来週の株式見通し(2016/5/16〜5/20)
来週(2016/5/16〜5/20)の東京株式市場は弱含みか。日経平均株価の予想レンジは16,100円-16,700円。国内企業の決算発表の一巡や円高一服で好業績銘柄への見直し買いは入るだろう。一方、米国市場が材料の消化にやや不安定な動きになってきており、日本株が下げる場面ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など公的資金による下値買いが下げ幅を限定的にとどめるかがポイントとなる。
5/26-27には主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催される。月内に発表される可能性が高い景気対策や為替市場への円売り介入などを警戒し、CTA(商品投資顧問)やヘッジファンドなどの一部の短期筋の間では株買い・円売りポジションを積み増す機運が高まっているようだ。ただ、景気対策への期待感がはく落するような状況になれば、株買い・円売りポジションの解消や再び株売り・円買いポジションを積み増す動きはあるだろう。GW明けで市場参加者が増えている感じでもないため、海外市場の動向次第では薄商いのなか振れ幅が大きくなる展開も想定しておきたい。
ドル円は依然として下落基調が続いている。足元は揺り戻しで円高一服とはなっているが、日本株を相対的出遅れ感だけで買えるほどの円安水準ではなく、主力大型株へは買い戻し以外手掛けづらい状況だ。トヨタ自動車の今期の連結営業利益見通しは前期比40.4%減になる見通し。為替変動による影響が減益幅の大部分を占めるようだが、米3月小売売上高では自動車・関連部品が前月比で2.1%減少と2015年2月以来の大きな落ち込みとなった。新興国での需要減に加え、同社以外でも北米事業に不安要素が残る。熊本地震に伴う工場稼働停止の影響などが懸念されるハイテク産業においても、回復が予想以上に遅れると収益の足かせになる。
5/8に発表された中国4月貿易統計の悪化を受け、上海総合指数が3月中旬以来の水準まで下げてきた。中国4月鉱工業生産・小売売上高、固定資産投資が5/14に発表される。指標結果が上海総合指数の反転材料にならず、ズルズルと下落基調が続くようだと、円高に続くリスクとして日本株の上値を抑える要因になる。
そういった観点からも、東証2部、ジャスダック、マザーズなどの小型株優位の状況が続きそうだ。特にマザーズに比べて出遅れ感の強い東証2部、ジャスダックに加え、東証1部に分類される小型株などにも妙味があるとみられる(図表1)。為替変動による業績への下方修正懸念が小さいことや、以前に比べると海外投資家による注目度が高まっており、ファンドなどを通じて資金流入への期待は根強い。
図表1:新興市場と小型株指数の推移(2016/2/12-5/11、2/12=100、%)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
国内の経済指標では、5/18に2016年1-3月期の実質GDP(国内総生産)速報値(図表2)が発表される。前期比年率で+0.3%と小幅に改善が予想されている。民間消費は前期比+0.2%、民間設備投資は先行きへの警戒から前期比-0.8%と3四半期ぶりのマイナスが見込まれている。2015年10-12月期は海外の景気減速で輸出が減少したほか、国内需要も消費や住宅など家計部門が悪化した。5/19発表の3月機械受注の結果も設備投資に先行する指標として注目度が高い。
米国の経済指標では、5月NY連銀製造業景気指数(5/16)や4月鉱工業生産(5/17)に加え、4月中古住宅販売件数(5/20)などの発表があり、米景気への懸念を払拭できるかに注目だ。5/19に公表される4/26-27開催分のFOMC議事録では、早期利上げ観測の後退が意識させられるだろうが、株価が軟調に推移していれば経済情勢をやや慎重にした判断が株価の売り材料になる可能性もあり注意したい。
図表2:実質GDP(国内総生産)の前期比年率伸び率(2003/1-2015/12、%)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
米国では一般的に、5月最終月曜日の「メモリアルデー(戦没者追悼記念日)」が夏の始まり、9月初めの「レイバーデー(労働者の日)」が新学期のスタートでもあり、夏の終わりと認識されている。
相場でも、“Sell in May and go away. Don’t come back until St Leger day.”「5月に手仕舞いして(相場から)撤退せよ、セント・レジャー・デー(9月の第2土曜日)まで戻ってくるな」という格言があるぐらい特別な期間である。今の時期になると毎年耳にするこの相場格言。「夏場の撤退」は本当に有効なのだろうか。
過去を検証すると納得できる。図表3は、S&P500の長期パフォーマンスを示したものである。仮に、10月から5月までS&P500で運用し、6月から9月までは市場から撤退するという投資方法(赤のライン)を採用したとする。1996年から今年4月までの約20年間でその投資方法を続けた場合、累積リターンで400%、年率で8.24%となり、実際のS&P500で通年運用(青のライン)した場合の累積リターン235%、年率6.13%を大きく上回るパフォーマンスとなる。一方、6月から9月までS&P500で運用し、10月から5月までは市場から撤退するという投資方法(緑のライン)を採用した場合、この20年間は全く利益を得られず、累積リターン-33%、年率-1.94%とマイナスになった。
