来週の株式見通し(2015/1/26〜1/30)
来週(2015/1/26〜1/30)の東京市場は続伸が予想される。日経平均株価の予想レンジは17,000円-17,800円。週前半はFOMC(〜1/28)を前に全般的に盛り上がりに欠ける一方、ECB理事会やギリシャの総選挙が通過したあとの欧米株式が堅調であれば、日本株は先物中心に海外投資家の買いが期待できそうだ。
国内企業の決算発表が本格化し、業績内容を吟味しながら短期売買が目立つ時期でもある。米国ではマイクロソフトやアップルなどのハイテク株の一角や、キャタピラーなどの景気敏感株の決算が多く、日米株価に影響を及ぼす公算が大きい。国内の経済指標では、1/30に12月失業率・有効求人倍率、消費者物価指数、鉱工業生産などの統計発表が集中する。
2015年3月期本決算の「下期の想定為替レート(ドル円)」は電気機器、自動車関連、機械メーカー中心におおむね1ドル=105円程度に設定しており、実勢レートからは円高方向に保守的に見ている企業が多い。本決算がみえてきた時期でもあり、業績の上方修正アナウンスへの期待は根強い。ただ、円安を要因とする上振れ部分は織り込んでおり、株価上昇を後押しするためには海外の好調持続がポイントとなる。
テロへの警戒、原油安、世界景気の減速、欧州の政情リスク、金利低下の反動など、世界を取り巻く懸念材料は挙げればきりがない。追い討ちをかけるようにスイス中央銀行の対ユーロ上限撤廃に絡むスイスショックなどもあり、市場センチメントは悪化している。
一方、1/20の東京市場は大幅高となり、日経平均は大発会の寄り付きを上回った。追加金融緩和期待から欧州株が軒並み上昇したことや、中国の10−12月期のGDPや12月小売売上高などが予想を上回る着地となった。売り方の買い戻しに過ぎないという冷めた見方もあるが、相場の転換点ではいつもそうである。実需買いだけで「天底」を形成することなどは稀だからだ。そもそも、ドイツのDAX指数の連日の史上来高値更新は、欧州リスクが短期的に落ち着くサインになるだろう。ダウ平均は史上最高値からたった3.0%程度下落した水準に過ぎない。
東京市場では依然として空売り比率が高水準にあることや、裁定取引に伴う現物株の買い残(図表1)は2年ぶりの低水準で売り圧力が和らいだ状況にある。つまり、外部環境が落ち着けば、いつ上昇基調を強めても不思議ではないのである。
12月からの波乱相場の中では、トヨタ自動車(7203)の株価の動きに勇気付けられる。前回少し触れたが、12/8に付けた高値(7,873円)から調整は続いており、チャート用語で有名な「三角もち合い」を描いている。「三角もち合い」はどちらかといえば、それまでのトレンドがその後も続く可能性が高いことを示唆する強気パターンだ。時価総額で断トツ首位の株価がそんな状況にあるため、日本株への期待値を低下させる必要はない。
図表1:日経平均株価と裁定買い残の推移(2010.1-2015.1.16)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表2)は75日移動平均線(16,717円、1/21)をサポートに反発に転じ、昨年11月以降で形成されるもみ合い中値付近まで上昇。目先的には正念場の水準である。25日移動平均線(17,259円、1/21)が上値抵抗になれば、17,000円割れまで押し戻される可能性がある。ただ、25日移動平均線は下げ止まる公算が大きく、同線を明確に超えるのは時間の問題だろう。25日移動平均線上を保ちながら、もみ合い基調を維持できるかが、2月、3月の上値追いに重要なポイントとなる。2013年5月高値を起点に同年12月高値を通る上値抵抗線上にいることも、強気継続を示唆する動きである。
注意が必要なのは、バブル崩壊後の均衡水準となる2007年高値(18,300円)を前に押し戻される動きがありえることや、高値更新直後に上昇一服となるケースもある。高値更新後は、昨年4月安値(13,885円)を起点としたE計算値(18,863円)が最初の重要なフシとなる。一方、25日移動平均線上を保てずすぐ下がるようだと、底割れリスクに続き、200日移動平均線(15,696円、1/21)に向け一段安のムードに変わる公算が大きい。
注目の変化日は、昨年10/17安値〜12/8高値までの日柄「35日」を、先に当てはめた1/30〜2/4、10、20前後など。上値メドは、18,219円処、18,700円〜18,863円、19,388円〜19,500円処。下値メドは、2013年12月高値16,320円〜2014年9月高値16,374円処、16,000円処、15,314円処などが考えられる。
図表2:日経平均株価 (日足、2014.3.4-2015.1.21)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表やイベントは、12月貿易収支、12月18・19日開催の日銀金融政策決定会合議事要旨(1/26)、12月商業販売統計(1/29)、12月失業率・有効求人倍率、家計調査、12月消費者物価指数、12月鉱工業生産(1/30)などに注目。
企業決算では、JSR、住友理工(旧東海ゴム工業)、マクニカ、東陽テク、フリークアウト、ADワークス、タカラレーベン、トランコム、モーニングスタ、KOA、岩井コスモ(1/26)、エムスリー、三井住友、日立キャピ、OBC、九電工、カワチ薬品、栄研化、オービック、SMK、日立ハイテク、ニフティ、日立工、富通ゼネ、コメリ、日立国際、キヤノン電、蝶理、関西ア銀など(1/27)、中外薬、富士フイルム、コマツ、日立建機、ファナック、キヤノン、任天堂、メタウォーター、ダイビル、きんでん、コロプラ、日バルカー、スタンレ電、東芝テック、航空電、横河ブHD、青山商など(1/28)、信越化、積水化、NRI、OLC、新日鉄住金、東芝、オムロン、NEC、京セラ、川重、日野自、ダイハツ、小糸製、新生銀、静岡銀、オリックス、野村HD、ヤマトHD、NTTドコモ、大阪ガス、サイバエージ、アドバンテ、日立マクセル、ミスミG、日立化成、カシオ、スカイマーク、日本通信など(1/29)、大東建託、ヤクルト、日ハム、日清食HD、ヒューリック、三越伊勢丹、協和キリン、エーザイ、第一三共、コニカミノルタ、資生堂、ガイシ、特殊陶、JFE、マキタ、富士通、エプソン、TDK、村田製、日東電工、HOYA、リコー、東エレク、りそな、みずほ、アコム、大和証G、JPX、京成、JR各社、日通、郵船、JAL、ANA、KDDI、関西電、東京ガスなど(1/30)などが発表を予定している。
