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2024-04-17 02:09:25

米牛肉価格は高値維持〜日本の価格にも影響

2021/11/24
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

10月の米消費者物価指数は前月比+0.9%(市場予想+0.6%、前月+0.4%)、前年比 +6.2%(+5.9%、+5.4%)、コア指数が前月比+0.6%(+0.4%、+0.2%)、前年比+4.6%(+4.3%、+4.0%)と、実績が市場予想・前月を上回り、想定以上のインフレが進行していることが確認された。総合指数の上昇はエネルギー価格上昇の影響と、物流網の目詰まり継続と、食品部門では肉類の価格上昇が顕著だったこと、コア指数は半導体供給不足を背景に中古車や新車価格が上昇したことが影響したとみられる。しかし、やはりエネルギー価格の上昇が広くコストプッシュ型の価格上昇を助長したといえるだろう。恐らく原油価格は冬場が終わる2月頃に向けて調整すると見られるが、それでも前年比で高い水準を維持する見込みであり、当面、物価上昇圧力となり得る、また、米食品価格の上昇を牽引している肉類価格もしばらくは高値を維持する可能性が高い。

足下の米国の牛肉価格上昇要因は、大きく3つあると考えられる。中国の輸入増加、コロナウイルスの感染拡大、異常気象の3つだ。

牛肉価格の推移を少し長い期間で振り返ると、2019年頃から価格上昇は始まっている。2019年春先にかけての牛肉価格上昇は、2018年夏に中国で発生した豚熱の影響で中国国内の豚肉供給が減少したことによる。米農務省のデータを元にすると、2018年の中国豚肉生産が5,404万トンだったが、2019年は4,255万トン、2020年が3,634万トンと、大幅に減少していた。2021年は4,600万トンへの回復が見込まれているが、依然、豚熱発生前の水準は回復できておらず、2021年の生産は2018年比▲804万トンとなっている。中国にとって豚肉は重要な肉類であり、この間、中国は世界中から豚肉を買い集めた。そのため、豚肉生産が減少したものの、豚肉の消費量は、2018年が5,529万5,000トンだったのに対して、2019年が4,486万6,000トン、2020年が4,152万1,000トンとなり、2021年は5,040万トンとなる見込みで、生産の落ち込みほど消費は落ち込んでいない。しかしやはり、豚熱前の水準は回復しておらず、2018年比での消費水準は▲489万5,000トン低い。

しかし豚肉の消費が減少したことは、中国人が肉全体を食べなくなった、というよりはこの3年の間に豚肉の代替肉需要が増加し、それが定着したと考えるのが妥当だろう。実際、中国の牛肉消費は2018年の780万8,000トンから981万トンと+200万2,000トン増加している。これに伴い、中国の牛肉輸入は2018年の136万9,000トンから300万トンに急増している。この、中国の輸入増加が米国の牛肉価格の上昇の主因の1つである。2020年以前は、中国の輸入牛肉量とシカゴ生牛価格の間に相関性はほとんどないが、2020年以降は中国の輸入増加と共に価格水準が上昇していることが分かる。生牛価格に対する中国の影響が大きくなったことを伺わせるものだ。

出所:中国国家統計局、CME

2つめはコロナウイルスの影響である。コロナウイルスの感染が拡大し、2020年の春頃は、タイソン・フーズなどのパッケージメーカーでコロナのクラスターが発生し、生産が停止することで牛肉の供給が減少し、牛肉需給が逼迫して価格が上昇した。さらにこの後、人手不足による供給制限が継続したことや、在宅勤務増加に伴う自宅での消費増加で米国の牛肉在庫が減少し、冷蔵牛肉在庫の水準は過去5年の最低水準を下回った状態が続いている。3つめは広く農産品セクターに影響を及ぼすことで知られるラニーニャ現象の発生で、飼料となるトウモロコシや大豆の価格が高騰したことで、生産コストが上昇したことが背景に挙げられる。

出所:米農務省

今後についてはラニーニャ現象が再び発生しているものの、前回のラニーニャ現象が今年の5月に収束してからこれまでの間、飼料価格が低下したことで生産コストが低下したことや、ブラジルや豪州の生産増加を背景に生産は増加する見込みであり、供給面でも価格は低下する可能性が高い。しかし、同時に構造的な中国の牛肉需要の増加を背景に、商品価格に対する説明力の高い、需要を供給で割った需給率(高いほど需給バランスがタイトであることを意味する)は、2022年は96.9%と2021年比でほぼ横這いながら高い水準を維持する見込みである。また、最大生産国である米国の生産は1,230万6,000トン(前年比▲37万8,000トン)と減少し、需給率も99.6%と2021年の99.5%から上昇する見込みであることから、米国産の牛肉価格は引き続き高い水準を維持すると予想される。

我が国の牛肉供給は6割以上が海外からの輸入品であり、そのうちの約4割を米国に依存しているため米国産の輸入牛肉価格の影響は小さくない。実際、この数ヵ月の輸入牛肉価格の上昇は顕著だ。これは牛肉価格の上昇もあるが、冒頭の米消費者物価指数の上昇にもあるように、日本以外の主要国はインフレへの懸念が強まっているため、早いタイミングで利上げを含めた金融引き締めが行われる可能性が高い。その結果、長期金利の上昇によって為替は円安圧力がかかり、輸入牛肉価格の上昇要因となり得る。国産牛肉についても、円安圧力が強まる中では飼料価格の上昇が予想されるため、恐らくこちらも高止まりするのではないだろうか。

出所:財務省

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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