2017年も残すところ、あと17営業日となったが、中旬までは各国中央銀行の金融政策発表や米国の経済指標発表など、重要日程が予定されているため、気が抜けないマーケットが続きそうだ。今回は各国の金融政策にフォーカスし、12月の発表内容と2018年の見通しからマーケットを予想してみたい。
<ココがPOINT!>
米連邦準備制度理事会(FRB)は0.25%利上げ実施の公算 |
米FRBは今月12日−13日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策を決定する。政策金利(FFレートの誘導目標水準)は現行の1.00%-1.25%から1.25%-1.50%に引き上げられる見込み。バランスシートの縮小については、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を、10月から月額最大100億ドル減らし、減額規模は将来的に毎月500億ドルまで拡大される。
2018年の金利見通しについては、9月時点で当局者16人中、過半数の11人は政策金利(フェデラルファンド金利)が2018年末までに2.00%以上にあることが適切との見方を示していた。来年は2回ないし3回の利上げ実施が予想されるが、インフレ進行の兆候は確認されていないため、2018年の金利見通しは12月に公表されるFOMC予測で引き下げられる可能性がある。当初想定より利上げペースが緩やかになるとの見方から、株式市場には好感されそうだが、ドルの上昇余地は限定的になりそうだ。サプライズになった場合に円高が進むリスクには注意しておきたい。
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※2018年のFOMCスケジュール:1月30-31日、3月20-21日、5月1-2日、6月12-13日、7月31-8月1日、9月25-26日、11月7-8日、12月18-19日
図1:直近2年間のドル円チャート(週足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
欧州中央銀行の金融政策は現状維持の公算 |
欧州中央銀行(ECB)は今月14日に理事会を開催し、金融政策を決定する。資産購入プログラムと各種政策金利は据え置きとなる見込みだが、資産購入プログラムについては10月26日の理事会で、量的緩和策である資産購入プログラムの規模縮小を決定している。2018年1月以降、国債や社債の購入額を月600億ユーロから、月300億ユーロへと縮小する。期間は2018年9月までの9カ月間としている。
2018年の金利見通しについては、来年前半より預金ファシリティ金利を現行の-0.40%から0.1ポイントずつ引き上げて来年9月時点で0%に戻す可能性がある。ただし、主要リファイナンス金利(現行0.00%)と限界貸付ファシリティ金利(現行0.25%)は2018年末まで据え置きとなる可能性が高い。11月のユーロ圏消費者物価指数は前年比+1.5%、食品・エネルギー除くコアインフレ率は前年比+1.1%だった。ユーロ圏のインフレ率は2018年以降も1%台で推移する可能性が高いため、金融緩和策の縮小を急ぐ必要はないと思われる。そうした状況で、来年はイタリア総選挙など欧州政治イベントがリスク要因になる可能性もあり、2017年4月以降に見られた一方的なユーロ高は見込みづらい。
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※2018年のECB理事会スケジュール:1月25日、3月8日、4月26日、6月14日、7月26日、9月13日、10月25日、12月13日
図2:直近2年間のユーロ円チャート(週足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日本銀行の金融政策は12月も現状維持の公算 |
日本銀行は今月20日−21日に金融政策決定会合を開催する。今回の会合でも金融政策の現状維持(日本銀行当座預金のうち政策金利残高に−0.1%のマイナス金利を適用。10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、保有残高の増加額年間約80 兆円をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。)が賛成多数で決定される見込み。前回10月30-31日の政策決定会合では、片岡審議委員が現在の緩和は「不十分」として反対している。片岡審議委員は今回の会合でも前回同様の理由で反対票を投じる可能性が高い。
2018年の金利見通しについては不透明ではあるが、日本銀行は「2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されている」と判断しており、マクロ的な需給ギャップが着実に改善していくと予想していることから、追加緩和策が導入される可能性は低いとみられる。
ただし、黒田総裁の任期は来年4月8日まで、岩田副総裁、中曽副総裁の任期は来年3月19日までとなっており、黒田日銀総裁が再任された場合は現行の金融政策の枠組みが維持される公算だが、黒田総裁以外の人物が次期総裁に起用された場合、金融緩和策はより強化される可能性がある。市場関係者の多くは黒田総裁の続投を想定しているが、そうならない場合、2%の物価目標の早期達成を図るために、追加の金融緩和策が講じられる可能性が高いと予想される。そうなった場合には円安が進みやすくなるが、総裁人事については定かな情報はまだないため、今後の状況を見守りたい。
