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2024-04-26 10:24:36

パーム油価格も上昇〜暴動発生・脱炭素の流れ逆転リスク

2022/3/3
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

パーム油価格が急上昇している。パーム油は脱炭素目的でバイオ燃料向けの需要増加が見込まれている油脂の1つであるが、今回、ロシアがウクライナに軍事侵攻を行ったことで、ロシア・ウクライナからの小麦輸出やひまわり油の供給が減少するのではとの見方を強めたことが背景にある。ただし今年のパーム油の価格上昇は、今回のロシアによるウクライナ侵攻のみが材料ではなく、むしろ異常気象の発生で生産が影響を受ける中で戦争による供給途絶への懸念が強まったことが価格上昇を顕著なものにしたようだ。

世界最大のパーム油生産国はインドネシアだ。インドネシアのパーム油生産はアジア通貨危機によって大打撃を受けたインドネシア経済が輸出主導型の経済成長を目指し、17世紀のオランダ植民地時代からインドネシア経済の主要部門であるプランテーション分野を強化する形でパーム油農園開発の外資参入を緩和したことがきっかけで大幅に増加した。その後、同国の原油生産が減少したこともあって、パーム油をエネルギー源として用いる政策に国として傾斜していった影響も無視できない。

今年2021-2022年度のパーム油の生産は、米農務省の見通しを元にすると最大生産国であるインドネシアのパーム油生産量は4,350万トン(前年比+100万トン)への増加が見込まれており、生産シェアは実に59.6%(前年58.2%)に達する。しかし、生産2位のマレーシアの生産が異常気象による洪水やコロナの影響で1,785万4,000トン(前年比▲140万1,000トン)ヘの減少が見込まれているため、世界全体では生産はほぼ横這いの7,299万9,000トン(+2万6,000トン)が予想されている。一方、需要もインドネシアが最も大きく、1,527万5,000トン(前年比+73万トン)、2位のインドも906万4,000トン(+65万5,000トン)、世界全体で7,321万5,000トン(+163万トン)への増加が見込まれており、需給バランスは▲21万6,000トンの供給不足と、5年振りの供給不足への落ち込みが予想されている。

このように、そもそも需給バランスはタイトな見通しだったが、2022年1月24日、インドネシア政府が国内のパーム油生産者に対して輸出量の20%に相当する量を国内向けに固定価格で提供することを義務づけた。同様の規制は同国が主要生産国である石炭にも適用されている。この政策的な輸出市場への供給減少も価格上昇の一因となった。なお、米農務省の需給見通しは異常気象の長期化を前提としていない。過去のパーム油価格の動向を見ると、他の穀物と似ているがラニーニャ現象が発生した年に顕著に上昇している。5年前に供給不足となった年もラニーニャ現象が発生しており価格は上昇している。今回のラニーニャ現象は3月頃で終了すると見られていたが、米海洋大気庁や日本の気象庁の見通しでは夏頃まで続くと予想されており、米農務省の見通し以上に需給バランスがタイト化する可能性はある。また、パーム油のみならず、代替関係にある大豆油価格も上昇が予想される。

これらの油脂類の問題は、エネルギーとして用いられるだけでなく、人間の食用としても用いられる点である。この価格上昇で国連食品価格指数のサブインデックスである油脂類価格は、既にジャスミン革命発生時の水準を11.8%も上回っている。ウクライナ・ロシアの戦争で発生する難民が各地に流入する中、食品供給の減少が発生することは各地で暴動リスクが高まる。戦争やロシアに対する制裁が長期化する可能性もあり、今年は引き続き食品価格が大きなリスクとなるだろう。

出所:FAO

このまま、食料品価格の上昇が続くようであれば、欧州を中心に世界的な流れとなっていた脱炭素の動きが逆転する可能性もある。脱炭素のために使用する資源は広範にわたるため「世界が平和であり、資源調達に問題がないこと」が実は脱炭素達成のためには重要な要素となる。しかし、現在はその途上にあること、再生可能エネルギーの供給が途絶すれば化石燃料や原子力に頼らなければならい状態に陥ることは、今回の風不足やウクライナ危機で明らかになった。そしてその調達の脆弱性が対立する国に有利に働く可能性もあることも明らかになった。この状況を緩和するために、過度な脱炭素へのシフトが見送られ、エネルギー向けに用いられる油脂の需要が減少する可能性も中期的にはありえると考えられる。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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