来週の株式見通し(2016/9/5〜9/9)
来週(2016/9/5〜9/9)の日経平均株価の予想レンジは16,800円-17,400円。東京株式市場は強含む展開か。裁定買い残の少なさや日銀によるETF買いなどが期待できる好需給の環境のなか、上値は為替市場の動向が引き続きカギとなる。国内企業の決算発表も比較的多く、個別物色なども絡めた相場展開が予想される。
全体の売買代金が急激に増加する状況でもないが、相場のフォローとなるのは米利上げ観測を背景として短期的に円安志向が高まってきている点だ。ドル円相場が75日移動平均線の104円台前半を突破する動きなどがある場合は、先物主導で上値を試す展開が予想される。業績の下方修正懸念が和らぐ輸出関連株に加え、このところ世界的にも出遅れ感が意識されている銀行株への買いが続けば、17,000円超えが実現する可能性が高い。
いずれにしても、米8月雇用統計の結果を踏まえたドル円相場の動向や、米国株の動き次第では、メジャーSQに向けて上にも下にも値動きが大きくなる可能性は高いだろう。
国内の経済指標では、7月景気動向指数(9/7)、4-6月期GDP改定値、8月景気ウォッチャー調査(9/8)などが注目材料。海外の経済指標やイベントでは、米8月ISM非製造業景況指数(9/6)やベージュブック(地区連銀経済報告)(9/7)などを通じて米利上げ観測が一段と強まるかどうか。中国8月貿易収支やECB定例理事会(ドラギ総裁会見)(9/8)なども時々、相場にサプライズとなることが見受けられ目が離せない。
年初から8月までの東証1部の価格帯別累積売買代金(図表1)をみると、16,500円〜17,000円が138兆円と最も多く積み上がっている。日経平均株価は7月高値、8月高値ともに17,000円手前で伸び悩み反落してきたが、17,000円を上回ると累積売買代金が比較的少ない価格帯に入り、上値が軽くなる可能性が高い。そういった意味でも、3度目の正直で足もとを超えられるかが焦点となる。
図表1:日経平均株価と価格帯別累積売買代金(2016/1/4-8/31)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
今年5月の後半にご紹介した、日経平均株価のコポック指標をフォローしてみたい。図表2の青線が長期投資のタイミングをみる「コポック指標」である。「コポック指標」は日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの平均株価の月中平均を使い、ある時点と比較した騰落率の加重平均線である。ここでは各月の12カ月前と比較した騰落率を求め、その直近10カ月間の加重平均(現在に近づくほど1倍ずつ比重を加算していく、計算対象期間で最も新しい価格には10倍する)で描いている。
主には底値圏での買いタイミングをみるもので、指標がマイナス圏にあり、上向きに転じることが買いサインの条件である。今回の下落局面は今年4月にマイナス圏に入り、足もとは下落が続いている。12カ月前の昨年8月が19,000円台だったため、何となく下落しているのはおわかり頂けよう。
では、どのタイミングになればマイナス圏で上向きに転じるのか? 将来の株価推移を仮想定してみると、8月の月中平均(16,586円)と同じく、9月以降も月中平均が16,500円で続くと見立てると、12月に上向くことになる(図表2の赤線は予想)。月中平均が16,000円に下落する場合は1月。逆に、今よりも少し水準を切り上げ、17,000円になると9月に上向くことになる。
図表2:日経平均株価とコポック指標の推移(1992/1-2016/8)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表3)は7/21高値(16,938円)を起点に8/12高値(16,943円)を通る短期の上値抵抗線に突っかける動きとなっている。心理的節目17,000円や8月SQ(16,926円)が上値で抵抗となりやすいが、来週は25日移動平均線(16,584円、9/1現在)の上昇モメンタムが強まる公算が大きく、株価も一段高に期待できそうな局面だ。5/31高値(17,251円)や、4/25高値(17,613円)が次のターゲットとなる。
