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2024-04-21 10:34:56

米国産牛肉価格高値維持〜国内価格にも影響か

2023/7/12
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

米国の牛肉価格が高騰している。米国で食肉加工に回せる体重になった牛の価格指標である生牛価格は、6月初にザラ場で182.88セント/ポンドと過去最高値を更新した。ただし、この価格上昇は今に始まった話ではなく、実は2019年頃から始まったものだ。2019年の価格上昇は2018年に中国で発生した豚熱の影響で中国国内の豚肉供給が減少、「代替品」としての牛肉需要が増加したことが影響した。その後、コロナ・ショックが発生し、タイソン・フーズなどの大手パッケージメーカーの生産が停止することで牛肉の供給が減少、牛肉需給が逼迫して価格が上昇した。そして2021年頃から始まったラニーニャ現象の影響で穀物価格が上昇し、生産コストを押し上げたことも影響して価格はさらに押し上げられた。

長期にわたる異常気象の影響による飼料価格の上昇は、畜産業者のランニングコストを押し上げるため、と畜が進むことになる。実際、穀物価格が上昇し、干ばつの影響で米国の牧草価格も上昇したため2021年の北米のと畜頭数は3,363万頭、2022年が3,366万頭と、これは過去5年の最高水準となった。これにより肥育頭数も減少しており、畜産業者は牛群再構築のためにも出荷を手控えるとみられる。

出所:USDA

では最終製品である牛肉の需給見通しはどうか。米農務省の推計では、牛肉価格上昇の影響もあって米国の牛肉消費量は1,240万5,000トン(前年1,280万3,000トン)への減少が見込まれている。一方、2023年の米国の牛肉生産は上述の通り、出荷が手控えられるため前年比▲5.3%の1,220万1,000トンへの減少が見込まれている。しかし、供給不足の状態であるため米国の牛肉需給はタイトな状態が続くと考えられる、実際、米国の冷蔵牛肉在庫は5月時点で19万2,100トンと過去5年の最低水準(18万トン)まで減少しており、最も取扱数量が多いチョイス級の価格は原稿執筆時点で328セント/ポンドと高水準で推移している。

しかし、世界2位の生産国であるブラジル(前年比+22万トンの1,057万トン)、3位の中国(+22万トンの740万トン)の増産が米国の生産減少を相殺するため、世界全体の牛肉生産量は5,914万5,000トン(5,934万8,000トン)と、ほぼ前年と同程度の生産を確保できる見通しだ。一方、消費は5,745万2,000トンと供給を下回るため、需給バランスは緩和の方向であり、世界全体で見た場合には牛肉価格には下押し圧力が掛りやすい。とはいえ、上述の通り米国内の需給はタイトな状態が続く見込みであり、米生牛・肥育牛、牛肉価格は当面高値を維持すると予想される。

では日本ヘの影響はどうか。日本の国別の輸入量を見ると、直近12ヵ月の輸入シェアは米国が41.8%、豪州が37.4%と、この2国からの輸入が大半であり、かなり離れてカナダが9.5%の3位となっている。コロナ・ショックの影響が始まった2020年以降、調達先の多様化する局面が見られたが、基本的には米豪の供給に問題がなければ、両国からの輸入が優先されていることがわかる。これは輸入している牛肉の味の好みや用途などから、調達先変更の柔軟性はそれほど高くないことを示唆している。もちろん、米国産の牛肉価格がさらに上昇すれば、調達先の変更や外食産業は商品設計の変更などで対応すると考えられるが、米国産牛肉を完全にリプレースすることは難しいのではないか。この場合、今回の米国産牛肉価格の上昇は、日本の輸入牛肉価格の上昇につながり、食品価格の上昇を誘発、消費者ヘの影響は無視できなくなる。また、日本のコア消費者物価指数ヘの寄与度を見ると肉類を含む生鮮食品を除く食料が23.2%と最も高い。もちろんこれは円安の影響の方が大きいため為替動向にも左右されるが、足下の金融政策格差による円安の継続があればさらに輸入牛肉価格が高止まりさせるシナリオは有り得るのではないか。

出所:財務省

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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