来週の株式見通し(2017/2/27〜3/3)
来週(2017/2/27〜3/3)の日経平均株価の予想レンジは19,200円-19,700円。米国株式市場ではダウ平均が2/23まで10連騰を記録した。ダウ平均は2009年以降の上昇トレンドでは200日移動平均線から上方かい離率が12%水準になると頭打ちになる傾向があり、足元の200日移動平均線にあてはめると20,960ドル水準となる。今回も同様の傾向が当てはまれば、あと一歩のところで目先の転換点を迎える。
つまり、来週の東京株式市場にとっては米国株式市場の反落が主なリスク要因となるが、世界的にショック安となる要因でもない限りは、米国株式の調整が日本株に多大な影響を及ぼすことはないと思われる。
イベントとしての注目は、2/28に予定されているトランプ米大統領による上下両院合同会議での演説である。これまで言及してきた政策への具体的な方向が示されるかどうかが焦点となることに加え、米1月耐久財受注(2/27)、米10-12月期GDP改定値、米2月シカゴ購買部協会景気指数(2/28)、中国2月製造業PMI、中国財新2月製造業PMI、米2月ISM製造業景況指数、米1月建設支出、ベージュブック(3/1)、米2月ISM非製造業景況指数(3/3)など影響力の大きい経済指標の発表も多いため、一時的にボラティリティが高まる場面もありそうだ。
国内の経済指標では1月鉱工業生産(2/28)、10-12月期法人企業統計(3/1)などが材料になりやすい。
図表1は、米中の製造業PMIと日経平均株価の推移を示したものである。以前の話の繰り返しになるが、米1月ISM製造業景況指数は56.0と2014年11月以来の高水準となり、中国1月製造業PMIは51.3と好調で、米中の合計でみると107.3まで改善した。米中の景況感は2016年に入ってから改善基調が続いており、2010年と2011年の最高水準をつないだ景気のトレンドラインをやや上抜ける格好となった。来週発表の2月の実績で両者の改善基調が続くようだとトレンドラインを明確に上回ることになるため、世界では景気敏感株としての位置づけとされる日本株の底上げ要因になる。一方、トレンドラインを下回る結果になった場合、外需関連株への売り圧力が増す公算が大きい。3月FOMC(連邦公開市場委員会)を控え、株式市場がどのような反応を示すかは微妙だが、米長期金利やドル円相場にとっても変動要因となる材料には事欠かない1週間となりそうだ。
図表1:米中の製造業PMIと日経平均株価(2005/1-2017/1)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
2月に入ってからの東京株式市場の変化は東証2部や日経ジャスダックなどの中小型株指数が2006年の高値を上回ってきたことである。アベノミクス相場で2006年〜2007年当時の高値をすでに上回っていたのは、主要指数では日経平均株価だけだったが、日本株全体に追随する強気サインが点灯したといえよう。
ただ、こういった中小型優位の現象は日本だけではない。米国ではダウ平均とナスダックは上昇を続けているが、ナスダックはITバブルの高値を上抜けたばかりであるのに対して、ダウ平均は今の上昇波動の前の高値となる2007年高値を上回ってから、すでに46%程度上昇している。つまり、今後の上値余地を考えた場合、過去に経験した水準から新値ゾーンに入ったばかりのナスダック、強いては小型株の方が上値余地が大きいと考えることができる。
一方、東証1部全体を表すTOPIX(東証株価指数)を規模別で分けることができる。大型株を示す「TOPIX 100」でみると、バブル崩壊後の下落トレンドは依然として継続。「TOPIX Mid400」は2006年当時の高値をすでに上抜けている。「TOPIX スモール」は2006年の高値に加え、最近の高値(2015年)も超えてきている。つまり、大型株よりも中小型株の方が需給改善の進展度合いが大きく株価は上昇しやすいといえる。しばらくは市場全体の中身は中小型株の優位性が継続する可能性が高く、小型株にはボロ株も含め、バブリーな動きが起きうるかもしれない。
「TOPIX スモール」採用銘柄のなかで、上昇局面における特定の株価水準の数を比べたものが以下の図表2である。2002年12月からの上昇局面では300円未満の銘柄数が443→48に減少、2,000円以上の数は59→362に増加した。一方、アベノミクスが始まる直前である2012年10月安値から足元までの上昇局面では、指数は2002年からの上昇とほぼ同値幅上昇しているが、2/20現在の途中経過でみると、2,000円以上の数は61→370に同じように増加している一方、300円未満の数は469→169までの減少にとどまっている。
最近は株式併合などいろんな要因はあるにせよ、依然として低位小型株の底上げの余地はあるといえる。
