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金銀レシオは記録的な高水準
2022/9/8
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
新型コロナウィルスの影響によるロックダウンの拡大を受け、世界的に景気刺激とショック緩和目的の金融緩和策が行われた2020年に銀は大幅に上昇し一時29.13ドルをつけた。その後、ウィズコロナの時代を迎え、現在は18ドル程度まで水準を切下げている。銀は金と同様、安全資産としての側面を持つと同時に、太陽光パネルや電子部品に用いられるなど工業用金属としての側面も持っている。しかし、写真フィルム向けの需要が減少したことや、亜鉛や銅などその他の金属の副産物として生産されることから供給過剰になりやすく、現状でも投機の取引を除けば圧倒的に供給過剰な状態が続いている。その結果、投資資金の売買動向に価格が左右されやすい。このとき、金価格を銀価格で割った「金銀レシオ」が銀価格の水準を判断する上での参考になる。投機の動きが影響するため、比較的割高・割安といったことが価格を左右することが多いからだ。
今回の分析ではボリンジャーバンドを用いた。ボリンジャーバンドは移動平均線と標準偏差(バラツキ)を元に統計的な手法を用いて価格のレンジを推定する手法であり、2σのレンジを取った場合、統計的には95.4%のケースがこのレンジ内に収まることになる。下のグラフは月末時点のデータを元にした月次ベースのボリンジャーバンドだが、値動きが激しくなるとバンド幅が拡大し、値動きが小さくなるとバンド幅は縮小する。現在、このバンドの上限を超えており、統計的にはそろそろ金銀レシオが低下してもおかしくない。過去、このレンジを超えたケースはリーマン・ショックのあった2008年9月の122%、コロナ・ショックのあった2020年3月の124%と有事発生時に金銀比率のバランスが崩れたことはあったが、総じてこのバンドの上限(100%)に達すると調整的に金銀レシオは低下している。仮に金銀レシオが平均水準である66倍程度に回帰した場合、金価格が1,750ドル程度で推移したとすると、銀価格は26.5ドルまで上昇する余地があることになる。
出所:CME、FED
金銀レシオが低下するケースとしては、このグラフでは米ISM製造業指数が55を超えるような好況時で、かつ、金融緩和が行われている局面。この時期(緑の点線で囲んだところ)は金銀レシオがボリンジャーバンドの下限に張り付いている。しかし、リーマン・ショック後の大金融緩和時代と、プレ・金融緩和時代といった金融政策の大きな変化があったタイミング前後を比較すると、プレ・大金融緩和時代には景気減速時に金需要>銀需要となり、金銀レシオはボリンジャーバンドの上限に張り付いていたが、リーマン・ショック後の大緩和時代には、チャイナ・ショックやコロナ・ショックなどの市場混乱時に金が換金売りに押される特殊なケースを除くと、金銀レシオは概ねボリンジャーバンドの上限に張り付いているケースが多いことが分かる。先行き金融引き締めによる景気減速が想定される中では、金の方がリスク回避的に銀よりも選好される可能性が高いため、金銀レシオはしばらく高止まりし、銀は金に対して割安に推移すると予想される。しばらくの間、テクニカル分析を元にすれば金銀レシオはボリンジャーバンドの上限に張り付くのではないか。
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長期的に銀が金に対して割高になり、ボリンジャーバンドの下限に張り付くのは、太陽光発電の導入が世界的に拡大し、2002年以降に中国で見られた経済規模の拡大が次の世界景気のけん引役として期待されるインドでも発生し、銀の工業向け需要が増加するタイミングになるのではないか。それは早ければ2023年の後半以降に顕在化する可能性があると見ている。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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