来週の株式見通し(2016/2/15〜2/19)
来週(2016/2/15〜2/19)の東京市場は短期底を確認する展開が予想される。日経平均株価の予想レンジは14,900円-16,500円。今週の15,000円割れによって、売り飽きムードが下げ渋りにつながる公算が大きい。世界景気減速や欧州発の金融リスクへの警戒感はしばらく拭えそうにないが、原油先物市場や為替市場のリスク回避に対する巻き戻しも交え、株式市場は空売りの買い戻しが反発の原動力となる場面がありそうだ。週後半に開催されるEU首脳会議なども売り控えの要因となり、週を通じて需給面の改善が若干みられるだろう。企業の第3四半期の決算発表が一巡し、業績面やバリエーション面で割安感がある銘柄へ水準訂正を期待した買いが予想される。
国内経済指標では、10-12月期実質GDP(2/15)、12月機械受注(2/17)などが注目だが、外部環境の落ち着き度合いに焦点が向いており、よほど予想からかい離する結果にならなければ影響は限定的だろう。1月訪日外客数(2/17)はインバウンド関連株への資金流出入に影響を与えそうだ。
中国本土市場は連休明け(2/15)で取引が再開される。連休中の海外株式の下げを嫌気して大幅安となる場合などは投資家心理の一段の悪化につながり、日本株の動向にも多少の影響を及ぼす公算が大きい。特に中国1月貿易収支(2/15)の発表が重なるため、景気動向の強弱もボラティリティを高める要因になりかねない。
2015年12月の貿易収支では輸出実績が1.4%減(前年同月比)となり、11月の6.8%減から縮小した。中国当局が人民元急落を容認したことで輸出が押し上げられたとの見方が強い。一方、14カ月連続で減少となった輸入は7.6%減(同)と市場予想を上回る着地となった。輸出、輸入実績ともにプラスに転じたときのインパクトは大きいとみられ、2/15の米国市場が休場ということもあって、市場関係者の注目が集まりやすい。そのほかの海外指標では、米2月NY連銀製造業景気指数(2/16)、米1月住宅着工・許可件数、米1月鉱工業生産・設備稼働率(2/17)、中国1月消費者物価・生産者物価指数、米1月CB景気先行総合指数(2/18)などが重要となる。
図表1:中国の輸出と輸入実績(前年同月比、2008/1-2015/12)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
10年国債利回りが2/9、初のマイナス圏に低下した。その過程で株式の配当利回りと長期金利の差が大きく開いている。
図表2は、TOPIX(東証株価指数)の配当利回りから10年国債利回りを差し引いたものと、TOPIXの推移を示したもので、株式と債券の相対的な魅力度をみることができる。青のラインが上昇するほど株式が有利、低下するほど株式が不利と判断する。
利回り差は2/9時点で2.20%まで拡大した。2007年以降、リーマンショック(世界的な金融危機)直後にも両者の差が広がる場面があったが、その当時のピークは1.94%(2009/3/6)。TOPIXの安値(721.39P)も同じ週だった。
アベノミクス相場が始まる前にも両者の差が広がる場面があったが、その時はリーマンショック時の水準がバロメータとなった。2012年10月に1.88%(2012/10/12)まで拡大し、株価もそのタイミングで当時の安値を付けた。約3年続いたアベノミクス相場が始まる起点になった。アベノミクス相場はかなり壮大な上昇相場であったが、それ以前に上昇しやすい下地(環境)ができていたということだ。
現在はその水準を超えるほど株式の相対的な魅力度が理論的に高まっているということで、きっかけ次第では株価の急反発が見込める環境にある。
銀行の預金金利が日銀による「マイナス金利」導入の影響から引き下げられている。MMF(マネー・マネージメント・ファンド)なども運用難から資金を投資家に返還する動きが出ている。
国債利回りの急低下で大手銀行や地方銀行などは益々運用難に陥る可能性が高い。そんな状況下、中長期的には銀行のリスク資産に対する考え方に変化が生じる可能性が高い。リスク資産ではJ-REIT(不動産投資信託)に加え、一部ではETF(上場投資信託)を購入する動きも出始めているが、持ち合い株式の放出後の運用先とあわせリスク資産の運用の範囲を現物株へ広げる可能性が高まることも考えられる。生保も国内債券の運用難で外債投資を増やしている。まずは高配当利回り、低PBR(株価純資産倍率)、高ROE(自己資本利益率)や、ガバナンス意識の強い企業の株式へ資金シフトが起きうるだろう。