例えば、これを10月から4月、5月から9月に二分しても概ね同じ結果となる。10月から4月まで投資する場合は、累積リターンで375%、年率で7.96%。5月から9月だけ投資する場合は、累積リターンで-29%、年率で-1.70%だった。
イベントがたくさんある今年はどうか? 5/26-27の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や、消費増税再延期の判断の有無、6/2にはOPEC(石油輸出国機構)総会がある。前回指摘したように、近年のアノマリー通り6月から原油価格が下げると米国株は弱くなる可能性が高い。ドーハ会合から何も変わったムードはなく、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアでは、在任20年のヌアイミ石油鉱物資源相が退任。サウジ中心のOPECの政策に大きな影響が生じる可能性もある。6月は英国がEUから離脱するかを問う国民投票も行われる。英国のEUからの離脱が実現すれば、経済的にも大きな不安材料だ。 7月にはギリシャ国債の今年最大の大量償還日が到来する。ドイツのメルケル首相は来年の選挙を控え、ギリシャに対しては再び厳しい態度に変化する可能性が高い。
図表3:S&P500の長期パフォーマンス(1996/1/-2016/4)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表4)は5/2の大幅安で形成したマド埋めを達成。3月相場でもみ合いを形成した17,000円前後の水準は戻り売りが強くなるが、このまま5/2安値(15,975円)を下回らずに4/25高値(17,613円)を上抜けていけるかが焦点となる。5/2安値は1月以降の重要なフシでもある。目先的には25日移動平均線(16,518円、5/12現在)がいったん上昇に転じており、4/25高値を早期に上抜けるチャンスでもある。
一方、一目均衡表では転換線が再び下げに転じることや、遅行スパンの逆転(弱気)が続いている。4/25高値を起点とした二段下げの調整で、2/12安値(14,865円)を再びトライする展開なども十分考えられる。ただ、その前に2/12安値を起点とした右肩上がりの下値支持線上で値固めができれば、緩やかながらも上昇基調を維持できそうだ。
週足では、上昇に転じた13週移動平均線(16,580円処)上をトライする場面はあったが、同線上では上値が重い。来週も13週移動平均線の上昇は続きそうだが、上方で推移する下落基調の26週移動平均線(17,380円処)が上値を抑えるフシとなる。
図表4:日経平均株価の短期チャート(日足、2015/6/1-2016/5/12)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表やイベントは、4月国内企業物価指数、4月工作機械受注(5/16)、2016年1-3月期の実質GDP、4月首都圏新規マンション発売(5/18)、3月機械受注、3月全産業活動指数(5/19)、G7財務相・中央銀行総裁会議(仙台、〜5/21)(5/20)などがある。
企業決算の発表は、三菱UFJFG、電通、JRE、大正薬HD、ソニーFH、あおぞら、第一興商、日製鋼、森永乳、サンゲツ、パーカライ、住友ベーク、大気社、南都銀、フジッコ、ジャストシステ、UBIC、船井電機、日トムソン、シダックスなど(5/16)、アイコム、ナガホリ、昭和化、フジプレアム、ムサシなど(5/17)、旭コンクリ、相模ゴム、チヨダウーテ、大同信、ニレコ、アイレックス、ノーリツ鋼機、光陽社など(5/18)、サンユ建、ケネディ商、フジコー、原田工業、うかいなど(5/19)、損保JPNK、MS&AD、光通信、東京海上、イチケン、鶴見製、ビルト工、東北新社、ミューチュアル、ラサールロジ、インテアHD、TYK、フリージアマク、サハダイヤ、テクノセブン、地盤ネットH、東芝テックなど(5/20)が予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントは、米5月NY連銀製造業景気指数、米5月NAHB住宅市場指数(5/16)、ユーロ圏3月貿易収支、米4月住宅着工件数・建設許可件数、米4月消費者物価、米4月鉱工業生産・設備稼働率(5/17)、豪4月景気先行指数、ユーロ圏4月消費者物価指数(5/18)、アジア石油化学工業会議(APIC)開催(シンガポール、〜5/20)、豪4月失業率、米4月シカゴ連銀全米活動指数、米5月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、米4月CB景気先行総合指数、4/26-27開催のFOMC議事録(5/19)、米4月中古住宅販売件数(5/20)などが注目される。
米企業決算の発表は、ホーム・デポ(5/17)、ウォルマート・ストアーズ(5/19)などが予定している。
