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日本投資戦略 〜米国大統領選の結果、日本株にはどのような影響が出るか〜
2012/11/9
投資調査部
11月7日(日本時間)に行われた米国の大統領選挙において、「オバマ大統領の再選が確実」という報道が場中に出たものの、当日の日経平均に大きな動きはなかった。「大統領選の結果を見るまではポジションを取りづらい。」などの解説も数多くあったわけだが、場中の取引だけに限っていえば、選挙結果は大して材料視されなかった。
メディアでは歴史的な接戦と煽っていたが、市場では既に「オバマ大統領の再選」を予想する参加者が多く、「ロムニー勝利」という結果以外は大した材料にはならないだろうと考えていた。
では、年末に向けて、更に言えば来年以降はどのようなスタンスで日本株投資に臨むべきなのか?何が材料になるのか?日米に限ってみれば、波乱なく大統領選を通過したことで、目先のイベントは米国の「財政の崖」問題に絞られてきた。
今回のレポートでは、その「財政の崖」についてではなく、あえて「米国の大統領選」の影響について書いていきたい。大して材料視されなかった、と書いたものの、4年に1回の大イベントについてこれだけの言及で終えてしまうのも味気ないので、過去のデータを基に材料を書き出したい。
表1:米国大統領選翌年のドル円相場のアノマリー
選挙翌年 |
前年勝者 |
選挙翌年終値−選挙年終値 |
傾向 |
---|---|---|---|
1989年 |
父・ブッシュ |
18.75 |
ドル高・円安 |
1993年 |
クリントン |
-13.01 |
ドル安・円高 |
1997年 |
クリントン |
14.68 |
ドル高・円安 |
2001年 |
子・ブッシュ |
17.13 |
ドル高・円安 |
2005年 |
子・ブッシュ |
15.12 |
ドル高・円安 |
2009年 |
オバマ |
2.36 |
ドル高・円安 |
2013年 |
オバマ |
? |
? |
- 出所:Bloomberg
- ※ここではプラザ合意以降を対象とするため、1988年の大統領選挙以降のデータを参照している
「ロムニー勝利でドル高」、「オバマ勝利でドル安」といった事前予想が色々なメディアで取り上げられていたが、個人的にこの点については特に意見はない。つまり、どちらが勝ったとしても、それだけでドル円相場のトレンドが決定されるとは考えていないからである。ただし、過去のトレンドからアノマリーを見出そうとすると、上の表からも分かるように、大統領選の翌年はドル高・円安になる傾向が強いように思える。
このアノマリーの背景には新政権への政策期待からドル買いといった、心理的なものもあるだろう。しかし、たかだか数個の標本から得られた傾向のみを根拠に相場に参加するのはリスキーなため、以下の図も見て頂きたい。
図1:日米金利差とドル円相場の推移(2005年1月1日〜2012年11月7日)
ドル円相場のトレンドを見るとき、個人的には日米の金利差を重視している。金利差でだいたい説明できますよね、と言うと為替の専門家に怒られてしまいそうだが、上図を見れば分かるとおり、少なくともここ10年近くに関して言えば、あながち間違ったことを言っていない。
日米金利差はサブプライム問題をきっかけに一気に縮小していき、それに伴いドル安・円高が進行した。俗に言う「円キャリー取引」の巻き戻しということになろう。
ここ最近は金利差がマイナス(つまり日本の方が高金利)になるなど、レアなケースも現れるなど、両国の金利差は限りなくゼロに近づいている。しかし、僅かながらも日米の金利差は再び開き始めており、それに連動するように徐々にドル円相場もドル高・円安方向に動き始めている。
今回のテーマは米国経済ではないため、詳細は避けるが、米国の経済指標は住宅市場を中心に好転している。その結果、米国金利は今後もジリ高となり、日米の金利差は更に広がっていくことが予想される。そうなれば、前述のアノマリーも加味して今後のドル高・円安シナリオは今以上に描きやすくなるだろう。
円安となると恩恵を受ける代表格は自動車をはじめとする「輸送用機器」になろう。目先では中国における生産台数の減少など、懸念される事項はあるものの、直近で出てきている決算内容は各社とも過度に悲観するようなものではない。下期が依然として厳しい経営環境であることは間違いないが、上記シナリオに基づけば、同業種の上値余地についても投資シナリオに入れるべきであろう。
表2:東証33業種 輸送用機器 時価総額上位5銘柄
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