
また、FOMC直後に発表される米9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、米8月CB景気先行総合指数(9/21)などの結果も重要で、FOMCでの内容を裏付ける結果になるかどうかも注目ポイントとなる。
いずれにしても、ポイントになるのは週後半であり、少なくともFOMCを波乱なく通過できれば、9月末の中間配当取りの買いが入りやすいことや、翌週に発生する年金資金などのTOPIX(東証株価指数)をベンチマークとする大口資金による配当再投資を期待し、先回り買いが入る可能性はあるだろう。
今週の米国株式市場はS&P500に続き、ダウ平均、ナスダックともに再び史上最高値を更新。地政学リスクにおびえていた東京株式市場は慌てて米株高に反応した。
米主要指数の高値更新によって、次の物色傾向(中心的存在)をこれまでの株価推移から予想したい。図表1は、ナスダックの推移とナスダック市場で業種別に分類された株価指数の一部である。2000年のITバブル時にナスダックが天井を付けたときを100として指数化したものである。
2008年の金融危機直後の安値以降、上昇相場をけん引したのは、ナスダック上場銘柄のなかでもバイオテック株や銀行株であった。大きな変化があった2015年夏場以降でみると、米長期金利(10年債利回り)の上昇により銀行株の上昇が加速。ナスダック銀行株指数は2006年12月の高値を上抜け、新たな波動が形成される可能性が高まったといえる。逆に、その間はバイオテック株が低迷していた。
一方、最近はその逆の傾向が続いている。ナスダック銀行株指数は2006年12月の高値更新後は揺り戻しの調整を強いられ、バイオテック株の方が強い局面にある。しかし、足元、ナスダック銀行株指数は2006年12月の高値当時の水準に到達(図表の赤丸)しており、調整一巡からこの先は再び上昇局面に入っていく可能性が高いとみられる。それを支援するかのように足元の米長期金利が上昇傾向に転じている。金利がさらにぐんぐん上がるような局面ではないが、米主要指数の高値更新後の上昇局面では、銀行株がけん引するシナリオを想定することができそうだ。
図表1:米ナスダックと業種別株価の推移(2000/02/29-2017/09/7)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表2)は4/17安値(18,224円)から6/20高値(20,318円)までの中値となる19,271円処、200日移動平均線(19,436円 9/14現在)をおおむね意識し、急反発の展開となっている。横ばい基調で推移している75日移動平均線(19,865円 9/14現在)前後で値固めしながら、さらに一段高となるかが注目される。
一方、今年の累積売買代金が最も積み上がっている19,900円〜20,100円の価格帯(推計78兆円)を目前に、上値抵抗にあう懸念も強い。短期的に上昇した反動はある程度は予想されるものの、25日移動平均線(図表内の赤線)が次第に上昇基調になっていく可能性が高く、いずれ同線をサポートに9/8安値(19,239円)に対する二番底を形成する展開がイメージできる。
上値メドは、6/20高値20,318円、6/20高値から9/8安値までの下げ幅(1,079円)をその下落波動の中値(19,778円)から上げた20,857円処、3/2高値から4/17安値までの下げ幅(1,444円)の倍返しとなる21,112円処、6/20高値から9/8安値までの下げ幅(1,079円)の倍返しとなる21,397円処などが考えられる。
下値メドは、上述した19,271円〜9/8安値19,239円、230日移動平均線、240日移動平均線、250日移動平均線が通る19,163円〜18,965円(9/14現在)、3/2高値から4/17安値までの下げ幅(1,444円)を6/20高値からの下げ幅として当てはめた18,874円処、4/17安値18,224円などが考えられる。
図表2:日経平均株価の日足チャート(2016/10/03-2017/09/14)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表やイベントは、日銀金融政策決定会合(〜9/21)、8月貿易統計、8月訪日外客数(9/20)、黒田日銀総裁会見、7月全産業活動指数、東京ゲームショウ2017(〜9/24)(9/21)がある。
国内の企業決算では、ツルハHD、アークランド(9/19)、クスリのアオキ(9/20)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、米9月NAHB住宅市場指数(9/18)、独9月ZEW景況感指数、FOMC(〜9/20)、米8月住宅着工・許可件数、米4-6月期経常収支、米8月輸出入物価(9/19)、イエレンFRB議長会見(景気見通し改定)、米8月中古住宅販売件数(9/20)、米9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、米7月FHFA住宅価格指数、米8月CB景気先行総合指数(9/21)などが注目される。
米企業決算は、フェデックス、アビドシステムズ(9/20)、カーマックス(9/22)が発表を予定している。
新規上場では、9/20に独立系情報サービスのニーズウェル(3992)がJASDAQスタンダードに上場する。システム構築などの開発案件に参画し、基本的に顧客企業先に常駐して顧客システムの開発・保守を行っている。IT(情報技術)系として一定の人気は出そうだが、6月に上場したばかりのSYSホールディングス以上に特徴に乏しく、高値では警戒感が出よう。SYS同様に高値発進した後はさえない展開が想定される。
なお、同社は前会長が上場直前に急逝しており、相続が発生している。相続人は役員でも従業員でもないようなので、上場後の保有方針にも不安あり。半面、業績順調なうえ配当利回りは3%強と高めである。
9/22には、PKSHA Technology(3993)がマザーズに上場する。東京大学発IT(情報技術)ベンチャーのアルゴリズムサプライヤー。機械学習技術などを利用したアルゴリズムモジュールや、それらを組み合わせたソフトウエアを開発・販売している。代表取締役の上野山氏はかつて大手外資系コンサルティングファームで大規模解析などに従事。人工知能やウェブ工学などを研究する東大松尾研究室にて博士号(機械学習)を取得し、研究室メンバーとともに創業した。
