来週の株式見通し(2017/3/6〜3/10)
来週(2017/3/6〜3/10)の東京株式市場は伸び悩む公算が大きい。日経平均株価の予想レンジは19,400円-19,800円。米国株高や円安への期待はあるものの、日本株にとっては米国株の反落リスクが引き続き警戒要因となり、大口資金の流入は限定的とみられる。米国の好調な経済指標の結果を受け、翌週のFOMC(連邦公開市場委員会)を前に様子見姿勢が強まる可能性が高い。週末には米2月雇用統計の発表が控えており、先物市場も6月限へのロールオーバー以外の商いの増加は見込みづらい。日経平均株価の年初来高値更新(取引時間ベース)の割には、現物市場の売買高もさほど増加は期待できないだろう。ただ、米長期金利の上昇によってこれまで動きが鈍かったドル円相場が円安方向に動く可能性が高く、株価の底堅さの要因となる。
全般伸び悩む傾向がみられれば、後半にかけては期末の権利・配当取りを含め、下値で買い遅れた投資家からの個別物色は期待できそうだ。
3/8に内閣府より2016年10-12月期のGDP(国内総生産)改定値が発表される。速報値は前期比年率1.0%増となり、4四半期連続のプラス成長となった。米国向け中心に自動車が好調なほか、アジア向けに半導体製造装置などの機械、新興国向けに建設機械などに持ち直しの兆候がみられる。設備投資は製造業が回復した。今回の改定値は先日発表された同期間の法人企業統計で示された好調な設備投資を加味して、増額修正される見込みである。
週末は3月限のメジャーSQが算出される。過去の「SQ」前後は相場の短期的な分岐点になってきたことも少なくない。図表1は、年4回のメジャーSQ日前後20日間の日経平均株価の動きがどうだったかということを、2009年から2016年の平均でみたものである。SQ日を「1」として指数化したグラフであり、横軸が「日数の経過」、縦軸が「水準」である。
9月のSQ後は弱含む傾向がある一方、12月は序盤堅調だが「掉尾の一振」の反動で新年に入り反動がでるパターン。3月、6月は比較的堅調を維持する傾向がある。特に3月は年度末の配当狙いの買いや期末のドレッシング買い、4月からの新年度相場への期待感、月末にかけては年金資金などによる配当再投資の買いなど、季節的な要因もあって上昇に弾みがつく傾向がある。
ただし、これはあくまでも過去の平均値である。図表2で昨年の2016年だけを見た場合は全く違う結果となるため、アノマリーだけを頼りにした戦略は得策ではないといえる。
図表1:メジャーSQ前後の日経平均株価(2009-2016)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
図表2:メジャーSQ前後の日経平均株価(2016)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
ダウ平均は30年ぶりの連続記録(13日連続最高値)更新を逃してしまったと思いきや、3/1には300ドルを超す上昇となるなど、予測不能の「青天井」の状況となっている。一方、3/1現在、200日移動平均線からの上方かい離率は12.4%まで上昇し、短期的な過熱感は否めない。ダウ採用の30銘柄を対象にした騰落レシオの昨年ピークの平均は160%程度であるが、3/1現在で143.9%まで上昇している。
さて、早いか遅いかは別にして、これから重要なのは次の調整局面が押し目買いのチャンスになるか、また安値を切り上げることができるのか、ということである。
図表3は、ダウ平均とNY証券取引所が発表している信用買い残の推移である。おおむね両者のトレンドは同じ方向であることがわかる。信用買い残が公表されている直近データは、1月末現在の5,132億ドル(金額ベース)。これまでの史上最高が2015年4月の5,071億ドルで、2016年2月には4,358億円まで低下する局面もあったが、今年1月で最高水準を更新した。おそらく、2月の相場つきから判断すると、増加基調が続いている可能性が高い。相場の波乱のタネを抱えているといえるわけだが、株価上昇で時価総額も増加しているため、市場規模に対する熱狂感はそこまで高まっているとは思えない。
そこで、図表4をご覧いただきたい。ダウ平均に加え、信用買い残を1年前からどれだけ増減したかを変化率(%)でみたものである。過去の株価の大天井では、信用買い残の増えるスピードが速かったことがわかる。IT相場のとき、2007年高値の当時などは70%(1年前比)近くまで上昇した。一方、1月末現在でみると17.8%(1年前比)程度である。推測ベースではあるが、2015年と2016年の不安定な動きのなかで多くの買い方が相場から離散したため、低水準に抑えられているのであろう。ただし、2月の株価は上昇し、信用買い残の増加率も高くなっている可能性が高い。仮に、2月にこれまで株価のミニ天井になることが多かった40%(1年前比)近い水準までの増加率になっているとした場合、金額ベースで6,200億ドル程度まで増加していないといけない。
果たしてそこまで増えているだろうか?
