来週の株式見通し(2015/5/18〜5/22)
来週(2015/5/18〜5/22)の日経平均株価の予想レンジは18,750円-20,150円。国内企業の決算発表は今週で大部分が一巡した。「決算プレイ」によって動きが荒くなった個別株は少なくないが、現状では企業側の発表数値と市場の期待との間にギャップがあり、ギリシャ問題や金利動向などを睨みながら大型株には調整期間が必要だろう。
一方、長期資金による好業績銘柄への買いが予想されるほか、東証2部、ジャスダック、マザーズなど新興市場を中心に中小型株シフトが鮮明になる可能性が高い。大型株に比べ業績への期待値がもともと小さいことや、為替や上昇基調を強める石油などの商品市況の影響を受けにくく、下値を買いやすいからだ。
国内の経済指標では、5/20に2015年1-3月期の国内実質GDP速報値(図表1)が発表される。前期比年率で+1.6%(前期比+0.4%)と2 四半期連続でプラス成長が予想されている。個人消費は前期比+0.2%、設備投資は前期比+0.6%と4 四半期ぶりのプラスを見込む。消費税率引き上げ後に景気が足踏みしたことや、先行きへの警戒から設備投資は手控えられたが、上振れればサプライズの要因となる。設備投資に先行する機械受注(図表2)の3月の結果も週初に発表されるだけに、機械セクターなどの動向が注目される。
一方、米国の経済指標では、4月の住宅関連指標に加え、景気先行指数など多数控えている。景気減速懸念を払拭できるかに注目が集まる反面、米長期金利の動向には注意が必要である。
米10年債利回りは、1/30に付けた安値(1.63%)を起点にチャート上の二番底を形成しており、2014年から続いた下落トレンドが上昇に転換した可能性が高い。世界的な債券市場の不安定な動きに加え、景気指標の好転が金利押し上げ要因として働く可能性が高いためだ。金利の急速な上昇は株価にとってネガティブである。
図表1:実質GDP(国内総生産)の推移(2000/1-2014/12)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
図表2:機械受注統計(前月比、2010.1-2015.2)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
株式市場に今後影響を与えうる注目材料は、不安定な金利動向やあまり動きがない「ドル円相場」である。図表3はドル円相場の月足である。1ドル=120円前後で止まっている理由は、過去に生じた習性値幅分の円安が進んだためである。習性値幅とは、1998年8月高値からの最初の大きな下落幅45.92円分、1995年4月安値から1997年4月高値までの上昇幅46.38円分のこと。2011年10月安値から、その習性値幅分を上げると121.47〜121.93円となるように、概ね現在の高値と一致する。さらには、1995年4月安値と2005年1月安値を通る上値抵抗ラインに頭を抑えられているのがわかる。円安が一服すべき当然の水準であり、1997年4月高値から急速に円高が進んだ局面と同じく、足元も転換線(113.01)に向けて円高が進むリスクは高い。それとも、ここまで粘っても下げないから、逆に強いとみて先高(円安)期待なのか。
いずれにしても、月足の一目均衡表では雲のネジレが6月に生じるため、「変化月」として基調が変わる可能性が高い。転換線はすでに上昇に転じており、8月に向けてさらに上昇の勢いが増すタイミングに差し掛かる。円安が一段と進行するとすれば、さらに大きな習性値幅分(66.48円分)でみた142円前後まで中長期的に視野が広がる公算が大きい。円高ならば短期的には主要なフシがある110円台前半まで余地が広がる。
ただ、かつてのように円安→日本株高になるかどうかは不透明だ。国内企業の収益改善期待よりも、ドル高による米企業業績の悪化が米株の下落要因となれば、日本株の下押し要因となる。日本株への海外資金の流入が一巡する可能性もあることや、売り越しに転じるリスクもある。
図表3:ドル円、一目均衡表(月足、1994.6-2015.5.13)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表4)は25日移動平均線(19,759円、5/13現在)の目先の傾きによっては、下方リスクを高めることになる。25日移動平均線を計算する上で最も古い25日前の株価水準が現在値よりも高い局面に移行していくため、同線の下落リスクが高まるからだ。それを回避するためには、早急に25日移動平均線を強く上回るような上昇が必要となる。上方のマドを埋め戻す(20,031円)かが、強気の見方を継続できるポイントだ。
反面、直近安値(19,257円、5/7)を下回ると、4月高値を起点に二段下げ目に突入する。短期的な下値メドは、75日移動平均線(18,944円)付近や4/1安値18,927円処。そこを下回ると、2007年高値18,300円前後まで調整色を強めるだろう。75日移動平均線付近で踏みとどまれば、昨年のサプライズ緩和で急騰した後に辿った株価パターンと同じような動きがイメージできる。値幅調整というよりも、日柄調整で6月までもみ合いが続く展開が想定される。
上値メドは、4/23高値20,252円、3/23高値から4/1安値までの下げ幅の倍返し(V計算値)で20,629円処。昨年10/17安値から12/8高値までの上げ幅に対するE計算値21,531円処などが考えられる。過去の大きなフシである1996年高値(22,750円)と2000年高値(20,833円)の中間をとった、21,790円処も重要な上値のフシとなる。
