来週の株式見通し(2017/9/11〜9/15)
来週(2017/9/11〜9/15)の東京株式市場はもみ合いか。日経平均株価の予想レンジは19,200円-19,700円。欧米株市場の週末の動向にもよるが、北朝鮮の建国記念日(9/9)に挑発行為がなければ、週明けは上昇が予想される。ドル円が再び円安方向に動き出せば、輸出関連株中心に買われ指数へのリバウンド効果はあるだろう。日本株の空売り比率も足元高水準が続いており、全体的にも買い戻しが入り底堅さは維持できそうだ。また、9/7に発表された投資主体別売買動向では、海外投資家が8月5週に7週ぶりに買い越しに転じた。北朝鮮の建国記念日通過で、海外投資家による売り一巡感が強まるかがポイントとなる。
ただ、週前半は主な米国の経済指標はなく、国内も7月機械受注(9/11)、7-9月期法人企業景気予測調査(9/13)があるぐらいで材料に乏しい。メジャーSQが通過することで新規売買が活発化する可能性もあるが、日本株はドル円にらみ、ドル円は日本株にらみといった具合で動きづらそう。後半に入ると、翌週の9/19-9/20に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)が近づくことで、模様眺めの地合いが予想される。
北朝鮮が再び株式市場に売り圧力を浴びせてきた。建国記念日を前に「何かやる」とは思っていたため、9/3の行動自体は驚きではなかったが、週明け9/4の日経平均株価は一時19500円割れ。今回の大規模な核実験に続き、ICBM(大陸間弾道ミサイル)のグアムや米西海岸の近くに向けた発射など、追加的な挑発行為が警戒されている。日本株には「地政学リスク」を理由に海外投資家によるヘッジ売りが続いているようだ。
一方、世界景気は堅調である。筆者がいつもみている、アメリカと中国の製造業PMI(購買担当者景気指数)の合計は8月は110.5と、2011年4月以来の水準まで上昇した。ただ、連動するはずの日経平均株価は弱含み。地政学リスクが邪魔をして株価の反応が遅れているだけならいいが、先見性があるといわれる株価が景気のピークアウトを予見していたとしたら、地政学リスクで下げたように思われている今の局面は、「押し目買いは正しくない」ということになる。今年もやっかいな9月相場入りとなった。
今週は小型株が大幅に売られた。図表1で、トランプショック時に安値を付けた11/9を起点とした上昇相場でみると、「コア30(大型株)」が「TOPIXスモール(小型株)」に比べ優位な期間が2月ぐらいまで続いた。ところが、4/14からの相場上昇局面では「TOPIXスモール」のパフォーマンスが「コア30」を圧倒的に上回っている。「コア30」の半年程度のパフォーマンスはほとんど変わってい。このまま小型株の下落率が大きくなり、両者の差が縮小するケースも十分あるだろうが、今度は年末に向けて大型株がキャッチアップしていく可能性も高そうだ。やっかいな9月相場であると同時に、物色傾向が変化する可能性が高い重要な月でもある。
日柄面で注目したいのは、9/15-9/20頃である。そこは、トランプショック時の日経平均株価の11/9安値から4/14安値までの最初の山(サイクル)を形成した「107日」を、4/14安値から将来に当てはめたタイミングである。見事に次回のアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)に絡んでくるところだ。「5月に売って、セント・レジャー・デー(9月の第2土曜日)まで戻ってくるな」という、格言通りの相場参入ポイントになるかもしれない。
図表1:大型株と小型株の推移(2016/11/9-2017/9/6)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表2)は4/17安値(18,224円)から6/20高値(20,318円)までの中値となる19,271円処、200日移動平均線(19,396円 9/7現在)を意識した推移となっているが、戻りが鈍く25日移動平均線(19,600円 9/7現在)などを超えられない状況だ。終値ベースでは8月後半の直近安値(19,353円)をまだ下回っていないが、取引時間中ベースでは直近の8/29安値(19,280円)を下回った。25日移動平均線までのアヤ戻しを交えながら、一段安となる調整パターンが続く可能性は十分ありえる。
一方、今年に入ってからの東証1部の売買代金を、日経平均株価の200円刻みの価格帯別で分けてみると、19,900円〜20,100円の水準が78兆円と最も多く、8/29安値(19,280円)や9/6安値(19,254円)は2番目に多い58兆円程度積み上がっている19,300円〜19,500円の水準で支えられている。
19,900円以上で推移した6月〜7月の1日あたりの売買代金が2兆3,000億円程度であり、今後その程度まで売買代金が増加してくれば、4/17安値からの上昇局面のように年初来高値(20,318円)を更新していく期待が高まるだろう。