来週の注目銘柄(2016/5/16〜5/20)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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1803 | 1,200円 | 927円 | 大手ゼネコン。民間建築に強くオフィスビルや工場の受注比率高い。国内建築工事の採算改善が寄与。5/11、2017年3月期の通期連結営業利益予想を940億円(前期比0.7%減)にすると発表。首都圏を中心に不動産投資の動きは依然活発で、公共事業予算の前倒し執行への期待感もあり、高水準の受注環境が続く見通し。業績連動配当。社員への利益還元も意欲的だ。株価は2006年高値(947円)更新後の揺り戻し。2015年高値(1,237円)からの調整は深いが、52週移動平均線割れを回避か。日足ベースでも「二番底」を確認し、下値切り上げ波動が継続。まずは直近高値に向けてリバウンド狙い。ターゲットは1,200円、ロスカットは927円 | |
1820 | 550円 | 397円 | トンネル・ダム・橋梁工事に定評。官公庁向けに強い。虎ノ門1丁目再開発やリニア新幹線を中心に土木案件も堅調。前期は受注環境の改善や労務費・資材費が安定して推移したことなどにより国内建設工事の採算改善が続いた。シンガポールのトンネル工事を皮切りに海外開拓を急ぐ。ガバナンスは充実。株価は2014年高値を起点にもみ合いが続いているが、長期的な足どりでは高値もみ合いで先高期待が強い。600円前後の上値の壁を突破できれば、バリュエーションが再評価される公算が大きい。PER10倍割れ、PBR1倍割れと割安感が強く、機関投資家による比率引き上げの条件揃う。ターゲットは550円、ロスカットは397円 | |
4694 | 5,500円 | 4,070円 | 臨床検査2位。全国にラボ・ネットワークを形成し地域密着型で展開。主力の臨床検査事業の売上が堅調に推移している。生化学と血液ルーチン検査の自動化により、処理能力が大幅向上。業者間競争による価格下落や首都圏ラボを中心とした人員・設備の増強に伴うコスト増を吸収し、増収増益基調を維持している。株主優待制度を導入。株価は2003年安値からは三段上げ目に突入。短期的には過熱感もあるが、4,180円前後の壁を突破したことで先高期待は強い。バリュエーション面に割安感はないが、信用残は売り残と買い残ともに低水準で新規の買い方の参入に期待できそう。3月以降のもみ合い局面では出来高は減少傾向にあるが、急増するまでに仕込んでおきたいところだ。ターゲットは5,500円、ロスカットは4,070円 | |
4847 | 780円 | 430円 | 金融関連に強みを持つシステム開発会社でカード決済システムなどを手がける。5/9に2016年6月期第3四半期累計(7-3月)決算を発表。連結営業利益は前年同期比51.7%増の4.3億円と大幅増益を達成した。第2四半期累計(7-12月)の2億円からはほぼ倍増で、会社の通期計画5.4億円に対する進ちょくも79%と高い。金融システム関連は、今後も堅調な需要が期待でき、決算確認で改めて評価が高まる展開を予想する。株価は2/12安値(315円)を起点に下値を切り上げる上昇基調にあり、2015年12月高値(567円)クリアは時間の問題だろう。2015年7月高値(690円)も過去の高値に比べると低い壁だ。買い方の戻り売りに押される場面は想定されるが、2015年12月高値更新後の倍返し程度の上値余地は見込んでおきたい。ターゲットは780円、ロスカットは430円 | |
6361 | 612円 | 487円 | ポンプの総合メーカー。5/11に同社が発表した2016年3月期の通期連結営業利益は380億円(前期比10.0%増)だった。精密・電子事業で主力製品のCMP装置の需要が回復し、新型めっき装置の受注も好調だった。一方、2017年3月期の通期連結営業利益予想を370億円(前期比2.7%減)にすると発表。市場予想は310億円だった。主力の風水力事業では海外で地域ごとのニーズに合った製品開発の推進と、グローバルな生産・販売体制、サービス&サポート体制の充実を図り事業範囲の拡大を進める。株価は2014年2月高値730円を起点に調整は続いているが、2008年10月安値149円からの上昇波動は維持する動き。直近安値(418円)は長期右肩上がりの下値支持線上を概ね意識しており、短期波動の好転に加え、長期的な買い場を迎えた公算が大きい。ターゲットは612円、ロスカットは487円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証上場銘柄で5/11現在、時価総額が1,000億円以上(ジャスダックは100億円以上)の銘柄を対象に、PERが20.0倍以下(ジャスダックは50.0倍以下)、配当利回りが0.5%以上、PBRが3.0倍以下を条件に、テクニカル面や業績面、話題性などを考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
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