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大豆需給に劇的変化、トウモロコシ需給は強気基調継続~2025年1月度米農務省各種報告より
2025/1/17
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
1月10日に米農務省より①月例需給報告、②2024年12月1日現在四半期在庫、③冬小麦作付面積が発表された。1月の需給報告は新穀単収、生産量の最終数字であり、以降の米国需給のベースとなる。今回上記②の四半期在庫報告で大豆、トウモロコシ共に予想を下回る数字であったため、生産量の下方修正が想起された。以下大豆、トウモロコシ中心に需給状況の変化について報告する。
◆米国トウモロコシ需給
2024/25年度の需給見通しは以下の通りである。最大のサプライズは単収が11月時点予想の183.1ブッシェル/エーカー(以下bpa)から、179.3bpaに▲3.8bpa下方修正された点である(但し下方修正を受けても史上最高の単収ではある)。
結果、生産量は14,867百万ブッシェル(以下mbu)に下方修正され、需給ひっ迫に伴い飼料用、輸出向け需要を各▲50mbu、▲25mbu削ったものの期末在庫は前月見通しから▲198mbu下方修正の1,540mbuとした。
期末在庫率(在庫÷需要。在庫水準を年間需要で割って求めているため、在庫率10%の場合は1.2ヵ月分、20%であれば2.4ヵ月分の在庫があることになる)で見ると11.4%から10.2%への修正である。なお、四半期在庫報告による12月1日現在の実在庫は120.74億ブッシェル(以下12,074mbuと表記)で前年比▲74mbu少なく、市場の事前予想もほぼ同程度の幅で下回った。第1四半期の実消費は45.6億ブッシェルで、前年第1四半期の4.53億ブッシェルを上回った。
(出所:USDA)
◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバルでの生産量は米国の下方修正があった一方で中国が+2.92百万トンの増産となっている。国内需要は前月に続きブラジルで上方修正されたが米国の需要減との相殺で+81千トンの微増となった。 貿易量は、米国の輸出が減少した以外は大きな変化はない一方で、今月も中国の輸入見通しを増産の背景もあり▲1百万トン下方修正の13百万トンとした。これらを総合した結果、世界の期末在庫は前月見通しから▲3.1百万トン減の293.34百万トンとなり需給率は▲0.4%減の98.0%としている。
(出所:USDA)
◆米国大豆需給
大豆の単収も前月から▲1bpa下方修正の50.7bpaとなり、生産量は4,366mbu、▲95mbuの下方修正となった。需要面は微調整に留まり、期末在庫は▲90mbu減の380mbuとした結果、在庫率は再び10%を割り込む8.7%まで落ち込む計算である。
12月1日現在の四半期在庫はトウモロコシ同様に予想を下回る3,100mbuであったが前年同期比では+99mbu増、大豆の第1四半期実消費は16.1億ブッシェルであり前年同期比+13%であり需要面が堅調な状況は裏付けられている。また製品では大豆油が競合のパーム油等からの価格優位性が出ている事から輸出需要を500千ポンド上方修正している点が目立つ。
(出所:USDA)
◆大豆世界需給
大豆の世界需給は供給面では米国の生産量下方修正以外は、南米生産量含め前月から大きな修正はなかった。一方ブラジルが搾油好調など国内需要の増加もあり、世界の期末在庫は依然供給過剰ながら余剰幅が縮まる形で128.4百万トンとなっている。なお、中国の輸入見通しは109百万トンで前月から据え置きとなっている。
(出所:USDA)
◆小麦のハイライト
今年度冬小麦の作付面積は全冬小麦で34.115百万エーカー、前年比+725千エーカー増であった。また12月1日現在の在庫は1,570mbuであり前年同期を+148mbu上回り、9-11月の消費量は423百万ブッシェルで前年同期比+22%の数字であった。米国需給では需要面での微調整はあった程度で前月の需給状況から大きな変化はなかった。
一方世界需給では、注目されているロシアの輸出見通しについて前月から▲1百万トンの46百万トンとし、ウクライナの▲0.5百万トン減と合わせ、黒海地域らの供給減が示唆された。輸入国側では中国の輸入量見通しが▲0.5百万トン下方修正された点が目に付く。小麦の各種報告はいずれも事前予想の範囲内であり、小麦自体には中立的な内容と捉えられた。
◆今後の相場展開~米国の需給引き締まりと南米の最終生産量
先月はトウモロコシの背景に変化がある点を指摘したが、今回の需給報告を受けて大豆、トウモロコシ共に米国需給は適正水準から逼迫に変化して来た。南米の状況はブラジルの大部分で良好な状況が続いている一方でブラジル南部からアルゼンチンにかけては乾燥傾向がやや懸念材料となりつつある。今回の米国需給のタイト化が強材料として一旦消化された後は南米の状況との綱引きとなろう。
投機筋の動向を見るとトウモロコシは既にネットロングに転換して以降ポジションの積み増しが進んでおり、今回の需給報告をベースに更なる積み増しが想定できる。一方、大豆は南米の状況を背景に売り先行のポジションであった事から、今後ショートカバーあるいは新規ロングの積み増しへと動く可能性がある。いずれにしても米国需給の背景が変化した事で今後は更なる強気材料、例えばアルゼンチンでの一段の乾燥懸念等があれば値を伸ばすリスクは十分ある。
(出所:CFTC、CBOT)
※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(1月14日記)

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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