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天然ゴム価格は上昇余地探る展開
2022/8/10
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
今年のシンガポール天然ゴム価格は年初から春頃にかけて上昇していた。天然ゴム生産国協会が3月時点で2022年の天然ゴムの生産量は1,410万7,000トン、需要見通しは1,433万トンと▲22万3,000トンの供給不足を予想するなど、景気の先行きへの懸念がそれほど強くなかったことに加え、ロシアの軍事侵攻によって競合商品である合成ゴムの原料となる原油価格が高騰したことが背景にある。しかしその後下落に転じ、5月頃から下げが加速した。価格下落の要因は複数あるが、最大消費国である中国が2019年のコロナウイルス発見以降、頑なに守り続けているゼロコロナ政策によって経済活動が断続的に強制停止されている影響が大きいと考えられる。天然ゴム価格に対する説明力が最も高い指標は中国のタイヤ生産であるが、これが特に影響を受けた。タイヤ販売に影響する自動車販売は、住宅販売の動向に左右される。自宅を購入→車庫保有で自動車購入、という流れになるからだろう。3期目を目指す習近平国家主席は少なくとも年後半の党大会まで一度決めたゼロコロナ政策を取り下げるとは考え難く、それまでの間は常にロックダウンによる強制的な経済活動停止のリスクは残存すると予想される。
出所:中国国家統計局、MRA
しかし、今後についてはむしろ天然ゴム価格は年末に掛けて上昇に転じる可能性が高いと考えている。というのも、中国の今年の経済成長目標は5.5%であり、達成困難な目標ではあるものの、メンツの問題もあってこれに近づける必要があることから、今後、住宅セクターや自動車セクターにテコ入れが有ることも間違いがないと考えられるため、中国の経済状況は総じて天然ゴム需要面にプラスに作用すると考えられるからだ。 また、これに加えて季節的に年末に向けて価格が上昇する傾向があること、異常気象による供給懸念が意識されることも価格の上昇要因となる。過去3年のデータを元に分析を行うと、最も天然ゴム価格に対する説明力が高い指標は海洋ニーニョ指数であり、ラニーニャ現象発生時にはゴム価格が上昇しているケースが多い。年初の予想では夏頃にラニーニャ現象が終息する見通しだったが、米海洋大気庁の予想では、秋口に一旦ラニーニャ現象が落着いた後、冬場に再びラニーニャ現象が発生する見通しとなっている。
出所:SGX
異常気象が発生すればこの数年確認されているように、東南アジア地域の生産が下振れし、価格を供給面で支える可能性はある。また、今のところ来年に掛けては下落する見通しである原油価格も、ロシア情勢次第では上振れするリスクもあるため、供給面・コスト面は価格の上振れリスクとなり得る。以上から、年末に向けて天然ゴム価格はむしろ上昇圧力がかかると予想しているが、ラニーニャ現象が発生しない、ないしは発生しても影響が限定された場合や、中国政府の経済対策の効果が限定されたり、米金融引締めがさらに加速した場合など、下向きのリスクも多いのも事実だ。恐らく方向性が見えてくるのは、中国の経済対策の効果が顕在化し、今年9月のFOMCで今後の金融政策の方向性がある程度見えてくる秋以降になるのではないか。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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