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米金融政策動向が銅価格を左右する展開
2024/9/4
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
春先から高騰し、LME銅価格は一時1万ドルを超えた。この時の価格上昇は投機筋の買いポジションの増加をみるに、投機的な買いが主導したと考えられる。投機筋が材料にしたのが、かねてから言われている脱炭素向けの需要の増加や、パナマの鉱山閉鎖問題を皮切りに鉱山からの鉱石(精錬銅の原料)の供給が減少していることなどだが、それ以上に材料視されたのはやはり最大消費国である中国の不動産市況の回復期待だろう。実際、中国の不動産開発投資の前年比伸び率と銅価格の間には高い相関性があり、昨年から今年までの銅価格に対する説明力は高い。春先からの価格上昇時は、供給面の問題が残存する中で中国不動産投資が前年比ベースで改善していたことに加え、中国政府の不動産問題解決に向けた対策期待も影響したとみられる。しかし、景気に先行性がある中国の製造業PMIは3月をピークに減速を続けていることから、6月のファンドの四半期決算を控えて利益確定の動きが強まった。また、7月の中国三中全会では不動産問題に対処する方針は示されたものの、具体的な対策の発表がなかったことから、さらに水準を切下げる動きとなった。それに、中国の不動産開発投資が改善したと言っても、そもそも前年比では大幅マイナスの状態が続いていることに変りはない。
出所:中国国家統計局、LME
中国政府が対応しなければならない不動産問題は、その規模が日本の10倍はあるとされている。中国中央政府は財政的な余力はあるが、今回の不動産問題の発生源とされる地方政府の財政状況は厳しく、予算的な対応余力は限られる。仮にこれらの不動産在庫を外国人投資家に不動産を売却して処理するといった手段も、中国の不動産を非居住者が取得するためのハードルが高いこと、国としてあらゆるものに対して監視を強めている現在の中国に、積極的に投資をしたいと考える海外投資家も限られることから、この問題は中国国内で解決せざるを得ない。この状況においてもまだ不動産バブルは弾けてはいないが、不動産問題を即時に処理した場合、本当にバブルが弾けて経済が混乱して暴動になりかねないことから、問題を顕在化させることなく、相当の時間を掛けて処理して行くというのがメインシナリオになると考えられる。
そうなると、需給以外のその他の要因がしばらくの間、銅価格に対する説明力が高くなることが予想される。その中で影響が大きいのがドル指数動向だろう。現在、FRBは金融緩和に舵を切る方針を明確にしており、6月頃からドル安が進行しているが、8月に入ってから銅価格との連動性を高めており、ドル安進行とともに銅価格は上昇している。しかし、当初は年内▲125bp程度の利下げがあるのではと市場はみていたものの、その後の米個人消費関連統計がそこまで弱い内容ではないため、本稿執筆時点では年内▲100bp程度の利下げにとどまると見られており、再びドルが修正高となっている。この結果、銅価格も再び軟調な推移となりやすい。ただし、投機筋が銅を物色する際、需給ファンダメンタルズがタイトでなければ、投機筋の主戦場である株価が上昇することが必要条件となってくるが、今のところFRBの利下げ期待を織り込む形で株式市場は比較的落着いている。そのため、銅価格の調整も限定されることになろう。
出所:LME、CME
問題はFRBの政策が後手になる「ビハインド・ザ・カーブ」状態となり、後追いで利下げを余儀なくされるようなショックが金融市場を襲う可能性が完全に排除されていない点だ。利下げのタイミングは通常、「経済が脆弱である」タイミングであるため、利下げが実施されて景気が底入れすると期待されている、9月・11月・12月にそのようなショックが発生して銅価格が急落する可能性も残る。仮にそのようなリスクの予兆があった場合、通常は流動性が低い商品から手仕舞い(多くの場合ポジション解消時には売られることが多い)されることが多いため、株や為替などと比べれば流動性が低い銅価格動向は注意して見ておく必要があるだろう。
仮にこの経済が脆弱なタイミングを乗り越えることができれば、銅は現在世界的に加熱している半導体向けの需要増加と、インドの近代化を目的とするインフラ投資加速などを材料に中長期的な上昇局面入りする展開が想定される。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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