図表2:株式配当利回り(TOPIXベース)−10年国債利回り(2007/1/12-2016/2/12)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表3)は1/21安値(16,017円)を明確に下回った。昨年のチャイナショックで急落したときと今回の下げを比べると、当時は25日移動平均線(17,095円、2/10)が下げ止まるまで、最初の8/26安値からの小さなリバウンドから2度ダメ押しを入れる日柄が必要だったが、今回は直近高値からの下落期間、下落幅が相対的に大きいことに加え、1月安値からのリバウンド幅が大きかった分、25日移動平均線が下げ止まるまでには、ここからさほど時間を要することはないだろう。25日移動平均線が下げ止まれば、反発基調に入ることができるとみられる。
一方、注意が必要な点は、今回の下げで昨年9/29の安値(16,901円)と同時に昨年来安値(16,592円)を下回ったことである。それによって、昨年6月高値(20,952円)からの長い調整が続いていることになるため、底固めとみせかけても2/1高値(17,905円)を上回れないでいると、再び底割れするリスクは依然として残っている状況が続こう。
下値メドは、1/21安値から2/1高値までの上昇幅の倍返しの下げとみた14,129円処、昨年9月安値から12月高値までの上昇幅の倍返しの下げとみた13,790円処などが考えられる。
短期的な上値メドは2/1高値(17,905円)〜心理的節目となる18,000円処、75日移動平均線(18,533円、1/21)、200日移動平均線(19,201円、1/21)〜19,500円処となる。
月足の一目均衡表上では、2月相場で基準線(17,418円)を下回っている状況にあり、最後のとりでといえる遅行スパンが1月相場と同じように、当時の株価水準をサポートに月末(2/29)終値で基準線上まで回復できるかどうかが注目される。2カ月続けてローソク足に長い下ヒゲが続けば当面は緩やかな戻りに移行する公算が大きい。その際の戻りのメドで重要なのは2004年10月安値と昨年9月安値をつないだ上値抵抗線上となり、概ね18,500円前後とみられる。
一方、2月相場で遅行スパンが位置する当時の株価は陰線ローソク足であった。その陰線の終値が14,914円処であるため、今月の下値メドとして考えられる重要な水準となる。上述した日足ベースの13,790円〜14,129円処の下値メドも視野に入れる必要はあるが、今週は15,000円を割り込んだことで来週は反発に期待したいところだ。
図表3:日経平均株価の短期チャート(日足、2015/6/1-2016/2/10)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表は、10-12月期実質GDP(国内総生産)、12月第三次産業活動指数(2/15)、1月首都圏新規マンション発売、20年国債入札(2/16)、12月機械受注、1月訪日外客数(2/17)、1月貿易統計、5年国債入札(2/18)、12月全産業活動指数、1月日本製半導体製造装置BBレシオ(2/19)などがある。
企業決算では、MS&AD、電通、キリンHD、ポーラオルHD、洋ゴム、フロンティアRE、MidCity、ロイヤルHD、インフォマート、ツバキナカシマ、藤田観、プレス工、大豊建、岡部、シノケンG、SBSHD、フリュー、UBIC、アルプス技、ダイドリミ、ジーエヌアイ、建設技研、アドベンチャ、ソリトン、白洋舎、カヤック、京都ホテル、フュージョン、クロスマーケG、アエリア(2/15)、クボタ、菱鉛筆、木徳神糧、産業ファ、ニチリン、セルシード、フィスコ、エイシアンスター(2/16)、ブリヂストン、ニッパンR、清和中央、JHD(2/17)、トレンド、不二精機、ピーエイ、Jエクセレント、アマナ、フォーサイド、日本リート(2/18)、アップル、日研紙、ハマイ、佐渡汽(2/19)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、中国1月貿易収支、米ASEAN首脳会議(〜2/16)(2/15)、独2月ZEW景況感指数、米2月NY連銀製造業景気指数、米2月NAHB住宅市場指数(2/16)、米1月住宅着工・許可件数、米1月生産者物価、米1月鉱工業生産・設備稼働率、1/26-27開催のFOMC議事録(2/17)、中国1月消費者物価・生産者物価指数、EU首脳会議(〜2/19)、米2月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、米1月CB景気先行総合指数(2/18)、米1月消費者物価指数(2/19)などが注目される。
米国企業の決算発表は、プライスライン・グループ、エヌビディア、マリオット、ニューモント・マイニング(2/17)、ウォルマート・ストアーズ、ノードストロム、アプライド・マテリアルズ(2/18)が予定している。
なお、2/15の米国市場はプレジデンツデーの祝日のため休場となる。