図表2:TOPIXスモールの推移(1989/01/06-2017/02/20)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表3)のチャート分析で今後ポイントになるのは、25日移動平均線(19,176円 2/23現在)と75日移動平均線(18,807円 2/23現在)が接近する時期である。現在、日経平均株価は25日移動平均線を挟んでもみ合い(調整)基調を続けている。ただ、単にもみ合い(調整)といっても意味がある。昨年のトランプショック時の鋭角的で瞬間的な下への「往ってこい」の調整に対し、いまの調整が時間をかけた対照的な動きになっていることが重要なのである。この対照的な動きは、オータネーションという。オータネーションとは5つの波で構成される上昇トレンドがあるとした場合、3つの上げと2つの下げ(調整)で構成されるが、その2つの調整は同じパターンにはならない、というテクニカル分析の1つの理屈である。もちろん、絶対そうなるとは言い切れないが、株価が今、トレンド上のどこにいるかの位置を確認する上での目安になる。つまり、今の日経平均株価は1つのトレンド上では、「最後の上げ待ち」の状態と考えることができる。
19,500円の心理的節目に昨年12月から4回程度、上値を抑えられる場面があったが、下値も堅く押し幅も限定的である。トランプ相場に乗り遅れた個人投資家が19,000円割れの水準で買い指値をしているようだ。ただ、そういう指値が買えてしまうと相場は下落のサインといえるが、買えない状態だからこそ、下値を切り上げるようになっていく。
とりあえずは、25日移動平均線の上昇あるいは横ばいが続くなか、下方で上昇を続けている75日移動平均線が近づくかどうかのタイミングで、おそらく何らかの材料が出現し、結局、株価は上放れていくシナリオだろう。日柄で重要なタイミングは、3/23-3/27となり、そのあたりまではもみ合い基調が続くことも考えられる。
図表3:日経平均株価の日足チャート(2016/01/04-2017/02/23)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表やイベントは、1月鉱工業生産、1月商業動態統計、1月自動車生産台数、2年国債入札(2/28)、10-12月期法人企業統計、1月新車販売台数(3/1)、2月マネタリーベース、10年国債入札(3/2)、1月労働力調査・有効求人倍率、1月消費者物価指数、1月家計調査、2月消費者態度指数、任天堂が新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」発売(3/3)がある。
国内企業決算では、ラクーン、東和フード、ウチダエスコ(2/27)、スリープロ、はてな、パーク24、内田洋、エイチ・アイエス(2/28)、伊藤園、巴工業(3/1)、アイ・ケイ・ケイ、ロックフィール、アルチザ、アインHD(3/2)、日駐、くらコーポ、日本スキー、ハイレックス(3/3)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス2017」(スペイン・バルセロナ、〜3/2)、米1月耐久財受注、米1月中古住宅販売仮契約、米2月ダラス連銀製造業活動(2/27)、トランプ米大統領が上下両院合同会議で演説、米10-12月期GDP改定値、米12月S&Pコアロジック/ケース・シラー住宅価格指数、米2月シカゴ購買部協会景気指数(2/28)、中国2月製造業PMI、中国2月非製造業PMI、中国財新2月製造業PMI、米1月個人所得・個人支出、米2月新車販売、米2月ISM製造業景況指数、米1月建設支出、ベージュブック(3/1)、米2月ISM非製造業景況指数(3/3)などが注目される。
米企業決算の発表は、オートゾーン、ターゲット、セールスフォース・ドットコム(2/28)、ベストバイ、ブロードコム、ロウズ(3/1)、コストコホールセール、クーパー(3/2)などが予定している。
来週の注目銘柄(2017/02/27〜03/03)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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1332 | 670円 | 518円 | 日本株全体が手がかり難の地合いとなっており、業績面で買い安心感のある銘柄への注目が高まる展開を想定。同社は2/3発表の第3四半期決算で通期見通しを上方修正しているが、上期の時点でも営業利益見通しを上方修正しており、利益面の改善が著しい。魚価の回復で水産事業が好調に推移している。2/21には期末配当予想の上方修正と株主優待導入を発表し、株価は好反応を示した。業績好調かつ、株主への利益還元にも積極的で、かつPERは10倍台前半と過熱感も乏しい。チャート上では25日移動平均線や一目均衡表の基準線上などをおおむね維持しており、相変わらず底堅い。2007年高値880円はまだ遠い存在だが、昨年1月高値(709円)を上限に中期波動はもみ合いに入る可能性が高く、まずは昨年2月高値(670円)あたりを狙いたい。ターゲットは670円、ロスカットは518円 | |
