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2022-06-26 14:22:51

トンガ噴火の影響

2022/1/21
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

南太平洋の島国、トンガでフンガトンガ・フンガハアパイ火山が大規模噴火を起こし、噴火の影響への懸念が広がっている。日本にも津波が押し寄せ船舶が転覆するなどの被害が発生した。今回の噴火によって海底ケーブルにも障害が発生している模様で、現地の被害状況の把握が困難な状況になっている(原稿執筆時点)。今回の噴火は、学術的な分類では、1991年6月に大噴火を起こしたフィリピンのピナツボ火山の噴火と同規模とされ、火山爆発指数では上から3番目の6に当たるとされている。ピナツボ火山の噴火によって発生した噴煙は成層圏まで達し、噴出物が太陽光を遮って世界の平均気温が0.5度低下、日本では1993年にコメが不作となり、全国の作況指数が74と戦後最悪の数字となってタイからコメを緊急輸入せざるを得なくなった。今回も同様のことが起きるのではないか、との指摘が出ている。

このときの主要穀物の価格(小麦、トウモロコシ、大豆、コメ)をみると、噴火直後はほとんど反応が無かった。その後、小麦の価格が上昇を始めるが、米国の穀物生産が小麦からトウモロコシにシフトを始めて生産量が頭打ちとなる中で、エルニーニョ現象の発生が重なったためと考えられる。なお、本コラムではラニーニャ現象発生時に穀物価格が上昇するケースが多いとしているが、豊作となりがちなエルニーニョ現象も局地的に異常気象をもたらす可能性があるため、必ずしもエルニーニョ=穀物価格下落ではない。

小麦価格下落後、穀物価格は1992年にかけて下落するが、1993年6月〜8月にかけて米ミシシッピ川流域で米国市場に残る大洪水が発生、穀物生産・供給への影響で価格は上昇、先行して上昇していたコメ価格の上昇も手伝って大幅な上昇となった。これまでメディアで取り上げられているように、コメの不作が影響した可能性は高い。しかし翌年、コメは豊作となり洪水の影響も緩和したため穀物価格は比較的速やかに下落した。

出所:CBOT

農産品の生産は気温状況よりも降雨や干ばつの影響の方が大きく、かつ、地球の気温は温室効果ガスや噴煙だけではなく、太陽の黒点周期や地球内部の動きにも影響を受けるとされるため、ピナツボ火山が爆発したことのみ爆発後2年〜3年経過してから生産に影響を与えたと判断するのは難しい。トンガ噴火は温暖化の影響ではなく、何らかの変化が地球内部で起きたことによるものと考えるのが妥当だ。事実として、環太平洋地域での地震や火山噴火は頻発しており、昨年8月13日に小笠原諸島の海底火山、福徳岡ノ場で大規模な噴火が起きて新しい2つの島が誕生(既に海没)している。

今回の報道を受けて穀物のETFなどに買いが入ったようだが、上記の例の通りであれば時間差を以て生産に影響が及ぶため、かなり長期にわたって穀物のロングポジションを保有し続ける必要がある。また、火山の影響による不作が長期化する保証もない。それよりは、火山からの噴出物のうち、船舶の航行に影響が出る軽石が流出していることの方が目に見える危機としては影響が大きいのではないか。というのも、トンガの近隣国である豪州東部は、メルボルン港(ビクトリア州)、ニューキャッスル港(ニューサウスウェールズ州)、ブリスベン港(クイーンズランド州)などの重要な港が位置しており、小麦や石炭の輸出に影響が出ると考えられる。

なお、鉄鉱石やガス資源は主要な輸出港が西部に位置しているため現状、影響は軽微と考えられるが噴出物の落下度合いによっては影響を免れないだろう。遠方ではあるが、太平洋側に主要な輸出港が位置するチリなどからの輸出への影響も注視する必要があり、その場合には銅や亜鉛、ニッケルなどの供給にも影響が及ぶ。

また、トンガの噴火が沈静化せず、余り考えたくないが津波が発生して主要資源国の港湾自体に深刻な被害が及ぶ場合、港湾の混乱を通じて供給に影響が出ることはリスクとして忘れてはならない重要な点である。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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