上述した200日移動平均線は中長期の上値抵抗や下値支持のフシになりやすいといわれているが、「200日」というキッチリとした数値にあまりこだわる必要はない。
というのは、200日前はトランプ相場が始まった直後になるため、あと1カ月程度たつと、当時の株価は今の水準と変わらなくなり、200日移動平均線の上昇は止まりやすくなる。今は一時的に200日移動平均線が大方の下値支持となる可能性は高いにせよ、その後の戻りが鈍ければ下値支持としての機能は薄れる。そのため、こだわり過ぎると200日移動平均線を下回ったことによる売り判断を早めてしまうからである。
そこで、240日前後の移動平均線に注目したい。まだ200日移動平均線よりも上昇トレンドが長持ちしそうな230日移動平均線、240日移動平均線、250日移動平均線の3本を束ねた帯のように捉え、レンジで下値支持の水準として認識する方法がある。9/5時点では18,803円〜18,974円である。
図表2:日経平均株価の日足チャート(2016/10/3-2017/9/7)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表は、7月機械受注、8月マネーストック、7月第三次産業活動指数、8月工作機械受注(9/11)、8月国内企業物価指数、7-9月期法人企業景気予測調査(9/13)、8月首都圏新規マンション発売(9/14)がある。
国内の企業決算では、シーズHD、正栄食、日本ロジ、gumi、シーイーシー(9/11)、神戸物産、イオンリート、サンバイオ(9/12)、鳥貴族、ケネディレジ、スターアジア、JPNミート、エニグモ、クミアイ化、ヤーマン、アインHD(9/13)、アスクル、丸善CHI、森ヒルズ、バロック、オハラ、アルデプロ、ドーム(9/14)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、米10年国債入札、第72回国連総会(〜9/25 NY)(9/12)、英8月失業率、米8月生産者物価指数、米8月財政収支、米30年国債入札(9/13)、中国8月小売売上高、中国8月都市部固定資産投資、中国8月鉱工業生産、英国金融政策発表、米8月消費者物価指数(9/14)、米8月小売売上高、米9月NY 連銀製造業景気指数、米8月鉱工業生産・設備稼働率、米7月企業在庫、米9月ミシガン大学消費者信頼感指数(9/15)などが注目される。
米企業決算は、オラクル(9/14)が発表を予定している。
新規上場では、9/13に技術者派遣中堅のエスユーエス(6554)がマザーズに上場する。ソフトウエア開発やサーバー設計・構築など情報技術(IT)分野が主力。経営コンサルティングとERP(企業資源計画)パッケージ導入などのコンサルティング事業なども展開している。自己の目標とするキャリアパスを実現するビジネスモデル「社会人学校」や、独自開発のヒューマンスキル測定ツール「HQ Profile」などによる人材育成を特徴とする。万年人手不足が指摘されるIT(情報技術)業界にあって、需要のある業態で業績も右肩上がり。吸収金額も少なく需給逼迫が期待される。既に上場企業が多く、新味に欠ける内容なため上値追いは限られそうだが、会社ホームページ(HP)トップでは「自社開発人工知能『朱雀』特許出願中」と掲載されており、これが材料視される可能性もありそうだ。
9/14はウォンテッドリー(3991)がマザーズに上場する。ビジネスSNS(交流サイト)「Wantedly(ウォンテッドリー)」を運営している。当該プラットフォームでは、会社訪問マッチングサービス「Wantedly Visit」、名刺管理アプリ「Wantedly People」、ビジネスチャット「Wantedly Chat」、メディアプラットフォーム「Wantedly Feed」などのサービスを提供している。
公開規模の小ささと、若い女性社長で注目される案件。仲暁子社長は希少な女性起業家として、メディアに取り上げられることも多い。純粋なベンチャーキャピタルが入っていないのに、ネット界わいの有名エンゼルや日経新聞といったそうそうたるメンバーが株主に名を連ねているのもこれゆえか。米リンクトインの日本版ともいえる事業内容ということもあって、人気化しそうだ。サイズがサイズだけに、既存株主の出方次第では、3日目初値も十分に視野に入る。
来週の注目銘柄(2017/9/11〜9/15)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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4681 | 2,400円 | 1,980円 | 会員制のリゾートホテルで首位。2018年3月期の第1四半期(4-6月)の連結営業利益は16.2億円(前年同期比2.2倍)で着地。昨年3月に開業した「エクシブ湯河原離宮」のホテル運営収益と会員権販売収益が業績に貢献したほか、今年8月に販売を開始した「ラグーナベイコート倶楽部」の会員権販売も好調に推移した。株価は決算発表を受けて出来高をともなう大陽線を形成。だが、往ってこいとなる調整を強いられている。一方、長期波動では2015年8月高値(3,800円)を付けたあと調整が続いており、今年の4月安値(1,790円)で2006年高値(1,874.9円)のフシに到達した。つまり、長期波動では押し目買い、反転上昇局面に入っている可能性が高く、短期底を切り上げ続けている間は押し目買いで対応したい。ターゲットは2,400円、ロスカットは1,980円 | |