来週の注目銘柄(2016/2/15〜2/19)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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1827 | 710円 | 525円 | 中堅ゼネコン。民間建築が主体。医療や工場物流、学校などに強みがある。東南アジアでは高層住宅など実績豊富で、コンドミニアム、物流、プラント工事など多種多用。ロシアや中東での技術協力も。400円水準からの株価上昇は、2003年高値当時の買い方のシコリ玉をこなす勢いとなった。三角もち合いから急落も52週移動平均線を意識してもみ合い基調を維持する公算が大きい。信用買い残も商い増加でこなせるレベルであり、相場全体が反発に転じる際の上値は意外と軽快だろう。PERやPBRの割安感も下支え要因となる。ターゲットは710円、ロスカットは525円 | |
2175 | 2,100円 | 1,470円 | 医療、介護を中心とした求人・人材紹介サイトの運営。既存事業の順調な進ちょくに加え、アジア展開を加速。MIMSグループ買収に伴う一時費用はかさむが、高齢化社会のなかで中期的な高成長株としての期待値高い。株価は上ヒゲに続く週足の大陰線は大口投資家による利益確定売りが要因。商い増加で押し目買い意欲も旺盛だ。週足の一目均衡表では抵抗帯(雲)上限まで調整し、いったんリバウンド狙いでも好タイミングだろう。上昇基調が続く52週移動平均線割れも買いサインとなる。ターゲットは2,100円、ロスカットは1,470円 | |
4540 | 3,200円 | 2,480円 | 漢方製剤メーカーでシェアは断トツである。育薬5処方を中心に漢方薬需要が堅調に推移。薬価改定は懸念だが、普及率拡大でカバー。中国での原料生薬の高低は業績に与える影響が大きい。JPX日経400銘柄で、外国人保有比率が高い。株価は2006年以降の長期ボックス相場からの離脱が焦点。52週移動平均線割れで目先は足踏みの可能性はあるが、信用の売り方の買い戻しでじり安は回避できそう。むしろ昨年後半に形成したもみ合い水準まで下げたことによるリバウンド余地の方が大きい。成長性を加味すればPERに割高感は乏しい。2,800円以下までの調整は突っ込み買いで対処したい。ターゲットは3,200円、ロスカットは2,480円 | |
4543 | 4,500円 | 3,400円 | カテーテルを中心に医療機器を手掛ける。収益性の高い製品の売上構成が高い。自社開発の薬剤溶出型冠動脈ステントが売上伸長。主力のカテーテルも北米中心に想定超。海外売上高比率が高い。自社株買いに積極的。株価は長期N字波動で右肩上がり。4,000円超えでは利益確定で上ヒゲ目立つが、下値も浅く26週移動平均線上ではしっかり。信用買い残・売り残とも低位で安定し、需給面に不安はなし。トレンドへの投資参入は上昇加速まで順張りスタンス継続か。相場全体が下落するなか、あえて強い銘柄を選好するなら注視しておきたい。ターゲットは4,500円、ロスカットは3,400円 | |
5481 | 620円 | 440円 | 特殊鋼専業メーカー。新日鉄住金系。軸受鋼、ニッケル基合金などを製造している。新興国経済の減速で在庫調整の長期化が痛手。自動車や建設機械向け伸び悩むが、鋼材事業で原燃料価格の軽減が利幅拡大の追い風となっている。株価は2009年以降では緩やかに下値切り上げる展開。エネルギー蓄積で800円台まで上値余地も。高値覚えは2006年の1,400円超にある。PERやPBRに割安感があることや、信用売り残と買い残の取組妙味が下支え。26週移動平均線の上昇も時間の問題か。ターゲットは620円、ロスカットは440円 | |
6272 | 750円 | 477円 | 食品製造機械を世界展開している。世界ではじめてまんじゅうやクロワッサンの自動成形機を開発したメーカーとして有名。北米・欧州を中心に生産ラインでの受注は想定超。配当性向は30%方針。内需ディフェンシブ関連である。株価は週足のマド空け陰線の形成がややネガティブだが、500円水準はサポートされる可能性が高く下値で指値買いのチャンス到来とみられる。相対的に地味な存在ではあるが、PER、PBRに割安感ある点が魅力。長期狙いで倍化狙いがこの株の真の醍醐味となろう。ターゲットは750円、ロスカットは477円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証1部銘柄で2/10現在、時価総額が100億円以上、配当利回りが0.5%以上、PERが33.0倍以下、PBRが9.0倍以下、株価が13週移動平均線からマイナスかい離にある銘柄の中から、信用倍率やテクニカル面、成長性や話題性などを考慮しピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。