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※2018年の日銀金融政策決定会合開催スケジュール:1月22-23日、3月8-9日、4月26-27日、6月14-15日、7月30-31日、9月18-19日、10月30-31日、12月19-20日
図3:直近2年間の日本国債3年金利チャート(週足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4:直近2年間の日本国債10年金利チャート(週足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
英中央銀行、豪準備銀行の動向も確認 |
英中央銀行
英中央銀行(BOE)は今月14日に金融政策委員会(MPC)を開催し、金融政策を決定する。今回は政策金利を含めた金融政策は変更なしと予想される。BOEは11月2日に約10年ぶりの利上げ(0.25%から0.50%に引き上げ)に踏み切ったものの、欧州連合(EU)からの離脱が景気に与える影響などに配慮して、早期追加利上げの必要性は低いとの見方を示している。
2018年の金利見通しについては不透明感が払しょくされていないものの、現時点では1回の利上げを行う可能性があるとみられている。インフレ率は2%の目標水準を上回っているが、10月時点がインフレ率のピークとなり、中期的には2%近辺に向かう可能性が高いとみられている。2018年の英中銀の金融政策は、雇用と経済活動を十分に支援することができる水準にとどまるとみられる。債券購入プログラムについては、2018年末までは現状維持と予想する。非常に緩やかな利上げペースになることで、EU離脱交渉での明らかな進捗がみられなければポンド買いにつながりにくく、株式市場にはいい状況になりそうだ。
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※2018年の英中銀MPC開催スケジュール:2月8日、3月22日、5月10日、6月21日、8月2日、9月13日、11月8日、12月20日
図5:直近2年間のポンド円チャート(週足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
豪準備銀行
豪準備銀行(中央銀行/RBA)は今月5日に開いた理事会で、政策金利(キャッシュレート)を現行の1.50%に据え置くことを決定した。金利据え置きは予想通り。ロウ総裁は、「非鉱業部門の投資見通しは改善しており、先行指標はしばらく前との比較で前向き」と指摘したものの、「家計消費の見通しが定かでないことが不確実性の原因。家計所得の伸びは緩やかで、債務水準は高い」との懸念を表明した。
2018年の金利見通しについては現行の金融政策が長期間継続される可能性があり、利上げ実施は早くとも11月以降になるとの見方が多い。賃金の上昇は抑制されていることや、インフレ加速の兆しは表れていないことが長期間の金利据え置きを可能にする。豪ドル高は多少是正されているものの、主要通貨に対して米ドルがやや下落しており、豪ドル高の是正がさらに進む可能性は低いとみられていることも考慮されそうだ。豪ドル高は雇用、生産活動を圧迫するとみられており、現時点で2018年前半までの早期利上げの可能性は台頭していない。
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※2018年の豪準備銀行理事会開催スケジュール:2月6日、3月6日、4月3日、5月1日、6月5日、7月3日、8月7日、9月4日、10月2日、11月6日、12月4日
図6:直近2年間の豪ドル円チャート(週足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日経平均は世界的なハイテク株の動向が重しにも |
足もとの日経平均は11月9日高値23,382.15円をピークに調整が続く中、12月6日の下落によって、支持線として意識されていた25日線を割り込んできた。米国の米税制改革法案の行方に左右させられる状況である。ただし、依然として13週線を上回っての推移であり、中期的な上昇トレンドは継続しており、上昇トレンドの中で短期的に調整ムードが高まりやすいところである。
米国は12月のFOMCでの利上げは織り込んでおり、日米金利差の拡大を意識したドル買いは期待しづらいところである。とはいえ、市場の関心は来年の利上げペースへの思惑から、上昇基調が強まる可能性がありそうだ。
一方で投資部門別売買動向では、11月4週の海外投資家の売買動向が現物株と先物合算で4245億円の売り越し(前週は3463億円の売り越し)となった。これで海外投資家の売り越しは3週連続となっており、この需給変化によってこれまで相場を押し上げてきた半導体関連などへの動向には引き続き注視する必要があるだろう。指数インパクトの大きいハイテク株に対する利益確定が続く可能性もあり、これが日経平均の重しになる点には注視しておきたい。
また、8日に先物・オプション特別精算指数算出(メジャーSQ)がある。メジャーSQ通過後は、海外勢はクリスマス休暇となるため、一気に商いが細るだろう。半導体関連への売りもいったんは落ち着く可能性があるが、物色が中小型株等、個人主体の売買に向かいやすいところである。レンジとしては13週線処の21,600円を下値メド、23,000円を上値メドとする。
図7:直近2年間の日経平均チャート(週足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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