技術力を武器にした最先端分野のIT(情報技術)ベンチャーとして人気化の公算。日本の人工知能研究の第一人者とされる松尾豊准教授の研究室が関わるベンチャーであるうえ、複数の大手企業との資本提携をテコに業績が急拡大している。9月の目玉案件ということになりそうだ。半面、人気化を見越してか、吸収金額は50億円とかなり多め。PERも高く設定されており、希薄化込みなら111倍に上る。売り出しゼロ、ロックアップ解除条項なしと売り抜け色が一切ないIPOだけに、既存株主とともにエンゼル気分で投資するのも一考か。
来週の注目銘柄(2017/9/19〜9/22)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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4739 | 4,550円 | 3,820円 | 伊藤忠系のシステムインテグレーター。通信事業者向けが主力。2018年3月期の第1四半期(4-6月)の連結営業利益は27.4億円(前年同期比38.2%増)で着地。サービスビジネス、開発ビジネス、製品ビジネス、全てで増収となったほか、売上総利益率の改善などが寄与した。株価は上記決算を受けて大幅高で反応したが、買いが続かず調整が続いている。一方、深押しもなく一目均衡表では抵抗帯(雲)をサポートに底堅い。今週に入ってからは基準線を上回り、9/1高値(4,125円)も上抜け、短期底を切り上げた。決算発表時の高値(4,235円)にトライする公算が大きい。米ナスダックが再び高値を更新したことも支援材料。ITバブル崩壊後の2006年の戻り高値3,720円などもすでにクリアしており、中期スパンでも上値余地が大きそうだ。ターゲットは4,550円、ロスカットは3,820円 | |
5801 | 7,010円 | 5,650円 | 世界有数の光ファイバーを軸に多角化を展開している。海外インフラ関連。第1四半期の決算発表時に2018年3月期通期の連結営業利益予想を従来の370億円から430億円(前期比11.3%増)へ増額修正した。増額修正はすでに織り込まれた水準との見方や、修正後も利益計画は保守的など見方が分かれている。株価は上記発表で急騰した際の出来高増加の価格帯をサポートに切り返し、9/14には8/10高値(6,340円)を上回った。まだもみ合いの範ちゅうであるが、出来高も増え始めたばかりであり上値余地は大きい。好業績のイメージが強い銘柄で、出来高の一段の増加があれば存在感が増し短期資金も参戦か。日経平均の6月高値以降では電線御三家の中で最も高位置にあり、好需給面から上値の軽さがイメージしやすい。ターゲットは7,010円、ロスカットは5,650円 | |
6101 | 1,110円 | 874円 | 自動旋盤など精密機器の製造、販売。スマホや自動車向け需要旺盛で業績が堅調に推移している。2018年3月期の第1四半期(4-6月)の連結営業利益は15.5億円(前年同期比2.6倍)で着地。売上高の増加や売上原価率の低下などが寄与した。上期の会社計画27.0億円に対する進ちょくは57.4%となっている。工作機械業界は、国内市場、欧州・米国市場とも堅調に推移し、中国市場でも好調が続いている。株価は5月高値(937円)をブレークし、値幅・日柄調整が一巡した。一目均衡表では抵抗帯(雲)をサポートに遅行スパンが好転、2006年や2012年の高値990円処の壁を目指している。7/26高値(935円)を付けた前後で出来高が増加しており、そこを上抜けた意味は大きい。好需給を背景として1カ月程度のスパンでも注目したい銘柄だ。ターゲットは1,110円、ロスカットは874円 | |
6336 | 1,960円 | 1,100円 | プリント基板製造装置最大手。同社は9/13、2018年1月期の通期連結営業利益予想を従来の8.6億円から10.4億円(前期比75.7%増)に引き上げた。上期の業績動向に加え、2017年1月期に獲得した有力液晶パネルメーカー向けインクジェットコーターの大口受注を今後も売り上げ計上する予定であることや、プリント基板分野において受注実績が当初の想定を上回っていることなどが理由。併せて発表した2018年1期上期(2-7月)の連結営業利益は6.5億円(前年同期比2.6倍)となり、上期の会社計画4.5億円を上回った。株価は5月後半からはもみ合い基調だったが、上記決算を受けて上放れ。2016年安値からの上昇過程では中段もみ合いから一段高が期待できそう。短期的には上昇の反動が予想されるが、2014年9月高値(1,158円)を上回ったことで長期波動の底固めが完成し、下値を切り上げる波動に変わった。ターゲットは1,960円、ロスカットは1,100円 | |
7419 | 2,300円 | 1,870円 | 家電量販中堅。2018年3月期の第1四半期(4-6月)の連結営業利益は25.9億円(前年同期比88.8%増)で着地。デジタル家電専門店運営事業で、4K対応テレビ、冷蔵庫、洗濯機などが好調に推移し、エアコン、理美容家電、デジタルカメラなども堅調に推移した。白物家電の比率が向上したことも業績に寄与している。株価は25日移動平均線からのマイナス乖離が東証1部の中では比較的大きく売られ過ぎ。当然ながら逆張りによる下方リスクもあるが、直近は終値が2050円どころに収れんしており、上昇への分岐点となる公算が大きい。8/9の大商い時に形成した大陽線の高値付近が足元のサポートになるのであれば、買い参入のタイミングになるとみられる。リバウンド狙いで注目したい。長期的にも2015年8月以降のレンジを上に抜けたあとの揺り戻しの範ちゅうにあり、ロングスパンでも上昇が見込めそうだ。ターゲットは2,300円、ロスカットは1,870円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証上場銘柄で9/13現在、時価総額が100億円以上、PERが22.0倍以下、今期増収・営業増益予想(日経予想)、13週・26週移動平均線を上回っている中から、テクニカル面やテーマ・話題性などを総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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