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2024年8月度米農務省月例需給報告より
2024/8/14
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
8月12日に米農務省より月例の需給報告が発表された。以下同レポートの要旨を概観する。
◆8月末期末に向けての米国旧穀需給
2023/24年度旧穀の需給予想では、トウモロコシが輸出見通し増(+25百万)、国内食用需要減(▲15百万)のネットで前月見通し比+10百万ブッシェル増とした事から、期末在庫は▲10百万減の1,867百万ブッシェルとした。大豆は7月見通しから変わらず。
◆やや強気の小麦需給
小麦は現在収穫が進んでいる冬小麦、春小麦の生産量がポイントの1つであったが、前月見通しから春小麦、軟質冬小麦、デュラム小麦が下方修正、硬質冬小麦が上方修正となった。特に春小麦は週間作柄レポートでは良好な作柄が伝えられていた事もあり、強気のサプライズとなった。春小麦の修正幅は▲33百万ブッシェル、硬質冬小麦の修正は+13百万ブッシェルで、全小麦では▲26百万ブッシェルの下方修正であった。需要面では微調整に留まり、期末在庫はほぼ生産減の幅で下方修正、1,961百万ブッシェルとした。
◆作付面積の減少で若干引き締まったトウモロコシの新穀需給
トウモロコシは単収を183.1ブッシェル/エーカー(bpa)と予測、前月までの理論推定値181.0bpaを上方修正した。同時に農務省は作付面積を▲0.8百万エーカー、収穫面積を▲0.7百万エーカー下方修正した事から生産量は+47百万ブッシェル増に留まった。作付面積は6月末のレポートからの下方修正であるが、作付け最終段階で1百万エーカー弱が大豆にシフトした形である。需要面では輸出を昨今の価格下落を受けた競争力強化を見て+75百万ブッシェル増、一部国内需要減との相殺があるも総需要量は+60百万ブッシェルとした。結果期末在庫は2,073百万ブッシェル、前月見通しから▲24百万ブッシェルの下方修正となった。在庫増を見込んでいた市場には強気のサプライズであった。
◆増産で需給が緩む大豆の新穀需給
大豆は生産量増が概ね期末在庫増に繋がった形となった。作付及び収穫面積が+1百万エーカー増、単収+1.2bpaの53.2bpaで生産量見通しを+154百万ブッシェルの4,589百万ブッシェルとした。輸出需要を+25百万上方修正、既に高水準を見込んでいる国内搾油需要は据え置き、結果期末在庫は560百万ブッシェルとなり在庫率12.76%まで上昇している。
◆世界需給のポイント
小麦はEUでの減産をウクライナの増産で賄う図式が示された以外は大きな構造の変動はなかった。豪州が現状順調な土壌水分推移で+1百万トン増産を見込んでいるが、同国の生産量は生育が再開する9月以降の天候推移に大きく左右されるので、これからが勝負である。
大豆はEUでの減産を織り込んだ程度で、大きな絵に修正はなかった。輸出市場では米国の競争力強化からアルゼンチンのシェアを1百万トン程度奪う形を想定している。但しアルゼンチンの生産量は下方修正しておらず、価格競争力での勝負を見ている。
トウモロコシはロシア、ウクライナでの減産見通し(両国合計で▲1.4百万トン減)及び減産に伴う輸出量見通し減を米国がカバーする形としている。中国あるいは東南アジア向けで特にウクライナ産との価格競争となり、また大豆同様米中の政治的思惑も絡んでくる中、中国向けをどれだけ確保出来るかは微妙なところ。尚、主要輸入国の輸入量見通しに大きな変動は見込んでいない。
◆今後の相場展開?豊作ほぼ確定でショート筋のカバーのタイミングは?
需給報告も踏まえた今後の相場見通しであるが、米国での大豆、トウモロコシ生育は共に最も重要なステージはほぼ完了して、徐々に豊作が前提となって来ている。秋以降に向けては米国での収穫量の見極め、そして大豆、トウモロコシは南米中心に南半球での作付け、小麦は南半球での生育がポイントとなる。エルニーニョからラニーニャへの変化であるが現状監視水域での水温低下は見られるものの、低下スピードが鈍っており、ラニーニャ現象と定義づけられるレベルの発生は9月以降となりそうである。
出所:CFTC、CBOT
※穀物価格指数=小麦、トウモロコシ、大豆価格を基準日(2022年1月)の価格を基準に指数化し、単純平均したもの。
ラニーニャ発生時に顕在化しやすいアルゼンチン北部や西豪州での乾燥傾向が引き続き要注意であるが、当面グローバルには個々の地域での天候推移を見ながらの展開となろう。需給報告の需要面での実現可能性については議論の余地が残る一方で、本報告を境に穀物系は買戻しが入りやすい環境に変化しつつあり要注意である。また大豆は引き続きファンダメンタルズは弱い環境下で下値リスクを残しつつ、他商品市場の推移も見ながらの展開となろう。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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