週足でみると、7月中旬に形成した大陽線の上方で「上値遊び」が続く格好となっており、二段下げ目に突入する前兆と捉えることもできる。株価が大崩れしなければ、9月後半には13週移動平均線(16,203円、9/1現在)が26週移動平均線(16,427円、9/1現在)を上回る可能性が高い。上昇に弾みがつき4/25高値(17,613円)を上回ることができれば、昨年6月高値(20,952円)からの調整完了に一歩近づくことになる。
図表3:日経平均株価の日足チャート(2016/1/4-2016/9/1)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表やイベントは、7月毎月勤労統計調査、黒田日銀総裁が「きさらぎ会」で講演(9/5)、30年国債入札(9/6)、7月景気動向指数(9/7)、4-6月期GDP改定値、8月都心オフィス空室率、8月企業倒産件数、8月景気ウォッチャー調査、5年国債入札(9/8)、8月マネーストック、7月第3次産業活動指数、メジャーSQ算出日(9/9)などがある。
企業決算の発表は、日本ハウスホールディングス、学情、アマガサ、ティーライフ、エイケン工業(9/5)、くらコーポレーション、アドバンス・レジデンス投資法人、イーブックイニシアティブジャパン、アイル、ナトコ、OSGコーポレーション、きんえい(9/6)、アルトナー、ビューティガレージ、日東製網、イハラケミカル工業、サムコ、トーホー、東京楽天地、ながの東急百貨店(9/7)、積水ハウス、アスカネット、ストリーム、コーセーアールイー、日本ビューホテル、鎌倉新書、シーシーエス、トップカルチャー、スバル興業、シーイーシー(9/8)、ベルグアース、ベステラ、フルスピード、ケア21、テンポスバスターズ、Hamee、アゼアス、ミサワ、鳥貴族、アールエイジ、丸千代山岡家、菊池製作所、モルフォ、ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス、エイチーム、ソフトウェア・サービス、アイリッジ、イムラ封筒、ミライアル、ユークス、クミアイ化学工業、共和工業所、イトクロ、インスペック、トミタ電機、ウイルコホールディングス、マツモト、正栄食品工業、カナモト、東京ドーム、精養軒、丹青社(9/9)などが予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、G20首脳会議(中国・杭州市 〜9/5)(9/4)、中国財新8月PMIサービス業(9/5)、東アジア首脳会議(ラオス・ビエンチャン 〜9/8)、豪州準備銀行理事会、米8月労働市場情勢指数、米8月ISM非製造業景況指数(9/6)、豪4-6月期GDP、ベージュブック(地区連銀経済報告)、ブラジル・リオデジャネイロ・パラリンピック開催(〜9/18)(9/7)、中国8月貿易収支、ECB定例理事会(ドラギ総裁会見)、米7月消費者信用残高(9/9 4:00)(9/8)、中国8月消費者物価指数、中国8月生産者物価指数(9/9)などが注目される。
米企業決算の発表は、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(9/7)、クローガー(9/9)などが予定している。
なお、9/5の米国市場はレイバー・デーのため休場となる。
来週の注目銘柄(2016/9/5〜9/9)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
---|---|---|---|---|
3402 | 1,140円 | 940円 | 炭素繊維で世界トップ。水処理用の逆浸透膜などでも有名。収益の多角化に積極的な企業だ。2017年3月期の第1四半期(4-6月)決算は連結営業利益が410億円(前年同期比10.7%増)で着地。繊維やプラスチック・ケミカル事業で原価改善を進めた。情報通信材料・機器事業でも、有機EL用途向けにスマホ・タブレット端末関連材料が堅調に推移した。直近では炭素繊維の供給で米宇宙ベンチャーと基本合意したと報じられるなど、材料がたえない企業である。株価は直近6月安値(854円)で、2012年10月安値(421円)を起点とする右肩上がりの下値支持線上を意識した。月足では一目均衡表の基準線の上昇が続き、年末に向けては注目の局面に入ってくる。信用買い残の減少で売り残ときっ抗しており、需給面に不安はない。短期的にも5日移動平均線をサポートに強いモメンタムが続く展開が予想される。ターゲットは1,140円、ロスカットは940円 | |