1月が5,132億ドルであったため、1カ月で約20%増えることになる。しかし、過去1カ月で20%も増えたことはない。今後もないとは言い切れないが、短期的に増加しているとしてもミニ天井になる程度の水準であろう。大天井をつけるほどの熱狂感はまだ先の話。つまり、次の押し目は買い場になるとみられる。
図表3:ダウ平均とNY証券取引所の信用買い残(1990/1-2017/1)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
図表4:ダウ平均とNY証券取引所の信用買い残の変化率(1990/1-2017/1)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表5)は25日移動平均線(19,224円 3/2現在)上を回復した直後、早々に19,500円の心理的節目を上回る展開となった。1/5高値(19,615円)を起点とした上値抵抗線なども上回ったことで、年初から形成される三角もち合いをやや上に抜け出す格好となった。終値ベースの年初来高値(19,594円 1/4)を上回れば、上値余地が一段と広がることになるだろう。一方、いったん押し戻される可能性も高いが、いずれにしても25日移動平均線と75日移動平均線(18,962円 3/2現在)が接近するタイミングで再動意の公算が大きい。
短期的な日柄で重要なのは、3/23-3/27となり、そこまではもみ合い基調が続くことも考えられる。
短期的な上値メドは、(1)11/1高値(17,473円)から11/9安値(16,111円)までの下げ幅1,362円に対する3倍返しの20,197円処、(2)2/12安値(14,865円)から4/25高値(17,613円)までの上昇幅2,748円を、4/25高値に加えた20,361円処、(3)1/5高値(19,615円)から1/18安値(18,650円)までの下げ幅965円に対する倍返しの20,580円処などがが考えられる。
一方、2万円の心理的フシ目には、2015年 6月高値(20,952円)を起点とした下落局面の途中で一時的に上昇した2015年12月の戻り高値(20,012円)が存在する。2015年12月といえば、日銀が金融政策の補完措置を発表(12/18)した時期でもある。その発表で当時乱高下した爪痕が残る水準でもあり、当時の12/18高値(19,869円)を上回れば大きいが、高値を前に調整が続くリスクも依然として強いといえよう。
短期的な下値メドは、1/18安値(18,650円)〜75日移動平均線が考えられる。
図表5:日経平均株価の日足チャート(2016/1/4-2017/3/2)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表やイベントは、30年国債入札(3/7)、10-12月期GDP改定値、1月国際収支、1月景気動向指数、2月景気ウォッチャー調査(3/8)、2月マネーストック、2月都心オフィス空室率、2月工作機械受注、5年国債入札(3/9)、1-3月期法人企業景気予測調査、2月国内企業物価指数、メジャーSQ算出日(3/10)がある。
国内企業決算では、日ハウスHD、学情、DyDo、フジコーポ、ピジョン(3/6)、ガレージ、不二電機(3/7)、アスカネット、イハラケミカル(3/8)、積水ハウス、ミライアル、クミアイ化、日ビュホテル、鎌倉新書、菱洋エレク(3/9)、カナモト、テンポス、Hamee、鳥貴族、ADR、シーアールイー、モルフォ、エイチーム、ソフトウェアサー、フリービット、gumi、アイリッジ、神島化、イトクロ、サムコ、アイモバイル、コーセル、トーホー、シーイーシー(3/10)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、米1月製造業受注(3/6)、米1月貿易収支、米1月消費者信用残高、米3年国債入札(3/7)、中国2月貿易収支、米2月ADP雇用統計、米1月卸売在庫、米10年国債入札(3/8)、中国2月消費者物価・生産者物価、ECB定例理事会(ドラギ総裁会見)、EU首脳会議(〜3/10)、米2月輸入物価、米30年国債入札(3/9)、米2月雇用統計、米2月財政収支(3/10)などが注目される。
新規上場では、3/7にロコンド(3558)がマザーズに上場する。靴とファッションの通信販売サイト。「即日出荷」「送料無料」「サイズ交換無料」「返品送料無料」のサービスを特徴とする。ECサービスで構築したIT・物流インフラなどを共有・活用したプラットフォームサービスも運営している。「なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?」の著者が社長を務めるなどで有名なネット通販ベンチャーである。
3/8は、ピーバンドットコム(3559)がマザーズに上場する。プリント配線基板のファブレスメーカー。ECサイト「P板.com」を運営を通じて受注しており、提携する国内外の複数の工場から製品を仕入れて販売している。基板を製造するためのデータの設計や、基板への部品実装、電子機器などを収めるケース(筐体)の製造など、基板製造の前後の工程でサービスを展開している。サイト上で注文手続きが完結し、初期費用を抑えられる工法の採用などで試作品などのような少量・短納期の注文に対しても柔軟に対応している。