5233 | 504円 | 400円 | 国内外のセメント需要の改善が続いている。2018年3月期の第1四半期(4-6月)の連結営業利益は88.5億円(前年同期比68.7%増)で着地。セメントの国内販売数量や輸出数量が増加した。上期の会社計画230.0億円に対する進ちょくは38.5%となった。今後も東京オリンピック関連工事や米国のインフラ向け需要が期待できそう。株価は月足では「三尊天井」形成後の崩れからの立ち直りが早く、今後は一段と上昇基調を強める可能性が高い。60カ月移動平均線が上昇を維持しながら、12カ月移動平均線が24カ月移動平均線を上回り、強気サインが点灯。24カ月移動平均線は横ばいから来年前半に向けて上昇角度を強める公算が大きく、株価の高値更新の援軍になるだろう。長期的には2006年〜2007年につけた高値(567円〜594円)を上抜けていく展開が予想される。当面のターゲットは504円、ロスカットは400円 | |
7600 | 1,340円 | 920円 | 人工関節や骨接合材料など、整形外科分野の医療機器関連製品に強みを持つ。2017年3月期は、米国子会社が円高の影響を受けながらも新規顧客の開拓が進み、国内販売も堅調に推移したことから増収増益を達成。2018年3月期の第1四半期(4-6月)も、国内・米国ともに好調で、連結の経常利益は前年同期比38.0%増の4.5億円と大幅増益での着地となった。人工関節の売り上げが年々右肩上がりで伸びており、今後も成長拡大が期待できる。株価は2014年以降で強い上昇基調が続いている。今年の夏場以降は、7/4に1,053円、8/1に1,052円をつけた後は売りに押され、1,050円処が壁となっていたが、日柄調整を経て9/4には上抜けてきたことから、新しい上昇の始まりを暗示している可能性が高い。ターゲットは1,340円、ロスカットは920円 | |
7740 | 2,400円 | 1,850円 | 一眼レフなどカメラ向けの交換レンズを手がける。デジタルカメラはスマートフォンの高性能化に伴い、需要の落ち込みが続いていたが、足元ではインスタグラムなどで見栄えの良い写真に対するニーズが高まっていることなどもあり、持ち直しの動きがみられる。同社も上期決算発表時に通期の利益見通しを上方修正している。株価は2016年安値(1,257円)を起点に上昇が続き、今年の3月以降は上限2,190円処、下限1,900円処を推移するボックス相場。現在は下限からの上昇が始まったところであり、上限に向けて上昇できるかが注目される。年初の高値を起点にすでに5波動を形成しており、ボックス相場の中心付近(2,050円程度)を明確に上回ってくれば(2,050円以上の滞留時間が長くなってくれば)、ボックス相場を上抜ける上昇につながる公算が大きい。ターゲットは2,400円、ロスカットは1,850円 | |
7951 | 4,400円 | 3,650円 | 楽器および音響機器関連などを手がける。8/30に日本で発売となった「Venova(ヴェノーヴァ)」は、リコーダーのような指使いでサックスのような音が出る新感覚の楽器で、早くも品薄状態となっている。また、8/31には、キーボードで「歌を演奏する」デジタル楽器、ボーカロイドキーボード「VKB-100」を12月に発売することを発表した。成熟した楽器産業の中でも、需要拡大に向けて新たな試みを次々に行っており、今後の業績面での貢献にも期待が持てる。株価の長期上昇トレンドは全く崩れていない。短期的には8月後半までは軟調推移が続いていたが、8/29安値からの連続したチャート上のマドは切り返しのサイン。9/1の上昇では25日移動平均線を明確に上回ってきた。一目均衡表の抵抗帯(雲)上限に上値を抑えられ日柄調整が続く可能性もあるが、25日移動平均線が明確に上昇に転じてくれば動意が始まる公算が大きい。ターゲットは4,400円、ロスカットは3,650円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証1部上場銘柄で9/6現在、時価総額が200億円以上、配当利回りが0.7%以上、PBRが2.3倍以下、信用倍率が9.5倍以下で、今期増収・営業増益予想(日経予想)の中から、テクニカル面やテーマ・話題性などを総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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