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2022年商品市場回顧と2023年の展望
2022/12/21
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
2019年に中国で報告された新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界的に大規模金融緩和と財政出動、感染防止のための物流制限が需給をタイト化させ、ほとんどの商品価格が上昇を続けていた。商品価格の高騰がインフレを助長しているものの、供給を増加させて価格を押し下げることは即時には不可能であり、22年初から米FRBを初め各国中央銀行は需要面を鈍化させる金融引き締めに舵を切るとの見方が強まった。この結果、金利は上昇、株は調整した。しかし2021年の夏から続くラニーニャ現象による異常気象、それに伴うエネルギー供給不足が幅広く商品供給に影響を及ぼしており、ほとんどの商品が金融引き締め観測とは裏腹に上昇してスタートした。この状況でウクライナにロシアが軍事侵攻、エネルギーや非鉄金属、農畜産品は上げを加速、消費者物価指数も大幅に上昇したため米国は3月に利上げに踏み切り、エネルギー、農畜産品以外の価格は下落に転じた。供給不安で高値を維持していた非鉄金属も4月の上海大規模ロックダウンを契機に下落に転じた。
それでもエネルギーの供給不安は継続していたためFRBは金融引締め強化を余儀なくされ、6月から利上げペースを通常の3倍である75bpに引き上げ、7月も75bpの利上げを行った。この利上げ幅の拡大が切っ掛けとなり、インフレ相場からディスインフレ相場に商品市場も転換、7月以降は下落する商品が目立った。足下は米利上げ鈍化期待によるドル修正安で商品価格は一時的に上昇に転じている。
出所:Bloomberg
2022年第4四半期の商品間の価格相関性を見ると、「エネルギー」「工業金属」「貴金属」などのセクター毎の相関性は高かったが、セクター間の相関性は低下した。またウクライナショックの影響で穀物価格の相関性が低下するなどの動きも見られた。米金融緩和が終了した2015年以降、固有の商品毎の需給ファンダメンタルズが重視されるようになったが、今後、金融引き締めが加速する中では供給過剰気味になる商品が増え(除く農畜産品セクター)、より需給要因以上に金融政策の動向が価格に影響を与える「金融相場」になる可能性が高い。そのため今年から2023年に掛けて米国の金融引き締めが起きる中では、総じて軟調な推移となりやすく、来年5月〜6月までは金融引き締めの影響は無視できないと考えている。特にエネルギーや非鉄金属などの景気循環系商品はその色彩を強めることになろう。
FRBは12月FOMCで明確にそれを否定したが、市場見通し通りであれば、来年後半〜再来年に掛けて景気刺激のための金融緩和が行われる可能性が高い。そうなれば再び実需の影響を金融政策動向の影響が上回る「金融相場」となり、全ての商品価格の相関性が上昇する可能性が高いと考える。金融政策の変更による先行き期待は、実需を伴う必要性がないため、利上げ打ち止めとなったあたりから先行して買いが入る可能性も有り得る。
そしてその後、脱炭素や脱ロシアを背景に上流部門投資が手控えられる中で、資源需要が増加するという構造変化による需給のタイト化が長期のテーマとなるため、再び長期の上昇局面入り(特に工業金属)になると予想される。2023年は価格下落に備えつつ、2000年以降に見られた長期の価格上昇リスクに備える年になるだろう。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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