来週の注目銘柄(2017/3/6〜3/10)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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3632 | 1,050円 | 655円 | 業績および株価が出直り基調にある。2/2発表の上期決算では連結の営業利益はほぼ従来計画並みの40億円となったが、為替差益の計上により、経常利益は計画の40億円を大きく上回る63億円となった。決算を受けた株価は大幅高となった上に、その後もしっかりとした動きが続いている。ソーシャルゲームはブームの一巡感があり、前年同期比では大幅営業減益の状況が続くが、期待のはく落で株価の方が相当程度調整したことも事実。営業利益が計画線での着地となった点にも、業績底打ち感がうかがえる。株価は昨年1月安値458円と同年8月安値462円とでダブルボトムを形成した。上期決算を受けた後の上昇で、昨年4月の戻り高値680円を上回っており、その見方は一段とサポートされた。長期のチャートでは2月に24カ月移動平均線を明確に上抜けており、テクニカル面の好転でアク抜け感が強い。ターゲットは1,050円、ロスカットは655円 | |
4849 | 3,000円 | 1,980円 | 「エン転職」など求人情報サイトの運営を手がける。おう盛な求人需要を受けて業績は絶好調だ。第3四半期累計時点の連結営業利益は前年同期比32%増の54億円と大幅増益で、通期計画68億円。対する進ちょくも79%と高い。「エン転職」経由での応募が順調に推移し、広告掲載数は過去最高を更新しており、人材紹介事業も着実に伸びている。回復の兆しも見えつつある国内景気や政府の「働き方改革」改革などを追い風に、転職市場は引き続き活況が予想され、株価にも好影響を及ぼすと予想する。株価は2015年12月高値(2,397円)からの調整局面にあるが、三角もち合いを形成している。三角もち合いはトレンドの踊り場の意味合いが強く、一段高への期待を高められる値動きである。3月に入ってからはその上値抵抗線を上回ってきており、いよいよ新たな上昇トレンドの発生が確認できる段階に入ってきた公算が大きい。ターゲットは3,000円、ロスカットは1,980円 | |
5391 | 200円 | 121円 | 不燃ボードやトンネル内装材などを手がける建材会社。太平洋セメントグループ。業績は第4四半期に偏る傾向が強い。建設・建材業界は防災・減災ニーズの高まりを受けインフラ需要は引き続き堅調に推移するが、2020年東京オリンピック・パラリンピック関連工事に関しては本格的な需要が先延ばしになっている。工業製品・エンジニアリング事業では、鉄鋼メーカー向けで世界的な製品の供給過多が幾分解消されたことにより、耐火断熱材の需要が活発化しているもよう。株価は200円を割り込んでいるが、オリンピック特需をまだ織り込んでない可能性が高く、底上げが期待できる。月足ベースでは昨年11月に大陽線を形成し、足元までは高値もみ合い(上値遊び)が続いている。一目均衡表では「三役好転」となっており、上放れは時間の問題だろう。ターゲットは200円、ロスカットは121円 | |
6756 | 3,100円 | 2,480円 | 無線通信システムや半導体製造装置などを手がける。おう盛な半導体需要を背景に、昨年4月以降は上昇トレンドが続いている。今期は減収減益見通しで、直近発表の第3四半期決算時にも通期の純利益見通しを下方修正しているが、株価が押したところでは買いが入っている。半導体製造装置関連のセグメントでは、第3四半期決算時点では前年同期比で減収減益だが、堅調な受注を受けて通期では前期の水準を上回る見通し。株価は週足ベースでは13週移動平均線をサポートに順調に上値追いが続く。25日移動平均線を回復したあとは、早くも直近高値を更新する展開となっている。今月に入って大きく下げる場面があっても切り返しが早く、悪材料に対する耐性がついていると判断。信用取引の取組み面も良好であり、買い安心感があるといっていいだろう。ターゲットは3,100円、ロスカットは2,480円 | |
7751 | 3,650円 | 3,200円 | 米大統領議会演説通過で米国株は大幅高。これを受けて主力大型株へ見直し買いが続く展開を想定。2016年12月期は大幅減益となったものの、株価は昨年7月安値から底入れ機運が高まっている。昨年12月以降は3,000円台前半でもみ合いにあるが、週足の一目均衡表では基準線上を維持しており、上げ待ちの状態にあるとみられる。米国株は高値警戒感が強いものの、円安方向に鈍いドル円相場が遅行して円安に傾いてくる可能性が高く、もみ合いレンジ内では仕込み場と考えたい。主力株のなかでは中期波動でも出遅れ感が強いことに加え、配当利回りは4%を超えており、動きが良くなれば配当面の妙味からも追随買いが入りやすくなると考える。2017年12月期の通期連結営業利益予想は2,550億円(前期比11.4%増)を見込んでいる。消耗品の販売が期待できるカラー機やレーザー複合機の需要が拡大する見通しであること、FPD露光装置・有機ELディスプレイ製造装置やネットワークカメラの市場の拡大が続く見込みであることが寄与するもよう。ターゲットは3,650円、ロスカットは3,200円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証上場銘柄で3/1現在、時価総額が100億円以上、PBRが5.0倍程度以下、配当利回りが0.8%以上、信用倍率が6.0倍以下、株価が100日移動平均線を上回っている中から、出来高面、業績面、テーマ性、話題性などを考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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