6103 | 940円 | 715円 | 工作機械大手。足元、出遅れ外需関連株の優位な地合いが後押しし、同社の株価は7/6につけた622円安値をボトムに戻り基調が続いている。7/29に発表した2017年3月期の第1四半期(4-6月)決算では前年同期比22%営業減益と厳しい内容となり、株価も売り反応となった。ただ、8/3安値(673円)までで切り返しており、当面の底を打った可能性が高い。昨年6月には1,474円まで高値をつけており、PERは10倍台前半と過熱感はない。今週の上昇で26週移動平均線を回復したことも強気転換の要因だ。日足の一目均衡表では雲の上方に浮上してきた。7/29の戻り高値808円が目前に迫っているが上回ることができれば、4月の急落で形成した週足のマド埋めとなる877円〜直近の下げの倍返し程度の上値は期待できそうだ。ターゲットは940円、ロスカットは715円 | |
6630 | 2,950円 | 2,000円 | 美容家電販売を手がけている。同社は8/15、2017年4月期の通期連結営業利益予想を従来の12.0億円から18.9億円(前期比84.0%増)に引き上げた。販売が好調なほか、原価低減の取り組みが奏功した。今後も訪日客による底堅い需要が業績面での下支え要因となる。8/31にはアートネイチャーとヘアケア商品の共同開発に関する業務提携を締結したと発表した。株価は24カ月移動平均線をサポートに右肩上がりを続けている。週足では8月中旬に形成した長大陽線で、13週、26週移動平均線をポジティブブレークして再び買い転換。戻り売りをこなせる出来高増加がみられることから、4月高値(2,333円)をクリアできれば、大台替りに届く水準までの上値余地が期待できそうだ。ターゲットは2,950円、ロスカットは2,000円 | |
7616 | 1,920円 | 1,710円 | 焼き肉「牛角」をチェーン展開することで知られるが、ステーキ店を運営する上場子会社のアトム(7412)も有しており、国内「焼き肉」最大手と言っても過言ではない。8/5発表の2017年3月期の第1四半期決算はマズマズの内容だ。前年同期比3.8%営業減益と下振れたが、会社は通期計画を据え置いた。足元の円高水準は原材料の仕入れで追い風となり、パート・アルバイトなど人件費の上昇をカバーできそう。株価は2015年1月高値(2,028円)を起点に調整が続くが、先高期待が強い高値もみ合いのパターンだ。しばらくもみ合いが続く可能性も高いが、短期的には6/24に付けた下ヒゲ安値を前に切り返しの気配が感じられる。信用残は売り残が買い残を上回っており、買い方の投げでダラダラ下げるような状況ではない。ターゲットは1,920円、ロスカットは1,710円 | |
9024 | 2,000円 | 1,630円 | 西武グループの持ち株会社。鉄道やバス、遊園地、ホテル、リゾート開発、建設、プロ野球球団などを展開している。9/1付「日本経済新聞朝刊」で、同社が2017年3月期に主要5事業がそろって黒字になる見通しだと報じられた。米国ハワイの事業の営業損益が10年ぶりに黒字に転じるという。現地での不動産販売が回復するのが大きいとされ、来期以降はホテルの収益を改善させ、利益を上積みする計画を立てているとした。ハワイ事業の営業損益は11億円の黒字(前期は8億円の赤字)に転じる見通しだという。株価は再上場した2014年4月、公開価格と同値の初値が付き順調に上昇が続いた。一方、2015年4月高値3,695円を起点に5月には月足で大陰線を形成。乱高下する場面もあったが、足元まで上値を切り下げる調整が続いている。ただ、短期的には底固めからリバウンドを強める局面とみられる。25日移動平均線の下方の推移で強気サインは出現していないが、8/31に形成した十字足が転換を示すものかどうかを確認したいところだ。ターゲットは2,000円、ロスカットは1,630円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証1部上場銘柄で8/31現在、時価総額が100億円以上、PBRが5.0倍以下、PERが35.0倍以下の中から、業績面や信用残などの需給面、テクニカル面、テーマ性、話題性などを考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。