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2024-04-21 11:55:11

PGM価格の上昇は2023年後半以降か

2023/5/24
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

自動車の排ガス触媒として用いられるプラチナ・パラジウムの価格は基本的に金価格と連動しやすいが、金・PGM(Platinum Group Metals)とも今年の3月以降、大幅に水準を切り上げている。3月上旬のFRBパウエル議長の議会証言ではタカ派な発言が繰返されたものの、3月10日の米シリコンバレー銀行の破綻、それに続くシグニチャー銀行の破綻を受けて金融危機懸念が高まり、金価格が上昇したことが貴金属セクターの価格上昇の切っ掛けとなった。しかし、PGMは工業金属としての色彩が強いため、景気の浮沈の影響を受けやすい株価との連動性も高い。そのため、5月11日には再び米金融不安が高まったことでPGMは価格水準を切下げる動きとなった。

出所:CME

PGMは上述の通り金価格動向に影響を受けるが、現時点ではインフレ沈静化目的で景気を鈍化させるための金融引締めが行われ、それを引き金とする金融不安などの「危機発生時のリスク回避の目的」で金が買われているため、逆に工業金属の色彩が強いPGMは景気減速の影響を受けて価格水準が低下しやすい。工業金属としての色彩が強いのはプラチナよりもパラジウムの方だったのだが、パラジウムは内燃機関搭載車からEVへの移行が進み、価格高騰に進んだパラジウムからプラチナヘのシフトも継続することから、恐らくプラチナの方がパラジウムよりも景気動向の影響をより強く受けると考えられる。

ではPGMの需給見通しはどうか。ジョンソン・マッセイ社の直近の見通しでは、2023年のプラチナの需給バランスは、鉱山生産とリサイクルを合わせた供給が前年比+33万1,000オンス、需要は主に投機需要の増加(+84万8,000オンス)が見込まれるため、▲12万8,000オンスの供給不足と昨年の74万オンスの供給過剰から一転、需給のタイト化が見込まれている。パラジウムは、同様に供給が+38万4,000オンス増加するものの、自動車向けの需要を含む工業需要が▲23万8,000オンスの減少となるため、全体では+2万5,000オンスの供給過剰(前年▲10万9,000オンスの供給不足)に転じる見通しであり、プラチナ需給はタイト化、パラジウムは緩和が見込まれる。ただし、プラチナの需給は投機需要を除くと+15万5,000オンスの供給過剰(前年+17万5,000オンスの供給過剰)であるため、米金融政策動向によっては、投機需要を含めたPGMの需給は両者とも供給過剰になる可能性も排除できない。結局、価格上昇には米金利引下げや景気底入れの確認、といった景気に対してポジティブな材料が必要になってくる。

今のところ危機が去るタイミングは、1.インフレが沈静化し、2.景気も底入れして、3.米国が利下げに舵を切っても問題ない状態になること、が必要になるため、今のFRBの主張するシナリオ通りであれば2023年後半〜2024年になると予想される。EV普及で自動車販売のPGM価格への影響は以前より緩和しているものの、やはり自動車販売の回復がPGM価格上昇の必要条件となる。そのため、それまではPGM価格は現在の価格水準を維持するものと考えられる。中国の景気が年初に期待されたように早期に回復過程に入ることも有り得るが、今のところ市場の想定よりも回復は鈍く、仮に回復があったとしても欧米の景気減速がこれを相殺するため、やはり欧米景気の底入れが必要になると予想される。

出所:中国汽車工業信息網、CME

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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