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2024-03-29 15:37:23

需給時間差の原油価格への影響

2021/2/10
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

環境重視型社会へのシフトが世界中で大きな潮流となる中、「もう原油はいらないのではないか」という論調が強まっている。しかし、100年以上我々の生活に必要なエネルギー源の中核に据えてきたエネルギーである原油を、わずか数年で使わなくするということは非現実的である。原油は化学分野などへの活用範囲が広いうえ、電力などに比べて保管や輸送が容易である。そのため、仮に原油が用いられなくなるとしても10年単位での時間を要することになるだろう。当面原油の資源としての重要性は変わらないと考えられる。

では原油の価格はどのように決まるか。基本的にどの商品も同じであるが価格決定のカギを握るのが需要と供給のバランスである。当たり前だが需要が供給を上回っていれば価格は上昇するし、逆であれば価格は下落する。このときに重要なのが「どちらが価格を主導しているか」である。鶏・卵の議論になるが過去の価格推移を分析すると、需要が主導する形で生産・供給が行われると考えるのが適切で、景気が回復するないしは構造的な変化で需要が増加し、その需要に合わせて増産が行われるという過程を経る。ここで重要なのは、需要を満たすための供給が行われるまでに「時間差」がある。

為替や金利・債券などの市場では供給は非常に速やかに行われる。金融緩和の実施も政策金利の変更だけなら、それこそ数分でも可能だが、商品の増産はそうは行かない。原油についても蛇口をひねれば増産できるという訳ではないのだ。需要があることを確認し、生産コストを睨みつつ増産を経営陣が決定し、機材を準備、場合によっては新しい油田や鉱山を開発してようやく供給が行われることになるが、最も速やかに増産が行われるOPEC原油ですら、生産目標を安定的に達成するには数週間を要する。そしてこの供給までの時間差が価格の上昇をもたらすのだ。

逆もまた真なりで、減産もそう簡単にできるものではない。OPEC原油は油田のガス圧を低下させれば比較的速やかに減産できるが、それでも減産には調整の時間が必要になる。シェールオイルなども同様で、直ちに生産を停止した場合、油田の設備が破損してしまうこともあるため減産も慎重に行わなければならない。また、減産ではなくサイト(生産を実際行っている場所)を閉鎖するような場合は、その採掘権を有している生産国の意向を無視することはできない。サイトの閉鎖はそこで働く従業員の失業を意味するためだ。よって需要が減少したからといって減産は速やかに行われることはまれであり、それによって発生する時間差がやはり価格を押し下げることになる。このような仕組みで原油価格の高騰や急落が起きるのだ。

※季節性を排除するために、過去12ヵ月の移動平均を用いている。
※グラフの通り、供給よりも需要の変化が先になっていることが分かる。

現在、原油の価格は昨年4月に底入れした後、ほぼ一貫して水準を切り上げている。これを上記のロジックに照らして考えると、

1.コロナショックによるロックダウンで世界の原油需要が減少

2.OPECとロシアを含むOPECプラスは協調減産を実施

3.景気刺激のための財政出動や金融緩和で需要が徐々に回復

となる。このとき、1.と2.の間で産油国は協調減産を行うか行わないかで実は大もめにもめた。消費国向けの原油販売と自国の原油生産が安定するには価格の安定は欠かせない。そのため産油国、特にサウジアラビアは歴史的に見ても価格の安定を好む傾向が強く、今回のコロナショックでもサウジアラビアは協調減産を主張した。しかし、ロシアは国内生産者の反発もあってこの提案を拒否、翌月にサウジアラビアが原油の価格調整金を大きく引き下げる、という報復に出たことがある。これを受けて価格は急落するのだが、それに肝を冷やしてロシア側も減産を応諾せざるを得なくなった。つまり、もし、1.のタイミングで速やかに生産者が減産を行っていれば価格の急落はなかったことになる。しかし、生産者・消費者の利害が複雑に絡まり合うため協調減産は思っているほど簡単ではない。まさに「時間差」が生み出した価格下落といえるだろう。

ではその後はどうだったか。また時系列的に整理すると

4.各国政府・中央銀行は経済対策を実施、ロックダウンでコロナ封じ込めに動く

5.ロックダウンの効果と、コロナとの付き合い方が分かる中での経済活動の再開

6.ワクチン開発の成功と接種の拡大による需要の回復期待の高まり

という過程にある。原油価格は過去に例のない大規模協調減産以降上昇し2.〜3.(2020年4月〜6月)、4.〜5.で高値を維持(2020年7月〜10月)、6.で大幅に上昇(2020年11月以降)という感じだ。しかし、現時点でOPECプラスが意図的に増産に舵を切っていないため、価格の上昇が顕著になっている。先ほどの例とは逆の需要に合わせた供給増加の時間差発生が価格を押し上げているのだ。過去と同じ展開になるならば恐らく今年の4月以降にOPECプラスは増産に転じると予想されるが、その時間差によって春先にかけて一時的に価格がさらに上がる局面が出てくると予想される。その後、増産開始で価格は下落し、景気の緩やかな回復を受けて再び年末にかけて価格水準を切り上げる展開になるのではないか。

突発的な油田からの供給途絶や、●●ショックによる需要の喪失などの不確定要素が絡んでくるため簡単ではないのだが、このように需要を基準に増産・減産の時価差を考慮することで、原油価格動向を占うことが可能になる。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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