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2024年のプラチナは大統領選挙を睨み変動性大きく
2024/3/27
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
2023年のプラチナ価格は4月に1,134.95ドルをつけた後にピークアウト、11月には845ドル半ばの安値をつけほぼ一年を通して水準を切り下げる動きとなった。その一方で貴金属セクターのベンチマークである金価格は総じて堅調で、特に10月以降、地政学リスクが意識される中で水準を切り上げている。
直近のWPICの推計によると2023年は需給バランスが▲87万8,000オンスと3年ぶりに供給不足だった。パラジウムからプラチナへの触媒変更や世界の自動車販売が前年比+9.9%と好調だったことで触媒用のプラチナ需要が前年比+16.2%、工業用需要が+12.2%と堅調だったがETFを含む投機需要が年後半にかけて減少、前年比▲80.3%の大幅減少となったことがこれを一部相殺したが全体の需要は前年比+25.0%の大幅な増加となった。これに加えて供給がリサイクルの減少で▲2.4%となったことも需給バランスタイト化に寄与した。
昨年のプラチナ需給は供給不足だったが、プラチナ価格は下落した。Q123の投機需要を除く需給バランスは▲32万1,000オンスだったがQ423には▲16万3,000オンスと供給不足幅が縮小、これを受けた投機需要の減少(18万6,000オンス→▲9万オンス)が影響したと考えられる。
2024年はどうか。需給バランスは▲41万8,000オンスと、供給不足ではあるものの前年と比較して需給はやや緩和する見通し。プラチナ価格低迷を背景とする南アフリカ生産者の減産などの影響で供給が▲4万2,000オンスと減少する一方で需要は、自動車向けが引き続き堅調だが、2023年に記録的な増加となった化学、ガラス向けの需要が減少し、投資需要も低迷が見込まれていることから全体で▲50万1,000オンスの減少が見込まれる。供給不足幅が前年から縮小するため基本的には軟調な推移となるが、供給不足の状態であるため底堅い推移が予想される。
ただ、IMFの経済見通しでは2024年の経済成長率は前年比+3.1%(前年+3.1%)であることから、恐らく工業品などの実需動向がプラチナ価格を左右するというよりは、まだしばらくは投機需要動向に左右されやすい展開が想定される。実際この3年間のプラチナ価格動向に対する説明力が最も高いのはCFTCのファンド動向であり、特に投機筋の売りポジションは2020年以降で最高水準となっている。通常、投機筋は受け渡す現物を保有していないためこれらの先物ショートポジションは、需要増加観測や供給不安が顕在化したときに買い戻され、価格の押し上げ要因となりやすい。そもそも景気は2024年の後半に底入れして回復するシナリオを前提としているため、時間経過と共にこのショートポジションは解消され、価格を押し上げると考えるのが自然だ。
しかし、今年は米国の大統領選挙が予定されており、かなり早いタイミングでバイデンvsトランプの第2ラウンド開始が決まり、例年にない長期の選挙戦となる見込み。このことは選挙の投票日まで両候補の「リップサービス」が加速する可能性があることを示唆している。仮にトランプ優勢となれば、米国の孤立化・ドル回避の動きで各国(特に米国と対立している親中国など)の金準備が増加、金価格を押し上げてプラチナも連れ高となる展開も想定される。それ以前に減税の恒久化を含めた財政拡張策で消費が回復してモノの価格全体が上昇する展開も想定される。逆にバイデン大統領の続投が決まれば、国際協調路線維持で金価格高騰は抑制され、EV車の普及を後押しするなどの政策を推進した場合、広くガソリン車、ディーゼル車の排ガス触媒向けの需要減少期待が高まるため、プラチナ価格の下押し要因となることも想定される。
このように、どちらの候補が有利に選挙戦を進めるかが投機需要動向を左右し、プラチナ価格にも大きな影響を及ぼすことが予想される。2024年のプラチナ価格は変動性の大きな展開になるのではないか。
出所:CFTC
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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