3665 | 2,500円 | 1,680円 | 海外のファッションブランドを扱う通販サイト「BUYMA(バイマ)」の運営などを手がけている。2017年1月期の第3四半期累計(2-10月)の連結営業利益は前年同期比9倍の12.1億円で着地。会員数やアクティブユーザーが順調に伸びており、業績が大幅に改善している。主力大型株は手がけづらい地合いが当面続く可能性が高く、動きが良い中小型株を物色する流れが強まろう。株価は昨年2月に533円でボトムをつけた後、9月には2,130円と約4倍近くまで上昇したが、その後は主力株優位の様相が強まるなか軟調な推移が続いた。一方、12月に底値固めが進み、今年に入ってからは再び上昇基調を強めている。昨年7月高値1,746円を上回ってきたことで、次は昨年来高値(2,130円)が視野に入ってきた。一目均衡表では三役好転が続いており、上値余地はありそうだ。ターゲットは2,500円、ロスカットは1,680円 | |
6395 | 1,750円 | 1,340円 | 市場の注目は2/28のトランプ大統領の議会演説に集まっているが、従来からの主張である雇用の拡大に対して強いメッセージを出す期待が高く、株式市場ではインフラ関連銘柄が改めて注目される。同社は建設用クレーンを手がけており、海外の売り上げの中では北米の占める割合が最も高い。直近2017年3月期の第3四半期時点では円高の影響や需要減少で米国事業も伸び悩んでいるが、この先は円高一服と需要回復が見込まれるため、業績改善期待が高まると予想する。株価は原油価格の持ち直しを機に底を打ち、米大統領選挙以降はトランプ銘柄との見方から騰勢を強めた。昨年12/16に1,617円の高値をつけた後はもみ合い基調で、1,400円〜1,500円のレンジで値を保った動きが続いている。一目均衡表では抵抗帯(雲)の上に浮上しており、出来高の増加とともに高値更新に期待できる局面だ。ターゲットは1,750円、ロスカットは1,340円 | |
7832 | 3,720円 | 3,000円 | 2017年3月期の第3四半期累計(4-12月)の連結営業利益は602億円(前年同期比32.9%増)で着地。家庭用ゲームソフトで欧米地域における新作タイトル「DARK SOULS(ダークソウル)3」「ドラゴンボールゼノバース2」の販売が好調に推移した。2/22には従来24円としていた通期配当金を54円(前期は52円)へと引き上げると発表した。期末の安定配当12円に、業績連動配当30円を加算するという。株価は2014年高値(3,175円)を起点としたもみ合いを上抜けた後の上昇局面にある。昨年11月高値(3,345円)からの調整局面は、25日移動平均線を下回り下値模索となる場面があったが、25日移動平均線に続き75日移動平均線までも上抜ける展開となってきた。信用売り残と買い残がきっ抗し、需給面に不安は乏しい。ターゲットは3,720円、ロスカットは3,000円 | |
9882 | 3,400円 | 2,550円 | カー用品・二輪用品などの販売事業が拡大。タイヤを中心とした消耗品の拡販や、車検・鈑金・ボディコーティングなどのカーメンテナンスメニューを拡充している。株主還元に意欲的で今期も増配を見込む。2/23付の日経新聞朝刊では、2018年3月期以降も増配を続ける方針だと報じられた。今期の年間配当は60円(前期は54円)と7期連続の増配を予定するが、収益力や財務が強固になってきたため、より多くの利益を株主還元に振り向けるという。従来は25%としていた連結配当性向の目標も30%に引き上げる考えとみられる。株価は25日移動平均線をサポートに右肩上がり。2015年8月高値(2,854円)をクリアし、上値にある主要なフシは1996年4月につけた3,482円まで見当たらない。割安感があり信用買い残が少ない点も重要なポイントとなる。ターゲットは3,400円、ロスカットは2,550円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証上場銘柄で2/22現在、時価総額が300億円以上、PERが18.0倍程度以下(マザース銘柄除く)、信用倍率が8.0倍以下、株価が25日移動平均線や200日移動平均線を上回っている中から、出来高面、業績面、テーマ性、話題性などを考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
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