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2024-04-21 10:30:30

パラジウム価格は当面低迷〜急騰リスクは排除できず

2023/2/8
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

2023年の金属セクターは堅調に推移している。工業金属の最大消費国である中国が堅持すると見られていたゼロコロナ政策を見直し、一気に「開国」に踏み切った影響が小さくない。中国は2010年頃からルイスの転換点を迎えたと考えられ、労働人口の比率の低下は、住宅セクターの減速時の景気・住宅セクターの下支え効果を弱める。しかし、習近平政権になってから(前の政権が行った政策によるバブルもあるが)都合3回の住宅バブルが発生している。日本に置き換えると、住宅バブルが弾けた1991年以降、3回バブルが発生しているのと同じである。中国は日本以上に不動産にレバレッジが掛かっている仕組みであるため、労働人口の比率が低下して体力が落ちている状況では、今のうちにできるだけ早くこのバブルを潰しておく必要がある。というのはこのままバブルを放置すれば、先々さらに厳しい状態でバブルを潰す必要に迫られ、経済が危機的な状態に陥るリスクが高まるからだ。そのため、このバブルを抑制する方針に舵を切ったのだが、余りにも急速に抑制しすぎてしまったことに加え、ゼロコロナの堅持で部材調達や人材確保に支障が出て、不動産セクターが危機的な状態になってしまった。現在、中国は「不動産バブル整理のためには、不動産セクターを再稼働させることは必須」であり、昨年後半から資金繰り支援を中心とするテコ入れが行われ、年明けからはゼロコロナも解除となった。

パラジウムは主に自動車触媒に用いられるため、自動車販売の動向が重要になる。中国の自動車販売は、不動産販売に遅行して影響を受けるため、恐らく今年の年後半に掛けて回復することが期待される。しかし、それまでは需要の回復の遅れで価格は低迷する可能性が高い。

2022年のパラジウム需給は大幅な供給不足になった模様。ロシアのウクライナに対する軍事侵攻の影響でロシア制裁機運が高まり、最大生産国であるロシアからの供給が減少(というよりは輸入側がロシア産を回避か)している影響が大きい。現在はロシアに対する制裁強化や先行きの制裁強化のリスクを回避するため、ロシア産のパラジウム輸入を西側諸国は回避する動きを強めている。実際、日本のパラジウム総輸入量は減少しているが、ロシア産のシェアを直近11月で25.1%とピーク時の58.6%の半分以下に落とし、南アフリカからの調達シェアを53.0%と引き上げている。パラジウム総輸入量の減少は景気減速に伴う自動車販売回復の遅れによる。一方、ロシアとの関係が密な中国は、ロシア軍事侵攻前の年である2021年のパラジウムのロシア産輸入シェアは年平均で25.9%だったが、開戦後となる2022年は32.6%まで上昇しており、実際に輸入量も9,028キロと前年の6,319キロから増加している。これは親中国であるロシアに対し間接的に支援をしているためともいえる。

出所:中国国家統計局

では今後も支援のためのパラジウム輸入が増加するかと言えば、それは中国の自動車販売動向に依拠する。これはガソリン車販売の比率が高い米国でも同じだろう。このとき、1.世界景気は循環的に秋頃まで減速の見込みであること、2.中国の景気テコ入れ策も青天井で予算が付けられる訳ではないこと、3.中国の新エネルギー車の販売増加によるガソリン車需要の減速(ただし中国政府は2022年末で新エネルギー車向けの補助金を廃止)、などを考えると自動車販売の回復は世界景気が底入れすると期待される秋頃になると予想される。

ただしパラジウムの取引所在庫とETFの管理残高の水準は低く、需要顕在化時の「バッファ」は大きくない。また、CFTCのデータでは投機筋のショートが積み上がっている状態であり、景気に底入れ感(ないしは利上げ打ち止め感などのファイナンシャルな要因の顕在化)が出た場合に、急速に水準を切り上げる可能性も充分に有り得る状況といえる。当面、パラジウム価格は低空飛行が予想されるものの、今年は工業金属セクターが脱炭素などの影響で注目されている状況であり、思わぬ上昇リスクが顕在化する可能性も否定できない。

出所:Bloomberg、CME

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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