来週の株式見通し(2014/6/2〜6/6)
来週(2014/6/2〜6/6)の日経平均株価の予想レンジは14,500円-15,300円。売り方の買い戻しが先行するパターンからの立ち上がりとなったが、来週あたりからは実需買いなどが増えてくる公算が大きい。
米5月雇用統計やECB理事会などを控え、商いの増加は見込みづらいものの先物主導で海外株の堅調な流れに追随する展開が予想される。また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成割合を、国内株で現在の12%→20%に引き上げる見方が市場では有力視されている。GPIFの運用改革は海外投資家の動向に直結する可能性が高く、株価形成に影響を与えうる期待感は続くだろう。
業種間では騰落格差が一時的に見直される局面でもあり、先行した証券セクターに対して出遅れ感のある業種への注目度が高まる可能性がある。
図表1は、業種(東証33区分)の期間別騰落率である。TOPIXが戻り高値をつけた3/7〜直近安値5/21までの下落率が大きい業種のうち、直近安値5/21から上昇率がTOPIXに比べ鈍い海運、繊維、銀行セクターなどが注目されそうだ。
図表1:業種の期間別騰落率(2014/3/7〜2014/5/28)
出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
新興市場の商いが回復してきた。5/28のジャスダック市場の売買代金は2,033億円と約3カ月ぶりの水準に回復。マザーズ市場の売買代金は8日ぶりに1,000億円を割り込んだものの、両市場合わせた売買代金は連日で3,000億円を超えた。足元で物色の柱となっているミクシィ(2121)、日本マイクロニクス(6871)、日本通信(9424)などへの短期の集中物色などが要因であるが、それぞれ増担保などの規制がかかり始めており、来週はその物色資金が周辺に散らばる展開が予想される。
日経ジャスダック平均の月足チャートは、12カ月移動平均線が4月に上昇一服したあと、5月は横ばいで推移している。株価は5月の下落で12カ月移動平均線を一時下回ったが、月末に向けて持ち直しの動きをみせている。月足のローソク足が下ひげで底打ち感が強まれば、6月は上昇に転じる12カ月移動平均線に準じ、反発基調を強める展開が予想される。そういったテクニカル面での好転が予想されるなか、今週の注目銘柄に挙げたアドウェイズ(2489)やデジタルガレージ(4819)など、時価総額が比較的大きく、売られ過ぎた銘柄へのリバウンド狙いのスタンスが有効となろう。
来週の国内の経済指標やイベントでは、1-3月期の法人企業統計、5月新車販売台数(6/2)、4月景気動向指数(6/6)などが重要。
一方、海外の経済指標やイベントでは、中国5月製造業PMI(6/1)、米5月ISM製造業景況指数、米4月建設支出(6/2)、豪州準備銀行理事会、米4月製造業受注指数、米5月国内自動車販売、中国5月非製造業PMI、HSBC中国5月製造業PMI確報値、ユーロ圏4月失業率(6/3)、G7首脳会議(〜5日ブリュッセル)、ユーロ圏1-3月期GDP改定値、米5月ADP雇用統計、米4月貿易収支、米5月ISM非製造業景況指数、米ベージュブック(6/4)、ECB定例理事会(ドラギ総裁会見)(6/5)、米5月雇用統計(6/6)、米4月消費者信用残高(6/7)などが材料視されやすい。
ECB理事会では利下げに加え、流動性供給策が発表される可能性が高いことが予想されている。利下げに打ち止め感が強まりユーロ高・円安に進めば、シマノ(7309)、ニコン(7731)、アシックス(7936)など、欧州比率の高い企業の株価が動意付く可能性がある。
図表2は、日経平均株価の一目均衡表チャートである。5/21安値(13,964円)を起点に六陽連を示現し、一目均衡表上では遅行線が当時の株価を上回り、足元の株価が抵抗帯(雲)を上回った。転換線が基準線を明確に上回れば、三役好転の強気サインが示現する。また、足元の急反発は年初から何度かあった反発局面の中でも、特に評価できる動きである。昨年5月高値からの急落後にもみ合い相場が続いたが、11/8安値(14,026円)を起点とした急反発により、もみ合い上放れにつながった経緯がある。
5/21安値からの反転動意が重要な点は、11/8安値とほぼ同水準からの動きであること。また、当時から一目均衡表では基本数値の「129」に近い日柄から変化したことである。水準面や日柄面から優位な反発であるといえる。
6月相場も足元の勢いが続く展開が予想される。3/7高値(15,312円)や4/3高値(15,164円)を前にいったん下押す可能性はあるが、上方のマド埋め(15,690円)〜昨年12月高値(15,794円)までの上値余地はみておきたい。
図表2:日経平均株価の一目均衡表 (日足、2013.9.30〜2014.5.28)
出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
図表3は、日経平均株価の月足チャートである。 5月相場は上昇基調を保っている12カ月移動平均線(以下、12カ月線)を維持する公算が大きい。2006年に高値を付けたあとも12カ月線がサポートになる局面があった。当時は12カ月線にそって2007年高値につながった。当時と同じように、12カ月線にそって上昇が続くためには、そろそろ一歩上に抜け出す長い陽線などが必要になるタイミングである。日銀による異次元緩和があった昨年4月の月足陽線の値幅は2,170円まで広がった。その7カ月後の11月には1,700円幅の長い陽線。次の7カ月後となるのが6月である。仮に長い陽線が示現し、近い将来に高値更新につながれば、上値メドは上値抵抗線上となる。もみ合いのフォーメーションを形成しながら2007年高値に一歩近づくことになるが、そこからの動きの方が今以上にもっと重要になるだろう。
