11月8日(東京時間9日)に実施された米国大統領選挙では、トランプ氏が勝利と事前の予想を覆す格好となった。トランプ次期大統領の誕生を受けて、株式市場では政策に絡んだ物色が進んでいる。思惑的な売買が中心となっている一方、積極的な財政拡大への期待感から米国10年債利回りは2.3%台まで急上昇。為替市場では、円安ドル高が加速しており、東京時間22日3時過ぎには111円36銭まで上昇した。9日の安値101円20銭からの上昇幅は10円に達している。
今回は、トランプ相場での目先のポイントと各種マーケット売買動向から今後の売買戦略を考えてみたい。
目先のポイントはやはりFRBの動向 |
トランプ次期政権の公約として社会インフラの整備など様々な政策が伝わっているが、具体的な政策内容は、来年1月20日の大統領就任以降にはっきりするだろう。
よって、目先のポイントとして、米国金利の引き上げペースに関心が向かうと想定される。米連邦準備理事会(FRB)は、12月13-14日に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)で、今年初の利上げを実施すると見られている。昨年12月に次ぐ利上げ実施を市場はほぼ織り込んでおり、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が算出するFF金利先物(Fed Watch)は、22日時点で、利上げを予想する割合は95%に達している。昨年12月に利上げを実施した際、70%台をつけていたことから、12月の利上げはほぼ織り込まれたといえよう。米国10年債利回りは、昨年12月に米連邦準備制度理事会(FRB)が、利上げを行った際の水準と同じである。
もっとも、FRBはこれまでの市場との対話で12月利上げという落としどころを探ってきたのだが、トランプ大統領誕生によって、こうした対話がご破算となる可能性がでてきた。トランプ次期大統領は、4月20日の米誌「フォーチューン」とのインタビューにおいて、大統領に就任した際、FRBの権限を縮小させる取り組みを「間違いなく」支持し、議会によるFRBに対する監査を容認するとの考えを示した。また、イエレン議長が有益な仕事をこなしてきたと評価しつつも、「他の人材を配置するという考えに傾いている」ともコメントしている。さらに、現時点での利上げは米経済への打撃になる恐れがあるとし、FRBによる金利を低水準に維持する方針を支持と延べた。
トランプ次期大統領が、金利を引き上げたいのか、引き下げたいのか、今の段階では判断がつかない。大統領就任式は来年1月であることから、市場が混乱状態に陥っていない限り、12月の利上げは実施されよう。ただ、FRBが見ている17年2回の利上げに関しては、トランプ次期大統領の方針を確認しないことには織り込むことはできないだろう。トランプ次期大統領の考えひとつで17年のFRB利上げスタンスは大きく変わるかもしれない。
図1:直近1年の米国国債10年利回り(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図2:直近1年の米ドル円(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
2012年11月に似た動きになってきた!有効な売買戦略はシンプル? |
足元のドル・円は、7月戻り高値107円49銭を上抜けたことから、昨年12月から続く下げトレンドの転換を迎えたと言えよう。トランプ次期大統領誕生によって、市場のモメンタムは大きく変化した。8日時点(米大統領選当日)のCMEでの投機筋のドル・円ポジションでは、円買いポジションが減少し、円売りポジションが増加している。需給面でも変化が確認できたことから、2012年11月のような中長期的な円ショート(円売りドル買い)のポジション構築がみられるかもしれない。円売りドル買いの流れが強まれば、自ずと日経平均は上昇基調が強まる。
株式市場では、外国人投資家による買い方が大きく変化している。11月第2週の投資部門別売買高を確認すると、外国人投資家は先物と現物で合計6387億円買い越している。細分化すると、先物が2380億円、現物が4007億円。そして、先物でもTOPIX型を2111億円買っている。アベノミクス相場のスタート以降、外国人投資家はTOPIX型の先物を大量に購入し長期間保有していた。外国人投資家がかつてのようなTOPIX型の先物を買い続けるのであれば、この相場は中長期的にしっかりとしたものとなろう。
もちろん、トランプ次期大統領による環太平洋経済連携協定(TPP)脱退など保護主義政策が嫌気されて下げる場面はあるだろう。しかし、上記のような需給面での変化を考慮すると、下落したタイミングでは押し目を狙えると考える。短期的にドル高一服で17500円レベルまで下落した場合は積極的に拾っていきたい。225先物は、終値ベースの年初来高値(1月4日18380円)クリアだけではなく、取引時間ベースの年初来高値(1月4日18950円)を意識した上昇を想定する。なお、安倍首相が成長戦略など経済政策を打ち出せば、高値を更新する確度はより高まることとなろう。
図3:直近1年の日経平均株価(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4:直近5年の日経平均株価(週足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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