一方、海外では、ギリシャ総選挙(1/25)、独1月Ifo景況感指数(1/26)、英10-12期GDP速報値、FOMC(〜28日)、米12月耐久財受注、米11月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米12月新築住宅販売件数、米1月消費者信頼感指数(1/27)、米12月中古住宅販売仮契約(1/29)、米10-12月期GDP速報値、米1月シカゴ購買部協会景気指数(1/30)が発表される。
米企業決算の発表では、シーゲイト・テクノロジー、D.R.ホートン、テキサス・インスツルメンツ、マイクロソフト(1/26)、ユナイテッド・テクノロジーズ、P&G、コーニング、ファイザー、フリーポート・マクモラン、キャタピラー、アップル、ヤフーインク、AT&T、3M、ニューコア(1/27)、ボーイング、クアルコム、フェイスブック(1/28)、フォード、ダウ・ケミカル、パルト・グループ、ビザ(1/29)、シェブロン、マスターカード(1/30)などが予定している。
来週の注目銘柄(2015/1/26〜1/30)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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4508 |
2,220円 |
1,700円 |
三菱ケミカルHD傘下。主力の関節リウマチ治療剤は薬価改定の影響で厳しい。ジェネリック医薬品の市場拡大も減収要因。だが、ノバルティス社へ導入した多発性硬化症治療剤に加え、糖尿病薬のロイヤリティ収入などの増加でカバー。事業・構造改革の加速化に積極的に取り組んでいる。株価は2001年高値1,779円を上回ったことで、長期上昇トレンドを再確認。直近ベースでも昨年11月高値1,872円を上回り、先高期待高まった局面だ。目先は1800円処まで下押す場面があるかもしれないが、信用買い残の積み上がりはなく、押し目買いで対応したい。ターゲットは2,220円、ロスカットは1,700円 |
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6028 |
2,730円 |
2,020円 |
技術者派遣・請負の大手。機械、電気・電子、組み込み制御、ソフト開発・保守、施工管理領域の派遣・請負事業を展開している。2014年9月末現在、グループ全体で1万1163名の技術者を国内に擁し、全国121の営業・受託拠点を設置。1793社の顧客にサービスを提供している。建築・土木領域にも展開しており、建設相場に相乗りする場面も多々あるだろう。昨年12月に東証一部に上場した。初値は公開価格を下回ったが急速に持ち直し、公募組の売りをこなした後は一段高となっている。ターゲットは2,730円、ロスカットは2,020円 |
|
6474 |
750円 |
578円 |
ベアリング、工具、産業用ロボット大手。工作機械用の油圧機器なども製造している。1/15、2015年11月期の通期連結営業利益が205億円(前年同期比10.4%増)になりそうだと発表したが、市場予想(230億円)に届かなかったことが失望売りを誘った。ただ、北米や新興国市場で自動車や産業機械、建設機械、航空機分野の需要拡大は続く公算が大きい。操業度の改善やコストダウンの成果も増益に寄与する見込み。株価は12カ月移動平均線を下回り、月足は大陰線となる可能性もある。だが、月足の一目均衡表では2月は転換線が上昇に転じる可能性がありポジティブな見方ができる。足元の突っ込んだ局面では、値ごろ感を買い材料にしてもよさそうだ。ターゲットは750円、ロスカットは578円 |
|
9433 |
9,600円 |
7,700円 |
auスマートフォン浸透率が着実に上昇し、モバイル通信料収入の増収が業績を牽引。通期営業利益は2期連続2ケタ成長に向け、順調に進捗している模様。株価は25日移動平均線をサポートに上昇が続く。信用売り残が買い残を上回り、需給面に不安乏しい。昨年12月には上場来高値を更新。好需給が株価加速の要因にもなりえる。昨年秋口からの動意で過熱感はあるが、2002年安値からのE計算値は狙えそうだ。第3四半期の決算発表は1/30を予定している。ターゲットは9,600円、ロスカットは7,700円 |
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9551 |
2,710円 |
2,280円 |
総合水道事業大手。2008年4月に日本ガイシと富士電機の両水環境子会社が合併する形で発足した合弁企業。浄水場・下水処理場、ごみ処理施設・リサイクル施設などの機械・電気設備の設計・建設、補修工事・維持管理、運転管理など水環境分野の総合エンジニアリングを展開している。昨年12月に東証一部に上場した。初値は公開価格を下回ったが、上場時の商いをこなし、年初には公開価格(2,400円)を上回る場面があった。ただ、割安感があるため下値買いが支えとなり、足元はジリ高。短期的にはもみ合い相場が続く展開が予想されるが、上場来高値更新後の動きに期待したい。ターゲットは2,710円、ロスカットは2,280円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証一部上場銘柄で1/21現在、時価総額が500億円以上、PER27倍以下、配当利回りは1.5%以上、今期営業増益予想(日経予想)の中から、テクニカル面、JPX日経400採用銘柄、出来高面の変化、話題性などを考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
お知らせ
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