2025-07-10 10:30:25

イスラエルのヒズボラ攻撃の影響

2024/10/2
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

9月下旬からイスラエルはレバノンのヒズボラに対してポケットベル爆弾を使った攻撃を行い、更に大規模な空爆を実施、多数の民間人の被害を伴いつつヒズボラの指導者であるナスララ師を殺害、主要な司令官複数名の殺害にも成功した。ナスララ師はヒズボラを32年間率いてきた同組織の精神的支柱であり、今回の殺害の意味するものは、少し前に殺害されたハマスのハニヤ最高指導者の殺害とはかなりレベルが違う。ヒズボラは、イスラム教シーア派の武装組織でレバノンがイスラエルによって支配されていた1982年頃に誕生した組織であり、誕生にはイランの革命防衛隊が関与したとされる。設立の目的はレバノンに侵攻したイスラエル軍と戦うことだ。そのため反イスラエルであり、レバノン南部を占領していたイスラエル軍と戦うために武力を拡充、戦闘員は10万人いるとされロケット弾のほか、精密誘導弾も保有しているとされる。また、同組織はレバノンのシーア派住民から支持されており、政府議会にも議員や閣僚を送り込んでいるため単なる武装組織とは言い難い。

ガザ地区ヘの攻撃も含め、ここまでイスラエルは攻撃の手を全く緩めていない。報道ベースだとレバノンに対する地上軍の派遣も検討しているとされ、この場合、ヒズボラの反撃激化はもちろんのこと、周辺諸国まで拡大する怖れもある。しかし、米国は原則的にはイスラエル擁護であることもあって、中東諸国も含めて目立った行動は起こしていない。また、イスラエルと対立するイランも、景気悪化を受けてサウジアラビアなどとの連携を強め、西側諸国との対話を標榜、更につい先日、衝突回避のための米国とのホットラインを開設したばかりであるため、今のところ今回の問題が地域の全面的な軍事衝突に発展するシナリオはリスクシナリオの位置づけである。

しかし、実際にイスラエルがレバノンに軍事侵攻し、多くの無辜のアラブ人が殺害された場合、1.アラブ諸国とイランが共同してイスラエルに対抗する、2.ヒズボラを放置したことによって発生した問題としてイランとアラブ諸国との対立が再び発生する、3.中東で軍事衝突が起きなかったとしてもイスラエル支持の先進諸国でのテロ発生、といったシナリオが非現実的ではなくなってきた。今のところイスラエルvsハマス、イスラエルvsヒズボラの局地的な対立だが、ガス生産地域内での戦闘行為であることからガス供給ヘの懸念はある。しかし、産油国ではないため原油価格への影響は限定されている。仮にイランが戦闘に関与することになった場合、1.の場合は第一次オイルショックの時の様に、イスラエルに協力する国には原油を供給しない、ないしは高い値段でしか売らない、といったシナリオが想定される。2.の場合はアラブ諸国とイランが決別することになるため、ホルムズ海峡封鎖オプションが示唆される可能性がある。つまり、イランが関与した場合、原油供給・価格に影響が出てくることになる(なお、日本が輸入しているLNGは原油価格リンクが大半であるため、日本のガス・電力価格の上昇要因となる)。3.は恐らく米国などが対象になるが、消費国でのテロであり景気悪化とリスク回避でこちらは逆に、原油価格の下押し要因となる。
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原油供給の途絶が意識される1.2.の場合、売る現物を保有していない投機筋がまず原油の売りポジションを買い戻すため価格が上昇、その後も供給不安が維持される場合は「長期にわたる売りポジションを投機筋が保有したがらない」ことで原油価格の下値の水準が切り上がることになる。なお、現時点では投機筋のショート買い戻しは統計的には確認されていない。

出所:ICE

そして仮に戦闘行為の中で、具体的に油田が破壊される、ホルムズ海峡が封鎖されるということになれば実際に原油供給が減少するため、景気が減速していたとしても原油価格は大幅な上昇になる。これがどのタイミングで起きるかだが、世界景気が減速し、緩やかに主要国(除く日本)が利下げに走る中で、原油価格の高騰があればかなり明確に景気の下押し要因となるため、今後の中東情勢動向は世界景気への影響という観点で、注意する必要があることは間違いない。

新村 直弘

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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