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2024-04-18 17:24:27

銀価格調整の可能性

2022/6/8
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

大幅に上昇していた銀価格は調整し、現在22ドル前後での推移となっている。コロナショック後に30ドルまで上昇していたが、米FRBがインフレ抑制のために利上げを急速なペースで行い、QT(バランスシートの規模縮小)も実施する方針を示したことで、高値で推移していた貴金属のベンチマークである金価格が下落、それに歩調を合わせる形で水準を切下げてきたからだ。しかし、下落のペースは金よりも早く、2022年初を基準とした時の騰落率は、原稿執筆時点で金が+1.0%であるのに対して、銀は▲6.3%と明らかに下落が顕著だ。なお、プラチナ(+3.0%)、パラジウム(+4.9%)は上昇しており下落しているのは銀のみである。なぜ銀がここまで売られたのだろうか。弊社は米国がコロナ禍から脱却し、経済活動が通常に戻りつつあることが要因ではないかと考えている。

まず、銀の需給バランスをSilver Instituteのデータを元に確認すると、2022年の需給バランスは▲50.2百万オンスの供給不足となる見込みであり、2021年の▲38百万オンスから供給不足幅が拡大する見通しである。これは主に、工業品、宝飾品などの現物需要が増加(合計+61.8百万オンス)するほか、投機需要(+45.3百万オンス)が増加することによる。しかし、投機需要は市場のセンチメントに左右されるため、いわゆる景気に連動する実需とは言い難く、これを除いて考えると、需給バランスは+236.1百万オンスの供給過剰となり、引き続き市場参加者のセンチメントや投機筋の動向に価格が左右されることを示唆している。

出所:Silver Institute、CME

少し視点を変えて2019年頃からの銀価格の動きを見てみると、米中対立の影響で景気が減速しFRBが断続的に利下げを行ったタイミングで銀価格は上昇しているが、その後、コロナの感染拡大によるロックダウンが米国でも発生、そのタイミングで換金売りに押されて下落している。しかし、銀価格は2020年3月頃から急速に上げ足を速めた。これは米トランプ政権がコロナの影響で職を一時的に失った人達や貧困層に対して補助金を支給したタイミングと重なる。

出所:米労働統計局、CME

このとき、本当に生活に困っていた人々にとってはこの補助金は生活の足しになったはずだが、一時的な休職、あるいは休職中も給与が一部支払われている中間層以上は、取得した資金を「運用に回していた」可能性は高い。銀は金と異なり安価であり、「貧者の金」と言われる。実際この時期、SNSの「レディット」で広がった銀を購入しよう運動も上げに拍車を掛けた。また、2020年7月にはバイデン候補がトランプ大統領への対抗政策として「太陽光パネル数百万枚設置」を公約したことで上昇に火が付いた。その後、2回補助金が支給されるが、いずれのタイミングでも銀価格は上昇している。

しかしその間、経済活動は回復し、労働参加率も徐々に戻り始めた。賃金をもらうよりも給付金をもらっている方が「トク」と判断した人達が労働市場に復帰しなかったため、2021年6月頃から共和党の州知事21人が6月から給付金の上乗せを終了する方針を示したことが切っ掛けとなった。こうなると「種銭」がなくなるためポジションを解消する人も増えたと考えられる。そしてその後、9月に給付金の上乗せは終了、このタイミングで労働参加率も急上昇し、銀価格に対する下押し圧力が強まる形となっている。

以上を考えると「コロナ前」に戻るのであれば銀価格は20ドル割れまで下落することになる。しかし、プレ・コロナの時には米政権による太陽光パネル設置の話も、ロシア問題を背景とした脱ロシア加速で欧州が太陽光パネル設置を新築住宅に義務づけること、などの追加の材料は含まれていない。また、上述のSilver Instituteの予想では投機を除く実需面でも前年からは需給が若干タイトになると予想されていることを考えると、当面は20ドルが下値として意識され、これをさらに下回るかどうかは、金価格動向に左右されることになると予想され、現時点で価格水準を断定するのは難しい。ただ、現在の銀市場が「転換点」に来ている可能性はあるため、金以上に銀価格動向は注視する必要があるだろう。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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