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穀物市場分析の基礎(トウモロコシ編-その1)
2024/5/29
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
一般的に「穀物」とはイネ科の種子を食用とするものであり、トウモロコシ、小麦、米などが含まれる。この3種が世界三大穀物である。少し狭めた「粗粒穀物」はトウモロコシ、ソルガム(こうりゃん)、大麦、オート麦、ライ麦の総称を言う(米国基準)。粗粒穀物のうち、トウモロコシが生産量の約75%を占める。またシカゴ市場においてはトウモロコシとオーツ麦が上場されており、先物の取引が行われている。
前回、小麦市場とその分析の基礎について5月米需給報告を元に解説したが、今後、順次、穀物市場を分析する上で必要な知識や分析手法に関して解説していく予定だ。今回はトウモロコシについて解説する。
トウモロコシの用途
トウモロコシの用途は、輸出向けと国内向けに分けられ、国内用は飼料用、食品/工業用(コーンスターチ、グリッツ(トウモロコシ粉))、種子用に分けられる。工業用には近年生産量が大幅に伸びているエタノール用も含まれ、農務省報告では種子用と共に内数として別掲されている。
輸出市場では、かつては米国が世界輸出の6割を占めていたが、直近ではブラジル/アルゼンチンの南米2カ国が44%、米国28%、ウクライナ13%などとシェアが大きく変化している。一方輸入国はここ数年急激に輸入量が増加している中国が最大となっており、メキシコ、EU、東南アジア諸国、韓国、日本などが続いている。中国はかつて、自国生産でトウモロコシ供給を賄っていたが、国内生産では不十分となった。
トウモロコシの育成ステージ
トウモロコシの穀物年度は9月から翌年8月であり、先物市場では7月限までが旧穀限月(昨年収穫)、12月限以降が新穀限月となる。なお、9月限は一部で収穫が始まるタイミングではあるが、新たに収穫されたトウモロコシを9月限の受け渡しに使う事は難しいので旧穀限月と扱われるケースが多い。先物市場及び世界の現物市場で取引されているトウモロコシはデントコーンと呼ばれる品種で、見た目はスイートコーンに近いが澱粉含有量が高い点が特徴である。
トウモロコシをはじめとする穀物は、生育のステージによって注意すべき点が変わってくる。米国の場合、作付けは4月中旬頃から5月一杯を目途に行われ、十分な土壌水分と土壌の温度上昇が必要で、春先の気温が上昇しないと作付けを開始できない。トウモロコシが発芽した後、生育が順調であれば7月上旬から下旬にかけて最も重要な受粉期を迎えるが、イネ科の中でも特にトウモロコシは生育期間を通して潤沢な水分、気温、日照が必要であり、贅沢な作物とよく言われる。
発芽から約2ヵ月が経過すると、まず茎の先端に雄花が開花し始め、その1週間後位で雌花が開花する。雄花から放出された花粉を雌花が受けることで受粉が完了するが、風で花粉が飛散し雌花が受粉する他家受粉(風媒)と言われる形である。受粉期は約1週間で、この間が最も水分を使う時期であり、土壌水分の不足は致命傷となる。また一定の気温を超えると(華氏100度、摂氏約38度)花粉は飛散せず、受粉は失敗に終わる。
以上から作付け以降は土壌水分、気温の推移を注視しておく必要があり、天候の動向次第で相場は乱高下する(受粉期以降のステージについては別レポートで解説の予定。)
今後は北米の夏場の天候と、中期的な異常気象発生が鍵
5月の米需給報告は米国の需給はやや緩和するものの、世界全体の需給がタイト化の見通しであり、需給報告発表当日の5月10日のトウモロコシ市場はやや強気と受け止められ上伸した。5月中旬以降は米国での作付け進捗、あるいは好調なエタノール向け需要など強弱材料が入り混じる展開が続いている。今年の作付けは中西部の一部地域で降水量過剰により、やや出遅れたものの、ほぼ過去5年平均のペースで進捗している。
短期的には6月以降は気象状況が価格を左右する天候相場が本番となるが、現時点で土壌水分が潤沢である事は価格上昇を抑制しよう。一方で米プレーンズの一部及びロシア南部など乾燥が伝えられる地域がある小麦市場や、ブラジル南部での洪水被害が伝えられている大豆市場でやや強気の展開が予想されており、この後受粉までの期間で大きく売り込まれるリスクは小さいと考えられる。
中期的には地球規模の天候パターンは現在エルニーニョが終息しつつあり、夏前には中立状況、また夏以降はラニーニャに移行する可能性が高まっているが、ラニーニャがもたらす天候パターンの具現は秋以降になると予想される。そのため、中期的には夏場の北米の天候に加えて、ラニーニャの影響が徐々に強まる可能性がある秋に、南米中心に南半球での天候パターンに異常が見られれば、需給ひっ迫観測を強め、上値を目指す可能性は残る。投機筋は長期的なラニーニャの具現も見据えて買い先行で動き始めている気配もあり、夏場以降も上値リスク>下値リスクと見る。
(5月21日記)

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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