足元の反発が買い戻しだけで立ち上がったイメージだけを持つと、「疑心暗鬼」から抜け出せない。2012年後半から続く長い上昇トレンドの中の短期的な押し目、つまり景気の持ち直し、米国景気の堅調が維持されていく、といったシナリオを想定しながら相場をみていく必要がある。前回の日銀の政策決定会合を通じ追加金融緩和はなくなったとの見方も浮上したが、株価は底割れを回避し、むしろ翌日は大幅反発となった。株式市場は追加金融緩和期待で上昇する局面から、追加金融緩和の必要がない国内の景気回復を好感する局面に移った可能性が高いとみられる。つまり、ここからの株高の条件として円安を必要以上に考えなくてもよいのではないだろうか。
図表3:日経平均株価 (月足、2006.1〜2014.5.28)
出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の注目銘柄(2014/6/2〜6/6)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット株価(円) |
注目ポイント |
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1801 |
665円 |
446円 |
ゼネコン最大手の一角。優良道路子会社を持つ。不採算工事が一巡し、採算重視へ受注選別。東京外かく環状道路や豊洲新市場など大型工事受注。リニア中央新幹線、オリンピック関連としても材料豊富。株価は13週移動平均線を意識し、押し目買い意欲旺盛。新規の買い方と戻り待ち売りが交代する踊り場を形成中。信用買い残も出来高増加で吸収できるレベルか。出来高増は海外投資家の出動サイン。昨年来高値更新後は、2006年高値(632円)を上回ることができるかが焦点となる。ターゲット665円、ロスカット446円 |
|
2489 |
2,100円 |
1,150円 |
PC・スマホ向けアフィリエイト(成果報酬型)広告大手。スマホアプリ関連が想定超。アジア中心に海外ネット提携加速。LINE上場観測で物色意欲高まる公算。個別材料より新興市場の回復が株価浮上のカギ。株価は三段上げ一巡し調整色深まるが、高値から2/3押し達成で今度はリバウンド狙い。高PERで業績面からの買い意欲は減退だが、あくまでも材料人気の買い物続くかがポイント。買い残多く戻り売りもあるが、目先狙いなら値幅も十分か。ターゲット2,100円、ロスカット1,150円 |
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4819 |
1,900円 |
1,240円 |
主力の広告関連は好調。成果実現型広告が金融業界向けなどに伸長。新規株式公開市場の好転を受け投資関連分野も利益上乗せに寄与。決済関連も底固い。持ち分適用会社のカカクコムとの連携も順調。がんの治療情報に特化した医療ナレッジの提供サービスも立ち上げ。ジャスダック銘柄で時価総額上位。株価は5月安値でミニ二番底を形成、25日移動平均線の上昇を見込み、下値切り上げパターンを想定したい。過去大商い時の高値1,950円処を上回れば、需給好転でマド埋め(2,420円)までは早いか。ターゲット1,900円、ロスカット1,240円 |
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7631 |
3,740円 |
2,770円 |
独立系の半導体商社。LTEや通信設備局向け下期増勢に加え、新分野の車載用途向けアナログICの伸びを見込む。セキュリティ機器も好調。海外比率高く、アジア・ブラジルがカギ。中型の景気敏感株。株価は26週移動平均線をサポートに上昇続くが、モメンタム低下は気掛かり。2008年安値からのN字波動はV計算値3,170円処で上昇一服。だが、下げない株価に上値余地あり。三角もち合い上放れれば、次の目安はE計算値3,740円処。上値遊びから6月相場に期待したい。ターゲット3,740円、ロスカット2,770円 |
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7716 |
4,290円 |
3,600円 |
主力の歯科製品は世界首位級。欧米向けの堅調がアジア向けをカバー。北米では販売網再構築の効果も。工業製品関連ではスマートフォンなどの部品加工用として機械装着用スピンドルが回復。今期は増収増益予想。輸出比率が高い。為替レートは1米ドル100円、1ユーロ135円想定。ジャスダック銘柄で時価総額は上位。自社株買いにも意欲的。株価は足元やや加熱気味だが、13週移動平均線をサポートに順調な右肩上がり。2005年高値3,600円を上回ったことで長期N字波動は上値追い局面へ。2000年安値時からの長期N計算値は4,290円処。V計算値なら6,200円処となる。ターゲット4,290円、ロスカット3,600円 |
- 出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証一部銘柄で5/28現在、時価総額が500億円以上、PER7倍以下、今期増収予想の中から、短期的な売られ過ぎや話題性を考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。