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2024-11-14 03:33:39

プラチナ価格の上昇は2025年以降か

2024/9/25
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

◆2024年のプラチナ価格の振り返り
2024年のプラチナ価格は過去に比べれば価格水準はは低いものの、非常に大きな値幅での推移となっている。2023年12月、米FRBが2024年に複数回、利下げに動くとの期待が高まる中で実質金利が急低下、これを受けてプラチナ価格は急上昇し、2023年12月28日には1,015.44ドルまで上昇した。
しかし年明け以降に発表された米経済統計が想定を上回るものが多かったことや、FOMCメンバーのタカ派的な発言が相次いだ事で実質金利が再び上昇、同時にドル高も進行したことから年末の上昇を吐き出す形で価格は下落、2024年3月1日には868.55ドルまで水準を切り下げる動きとなった。4月はイスラエルによるイラン総領事館への攻撃が行われ、これに対するイランの報復懸念を受けた地政学的リスクが金価格を押し上げ、プラチナも連れ高となった。しかし、イランの報復が事前通告もあったとされる限定的な物になったことや、その後の米統計の改善を受けた利下げ期待の後退で再び水準を切り下げた。5月に入って再びプラチナ価格は上昇する。FOMCを受けてパウエル議長が次の行動は利上げではないという認識を示したことで利下げ期待が高まった事が背景。しかし、下旬に発表されたFOMC議事録ではインフレの場合は利上げを否定しないといった内容だったことから一転、売られる流れに。その後、米金融政策動向を材料に乱高下するが、実質金利が低下し、利下げ期待が高まっているにも関わらず価格水準を切り下げてきた。6月以降の下落は、景気の減速に伴う実需の減少観測が材料視されたと考えるのが妥当だろう。そして9月に入ってから再び価格が急騰、これは主要生産国であるロシアが、プーチン大統領の指示により重要資源の禁輸を検討し始めたとされることが材料視された形だ。9月FOMCは市場予想通りの▲50bpの利下げとなり、金価格が高止まりする中で、プラチナ価格もこの数ヵ月では高い水準で推移している。

年明け以降のプラチナ価格動向を見るに、正直、需給ファンダメンタルズが意識されたのは6月以降であり、前回3月のレポートでも指摘したように投機筋の売買動向が価格を左右している感が強いのは否めない。

出所:CFTC、CME

◆プラチナにも循環物色の可能性
投機の売買動向が価格を動かすことを所与のものとして受け入れたとしても、前提となる需給バランス見通しはどうか。WPICの公表している四半期レポートでは、2024年のプラチナ需給は供給が前年比▲7万1,000オンスの708万9,000オンスに減少する一方、需要が前年比+22万6,000オンスの811万8,000オンスに増加、▲102万9,000オンスの大幅な供給不足になると見込まれている。この時、投機需要を除く需給バランスも▲51万1,000オンスの供給不足となり、需給バランス的にはプラチナ価格に上昇圧力が掛かる展開になってもおかしくないことを示唆している。投機も「何の理由もなく買いを継続的に入れること」は困難だが、需給バランス見通しがタイトであることを勘案すると「何らかの切っ掛け」があれば、プラチナが上昇しても違和感はない。その意味で、まだ実際に禁輸にはなっていないが、ロシアのプラチナ生産は世界生産の12.8%(2023年、米地質調査所)に達しているため、実際に供給が絞られれば需給バランスはよりタイトになり、買いを入れる切っ掛けにはなる。とはいえ、まだ米景気を筆頭に世界景気は年後半~来年初めに掛けて減速する可能性が高い。貴金属で投機が価格を動かしているものの、投機筋の買いの前提となる需要の回復がなければしばらく価格は低迷することになろう。

出所:CME

しかし、景気後退局面でショックの発生を回避できれば、今年の年後半から来年の初めに掛けて景気が底入れすると予想されること、米利下げにより実質金利が低下することから恐らく金価格も高値を維持すること、その中で貴金属セクターの中ではプラチナ・パラジウムに割安感が出ていることから、循環物色の対象となる可能性はある。ただ、価格の上昇には切っ掛けが必要であり、どのタイミングで発生するか分からない供給途絶を材料にしなかった場合、前提となる需要の回復が期待される2025年以降になるのではないか。

新村 直弘

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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