金・プラチナ取引 > 金・プラチナ取引とは(金・プラチナ・銀の特徴) > 金・プラチナについてもっと知ろう!「マーケットレポート・コラム」 > 貴金属・コモディティレポート > プラチナ価格の上昇は2025年以降か
プラチナ価格の上昇は2025年以降か
2024/9/25
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
◆2024年のプラチナ価格の振り返り
2024年のプラチナ価格は過去に比べれば価格水準はは低いものの、非常に大きな値幅での推移となっている。2023年12月、米FRBが2024年に複数回、利下げに動くとの期待が高まる中で実質金利が急低下、これを受けてプラチナ価格は急上昇し、2023年12月28日には1,015.44ドルまで上昇した。
しかし年明け以降に発表された米経済統計が想定を上回るものが多かったことや、FOMCメンバーのタカ派的な発言が相次いだ事で実質金利が再び上昇、同時にドル高も進行したことから年末の上昇を吐き出す形で価格は下落、2024年3月1日には868.55ドルまで水準を切り下げる動きとなった。4月はイスラエルによるイラン総領事館への攻撃が行われ、これに対するイランの報復懸念を受けた地政学的リスクが金価格を押し上げ、プラチナも連れ高となった。しかし、イランの報復が事前通告もあったとされる限定的な物になったことや、その後の米統計の改善を受けた利下げ期待の後退で再び水準を切り下げた。5月に入って再びプラチナ価格は上昇する。FOMCを受けてパウエル議長が次の行動は利上げではないという認識を示したことで利下げ期待が高まった事が背景。しかし、下旬に発表されたFOMC議事録ではインフレの場合は利上げを否定しないといった内容だったことから一転、売られる流れに。その後、米金融政策動向を材料に乱高下するが、実質金利が低下し、利下げ期待が高まっているにも関わらず価格水準を切り下げてきた。6月以降の下落は、景気の減速に伴う実需の減少観測が材料視されたと考えるのが妥当だろう。そして9月に入ってから再び価格が急騰、これは主要生産国であるロシアが、プーチン大統領の指示により重要資源の禁輸を検討し始めたとされることが材料視された形だ。9月FOMCは市場予想通りの▲50bpの利下げとなり、金価格が高止まりする中で、プラチナ価格もこの数ヵ月では高い水準で推移している。
年明け以降のプラチナ価格動向を見るに、正直、需給ファンダメンタルズが意識されたのは6月以降であり、前回3月のレポートでも指摘したように投機筋の売買動向が価格を左右している感が強いのは否めない。
出所:CFTC、CME
◆プラチナにも循環物色の可能性
投機の売買動向が価格を動かすことを所与のものとして受け入れたとしても、前提となる需給バランス見通しはどうか。WPICの公表している四半期レポートでは、2024年のプラチナ需給は供給が前年比▲7万1,000オンスの708万9,000オンスに減少する一方、需要が前年比+22万6,000オンスの811万8,000オンスに増加、▲102万9,000オンスの大幅な供給不足になると見込まれている。この時、投機需要を除く需給バランスも▲51万1,000オンスの供給不足となり、需給バランス的にはプラチナ価格に上昇圧力が掛かる展開になってもおかしくないことを示唆している。投機も「何の理由もなく買いを継続的に入れること」は困難だが、需給バランス見通しがタイトであることを勘案すると「何らかの切っ掛け」があれば、プラチナが上昇しても違和感はない。その意味で、まだ実際に禁輸にはなっていないが、ロシアのプラチナ生産は世界生産の12.8%(2023年、米地質調査所)に達しているため、実際に供給が絞られれば需給バランスはよりタイトになり、買いを入れる切っ掛けにはなる。とはいえ、まだ米景気を筆頭に世界景気は年後半~来年初めに掛けて減速する可能性が高い。貴金属で投機が価格を動かしているものの、投機筋の買いの前提となる需要の回復がなければしばらく価格は低迷することになろう。
出所:CME
しかし、景気後退局面でショックの発生を回避できれば、今年の年後半から来年の初めに掛けて景気が底入れすると予想されること、米利下げにより実質金利が低下することから恐らく金価格も高値を維持すること、その中で貴金属セクターの中ではプラチナ・パラジウムに割安感が出ていることから、循環物色の対象となる可能性はある。ただ、価格の上昇には切っ掛けが必要であり、どのタイミングで発生するか分からない供給途絶を材料にしなかった場合、前提となる需要の回復が期待される2025年以降になるのではないか。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
金・プラチナについてもっと知ろう!
当コラムに関してご留意頂きたい事項
- 当コラムは投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定はお客さまご自身の判断でなさるようお願いいたします。
- 当資料に示す意見等は、特に断りのない限り当資料作成日現在の(株)マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)の見解です。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
- 本資料は当社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。
ご注意事項
- 買付時の手数料は、売買代金の1.65%(税込)、売却時の手数料は無料です。
- 本取引は金・銀・プラチナの価格変動により、投資元本を割り込むことがあります。
- 本取引は、政治・経済情勢の変化および各国政府の貴金属地金取引への規制等による影響を受けるリスクがあります。
また、かかるリスクが顕在化した場合、当社の提供するサービスの全部、または一部が変更、停止されるリスクがあります。 - 本取引は為替相場の変動により損失を被ることがあります。
- 本取引は、システム機器、通信機器等の故障等、不測の事態による取引の制限が生じるリスクがあります。
- 本取引は売値(Bid:お客さまが売ることの出来る値段)と買値(Ask:お客さまの買うことのできる値段)の差(スプレッド)があります。
- スプレッドは固定されるものではなく、需給バランスや、政治・経済情勢の変化にともない、当社の任意で変更いたします。
商品先物取引に関するご注意事項
商品先物取引のリスクについて
商品先物の価格は、対象商品の価格の変動等により上下しますので、これにより損失が発生することがあります。また、商品先物取引は、少額の証拠金で当該証拠金の額を上回る取引を行うことができることから、時として多額の損失が発生する可能性を有しています。したがって、商品先物取引の開始にあたっては、下記の内容を十分に把握する必要があります。
- 市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、短期間のうちに証拠金の大部分又はそのすべてを失うこともあります。また、その損失は証拠金の額だけに限定されません。
- 損失を被った状態で建玉の一部又は全部が決済される場合もあります。更にこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。
- 商品取引所は、取引に異常が生じた場合又はそのおそれがある場合や、JSCCの決済リスク管理の観点から必要と認められる場合には、証拠金額の引上げ等の規制措置を講じることがあります。
- 市場の状況によっては、意図したとおりの取引ができないこともあります。例えば、市場価格が制限値幅に達したような場合、転売又は買戻しによる決済を希望しても、それができない場合があります。
- 市場の状況によっては、商品取引所が制限値幅を拡大することがあります。その場合、1日の損失が予想を上回ることもあります。
商品先物取引の手数料について
商品先物取引のインターネットでの取引にあたっては、下記のとおり所定の手数料がかかります。
金(限日現金決済先物取引):片道1枚につき16.5円(税込)
銀(限日現金決済先物取引):片道1枚につき82.5円(税込)
白金(限日現金決済先物取引):片道1枚につき16.5円(税込)
堂島コメ平均(米穀指数先物取引):片道1枚につき330円(税込)
商品先物取引は、クーリング・オフの対象にはなりません
商品先物取引については、注文の成立後、その注文を解約すること(いわゆるクーリング・オフ)はできません。
金融商品取引法等に関する表示
商号等 株式会社SBI証券 金融商品取引業者、商品先物取引業者
登録番号 関東財務局長(金商)第44号
加入協会 日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 日本STO協会、日本商品先物取引協会