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2024-06-13 03:00:46

2023年プラチナ価格は調整後上昇へ

2022/11/9
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

貴金属セクターの価格動向を占う場合、弊社は金を貴金属セクターのベンチマークとし、その価格動向を基準に銀やPGM(プラチナ、パラジウムなど)の価格見通しを策定することが多い。貴金属セクターの基準となる金価格は、2023年に掛けて恐らく水準を切下げる展開になると考えている。金価格は概ね米国債利回り、米期待インフレ率、その他の要因(リスク・プレミアム)の3要素で決定される。このうち、金価格に対する説明力が最も高いのが米国債利回りから期待インフレ率を引いた「実質金利」であるが、実質金利は金以外のインフレヘッジの手段である米国の物価連動債の利回りであるため、金価格との連動性が高い。しかし、この1年を切り出して金価格と実質金利の関係性を確認すると、相関係数は▲0.65まで低下している。背景にはリスク・プレミアムが上昇していることが挙げられる。恐らく米利上げに伴う新興国の財政不安や戦争による景気や政情悪化が織り込まれ、いわゆる安全資産需要が高まっていることがある。恐らく2023年の金価格は1,600ドル台前半に低下すると予想される。この分析結果は、金融引締めが行われたとしても、さほど金価格が低下しないことを示唆する。

金価格が下落する見通しであるためプラチナ価格も下落が予想される。2022年のプラチナの需給バランスは投機を含む需給バランスも、投機を除いた需給バランスも供給過剰の状態が続いた。ただし投機の売り圧力が強かったため、投機を除いた需給バランスは投機を含む場合よりも需給はタイトである。プラチナ実需の需給バランスに大きな影響を与えたのは、コロナ以降の半導体不足に伴う自動車販売の減少。コロナのワクチン開発成功から2年が経ち、徐々に自動車向けの半導体供給不足は解消に向かっており、今後、自動車触媒向けの需要の回復が期待されるため、プラチナ価格の押し上げ要因となり得る。

プラチナ価格に対する説明力は引き続きETFの保有残高、即ち投機筋の動向の影響が大きい状況に変わりはなく、センチメントで価格が動き安いのは事実。しかし、ETFに次いでプラチナ価格に対する説明力が高いのは、欧米の製造業PMIや中国のGDPといったマクロ経済統計。製造業PMIは欧米とも2021年後半にピークを迎え、減速基調であり、景気循環(4〜5年の在庫投資循環サイクル)が維持されるとすれば、2023年後半までは需要の伸びの減速が予想され、プラチナ価格を下押しすると予想される。

足下の価格が上昇して製造業PMIの動きと若干乖離しているがこれは、新規で積み上がっていた投機の新規売りポジションが、米国の金融引き締めペースの鈍化期待などを材料に買い戻されたことによるテクニカル要因によるものと考えられる。しかし、インフレ抑制の観点から欧米とも政策金利を引き上げ、量的緩和の解除も実施して実質金利は上昇する見通しであり、プラチナ価格の発射台となる金価格は上述の通り下落する可能性が高い。このことはファイナンシャルな面でもプラチナ価格に下押し圧力が掛かりやすいことを示唆している。

出所:マークイット、NYMEX

以上から、プラチナ価格は2023年前半は調整すると考えられるが、ロシア問題やラニーニャ現象発生に伴う南アフリカでの洪水発生や、インフレを背景とするリビングコストの上昇を受けた暴動・ストライキなどの影響で現物需給は統計以上にタイトであり、NYMEXプラチナ先物はバックワーデーションの状態であり、価格下落も需給面が下支えして更なる下落余地は限定されるのではないか。その後は、自動車向けの需要回復や景気循環の影響から2023年後半に掛けて再び上昇する展開になると予想される。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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