図表4:日経平均株価と移動平均線(日足、2014.8.1-2015.5.14)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要なイベントや国内経済指標の発表は、3月機械受注、3月第3次産業活動指数(5/18)、5年利付国債入札(5/19)、国内1-3月期GDP(5/20)、全産業活動指数、日銀金融政策決定会合(〜5/22)(5/21)、日銀会合結果発表、黒田総裁が会見(5/22)などがある。決算発表は、光通信、東京海上、大同信、損保JPNK、MS&AD(5/20)などが予定している。
一方、海外のイベントや経済指標では、中国4月70都市新築住宅価格、米5月NAHB住宅市場指数(5/18)、ユーロ圏3月貿易収支・4月消費者物価、独5月ZEW景況感指数、米4月住宅着工・許可件数(5/19)、豪5月消費者信頼感指数(5/20)、中国5月HSBC製造業PMI、仏・独・ユーロ圏5月PMI速報値、米4月シカゴ連銀全米活動指数、米5月マークイット製造業PMI速報値、米4月中古住宅販売件数、米5月フィラデルフィア連銀景気指数、米4月景気先行指数、ユーロ圏5月消費者信頼感(5/21)、独1-3月期GDP確報値、独5月ifo景況感指数、米4月消費者物価(5/22)などが注目材料となる。
来週の注目銘柄(2015/5/18〜5/22)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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3105 |
1,600円 |
1,230円 |
5/12に発表した2015年3月期は4.3%営業増益となり、2016年3月期は45.5%の大幅増益を見込む。インパクトが大きかったのが株主還元政策だ。今期の配当は前期比倍増の30円とする予定。今後は連結配当性向30%程度を目安にすることや、自社株買いを含めた積極的な株主還元を行うことを表明した。株価は2007年高値1,805円に向けて上昇基調が続く公算が大きい。決算発表を通じて高値圏のもみ合いから一歩上抜けた状況にある。目先的に過熱感があるようにみえるが、日足では中長期の移動平均線が収れんしたあとの上放れでもあり、新たなトレンドは比較的大きそうだ。ターゲットは1,600円、ロスカットは1230円 |
|
4662 |
1,740円 |
1,010円 |
通信分野のソフト開発・保守・運用が得意。NTTデータなどが主要取引先。5/8に発表した2016年3月期の計画が1.0%営業増益、配当予想が前期と同額とされ、一部では失望売りもあったもよう。マイナンバー関連システム開発の需要は10月の施行前にピークを迎える見通しであるが、施行後もメンテナンスなどを請け負える見通しであり、マイナンバー関連の業務は業績通期寄与の公算も大きい。株価は4/23に1,247円まで急騰。現在も調整が続いているが、一目均衡表では基準線が再び上昇に転じる強気局面入りか。IT相場の2000年に8,800円の天井を付け低迷が続いたが、月足でも「三役好転」が続き強気継続のパターンだ。ターゲットは1,740円、ロスカットは1,010円 |
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5332 |
2,460円 |
1,810円 |
4/30に発表した2016年3月期は14.4%の営業増益見通し。国内事業は低迷が続いているが、米国やアジアなど海外事業の好調が補う。住宅設備関連は苦戦が予想されていただけに、2桁増益見通しはポジティブだ。中国でのウォシュレット普及拡大にともなう長期的な利益成長に期待できそう。株価はマドを開けてボックス上放れ。5日移動平均線をサポートに順調に下値を切り上げる。2014年1月高値1,758円をクリアし青天井となり、同年10月安値1,050円までの下げの倍返しは見込めそうだ。ターゲットは2,460円、ロスカットは1,810円 |
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6113 |
1,410円 |
1,180円 |
板金加工機械の販売などを手がける。昨年、2016年3月期まで株主還元100%の方針を掲げ株式市場の注目を集めたが、5/14付けの日本経済新聞では、2017年3月期以降も連結配当性向50%以上を維持するとの内容が報じられた。発表された2015年3月期の連結営業利益は前期比70.7%営業増益、今期も2桁増益を見込む。同時に900万株、100億円を上限とした自己株取得も発表。株価は右肩上がりの推移が続いており、売りサインが出るまではトレンドフォローが鉄則だ。少し長めの期間でみれば、2007年高値1,622円まで上値余地があるだろう。ターゲットは1,410円、ロスカットは1,180円 |
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6460 |
2,030円 |
1,620円 |
ゲームソフトとパチンコ・パチスロに強みのある総合娯楽メーカー。同社は5/11、2016年3月期の連結営業利益が250億円(前期比42.0%増)になりそうだと発表。市場予想(231億円)を上振れるアナウンスとなった。前期はパチスロ新規制による業界全体のマイナス影響を大きく受けたが、悪材料出尽くしの反応で株価は大幅に上昇。足元はその反応で下押す展開となっているが、短期底打ち後のゆり戻しに過ぎないとみている。週足では26週移動平均線をサポートに推移してきたが、同線は上昇基調を強めていくタイミングに入るため、強気スタンスで臨みたい。ターゲットは2,030円、ロスカットは1,620円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証上場銘柄で5/13現在、時価総額が80億円以上、今期増収・営業増益予想(日経予想)、PERが22倍以下、PBRが3.0倍以下、配当利回りが1.4%以上をベースに、テクニカル面や話題性などを考慮しピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。