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2021-11-29 08:21:17

脱炭素がもたらす穀物価格上昇リスク

2021/10/13
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

世界中で多くの商品価格が上昇しコストプッシュ型インフレへの懸念が高まっている。商品価格上昇の要因は商品によって異なるが、新型コロナウイルス発生に起因する労働力不足による生産障害、輸送手段の制限、景気悪化を防ごうとするための積極的な経済対策に加え、バイデン政権誕生で加速した脱炭素の動きが、既に欧州では先行して行われていた化石燃料供給の制限に拍車を掛け、冬場の気温低下観測を背景に化石燃料価格を押し上げたことも無視できない。しかしこれらの要因のうち、コロナウイルスの影響や気温変化の影響による化石燃料価格の上昇は時間経過と共に緩和すると予想されるため、一時的な要因と考えて良いだろう。しかし、「脱炭素」については一時的なものにならず今後も商品価格の押し上げ要因となり得、その影響は農産品セクターまで及ぶ可能性がある。

まず需要面であるが、仮に再生可能エネルギーを推進する政策が推進されれば、穀物の一部が燃料として用いられることが想定される。かつて米国でガソリンの添加材として、トウモロコシ由来のエタノールが用いられるようになってトウモロコシ需要が増加、トウモロコシ価格が急騰したことがある。ここで重要なのは、政策変更によって「不連続に」需要が増加したことだ。当時のブッシュ政権は「2005年エネルギー政策法」を2005年8月に成立させ、その前後からトウモロコシ価格は上昇を始め、米穀物価格が上昇しやすいラニーニャ現象が長期にわたって発生していたことと相まって大幅に価格は上昇した。同法案可決以降価格が上昇していることを考えると、制度変更で需要が増加する中で供給が制限(異常気象)されたことによる価格高騰と考えられる。その後、リーマンショックや農産品への投資規制の強化が行われて価格は下落したが、需要の急速な変化に供給が耐えられない例の1つといえるだろう。仮に同じことが大豆やその他の油脂類に起これば需要構造が変化して価格が上昇するのは想像に難くない。

出所:米海洋大気庁、CBOT

脱炭素の動きは需要面のみならず、供給面にも影響を及ぼすと予想される。農産品はエネルギー消費がさほど大きくないというイメージが強いが、米農務省のデータを元に人件費などの農作業に必要なコスト合計に占める燃料・電気、肥料の比率がどの程度かを調べてみると、トウモロコシは2016-2020年平均で費用の17.1%が肥料代であり、4.2%が燃料・電気代で生産コストの2割程度が化石原料由来と実は影響が大きい。実際、原油価格と比較してみると連動性は高い。

出所:USDA

  • ※2021年の肥料代・燃料電気代はWTI価格とアンモニア価格の過去データを元にした推計値

脱炭素が進む中で注目すべき点は、IEA(国際エネルギー機関)の推計では脱炭素を進めても化石原燃料の需要がゼロになることはなく、2050年にOPECのシェアが5割に達すると試算している点、脱炭素で二酸化炭素の排出を抑えるためにアンモニアを燃料として用いようとする動きが見られている点である。現在、世界のアンモニア(窒素)生産はUSGSのデータを元にすると2020年基準で1億4,400万トン、そのうちの8割が肥料向けに用いられている。もしこれを肥料ではなく燃料として用いた場合、かつてトウモロコシでエタノール需要増加が価格を押し上げたのと同じように、アンモニアの価格が構造的に上昇する展開が予想される。数量のイメージがわきにくいため経済産業省のホームページを参考にすると、仮に日本の大手電力会社が全てアンモニア20%の混焼を行った場合、年間のアンモニア消費量は2,000万トンになると試算している。これだけでも世界の供給量の13.9%に相当する(なお、経済産業省のホームページではアンモニアの世界生産を2019年基準で年間2億トンとしているため、供給量の10%に相当する)。この場合、肥料の代替が進まなければ農家の肥料コスト負担が増加し、農産品の生産コストを大きく押し上げることになる。これは構造的に穀物の生産コストを押し上げ、消費者が購入する最終価格も押し上げることになるだろう。

もちろん、化学肥料に頼らない有機農法へのシフトが世界的に進んでいるのも事実で、人体への悪影響を考えると将来的にはそちらにシフトしていく方が望ましいのかもしれないが、その移行中は経済的な痛みを伴う構造変化になると予想される。そしてそれは1年、2年といった短期間に達成できるものではない。このとき、食品価格が高騰する可能性があり財政的に厳しい貧困国で暴動が起きることも想定される。現在の流れが続くのならば構造的な価格上昇リスクへの備えが必要になると予想される。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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