金は米中貿易戦争の緩和期待が圧迫
更新:2025/4/28
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金価格高騰で宝飾品需要は冷え込む
4月21日の週のニューヨーク金市場は、トランプ米大統領がパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の解任を検討していることを受けて史上最高値を更新したのち、米大統領がFRB議長の解任する意向はないとしたことや米中貿易戦争の緩和期待を受けて利食い売り主導で調整局面を迎えた。中心限月の6月限は一代高値3,509.9ドルを付けたのち、上げ一服となった。
トランプ米大統領は22日、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長を解任する意向はないと述べる一方、米FRBは金利を引き下げるべきだと改めて主張した。ただニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、「金融政策は適切な位置にある」としつつも、米政権の関税措置がインフレを加速させると同時に成長を鈍化させ、失業率を押し上げる公算が大きいため、近い将来において「金利政策を変更する必要はない」という見解を示した。またウォラーFRB理事は、大型関税の一部が夏まで延期された点に言及し、明確な見通しを得るには今年後半までかかると述べた。米国は相互関税の90日間停止を発表し、各国との交渉を進めている。米財務省は25日に声明を発表し、日本と韓国との初期の「生産的」な貿易協議にベッセント長官が励まされたと明らかにした。一方、CNNは25日、中国深センの素材輸入会社の関係者らを引用し、「中国が米国で生産された一部の半導体に対して報復関税125%を静かに撤回したとみられる」と伝えた。トランプ米大統領は中国に向けて交渉を促しており、中国との関税交渉の行方も確認したい。
米新規失業保険申請件数は22万2,000件と、前週から6,000件増加した。増加数はわずかにとどまり、米政権が掲げる関税措置で先行き不透明感が高まっているにもかかわらず、労働市場がなお底堅く推移していることが示された。4月の米ミシガン大消費者信頼感指数確報値は52.2と3月確報値の57.0から低下した。速報値50.8からは改善したものの、米関税措置を巡る経済的影響への懸念を背景に4カ月連続で低下した。1年先の期待インフレ率は6.5%と、速報値の6.7%を下回ったものの、前月の5.0%から上昇。4カ月連続で大幅な上昇が続いており、1981年以来の高水準となった。一方、国際通貨基金(IMF)は最新の「世界経済見通し」を公表し、米関税の影響を理由に米国や中国など多くの国・地域の経済成長率予測を引き下げた。貿易摩擦が悪化すればさらに低下すると警告した。世界経済の成長率予測について、2025年を2.8%、2026年を3.0%とし、1月時点の3.3%からそれぞれ0.5ポイント、0.3ポイント下方修正した。
金価格高騰で宝飾品需要が冷え込んでいることが伝えられた。ドバイの金市場では金の値上がりで消費者が他の商品を探す傾向が生じている。金の宝飾品の代わりにダイヤモンドや、金の使用量が少ない宝飾品を物色する顧客が増えており、金一辺倒の流れに変化の兆しが表れているという。ただ小売業者は、価格に敏感な買い手は値下がりを待つかもしれないが、そうした値下がりは一時的で、買い手は新たな価格水準にすぐ適応する傾向がある、とした。
4月25日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比6.02トン減の946.27トンとなった。トランプ米大統領がパウエル連邦準備理事会(FRB)議長を解任する意向はないとしたことや、米中貿易戦争の緩和期待を受けて利食い売りが出た。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、4月22日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは17万5,378枚となり、前週の20万2,210枚から縮小した。今回は手じまい売りが1万2,811枚、新規売りが1万4,021枚出て2万6,832枚買い越し幅を縮小した。
プラチナは米中貿易戦争の緩和期待が下支え
ニューヨーク・プラチナ7月限は米中貿易戦争の緩和期待が下支えになったが、ドル高に上値を抑えられた。中国政府は米国に対する125%の報復関税を巡り、米国からの一部輸入品を対象から除外することを検討していると伝えられた。トランプ米大統領は中国に向けて交渉を促しており、今後の関税交渉の行方を確認したい。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、24日のロンドンで19.23トン(前週末19.21トン)、25日のニューヨークで32.49トン(同32.49トン)、24日の南アで10.73トン(同10.73トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、4月22日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは5,677枚となり、前週の6,034枚から縮小した。
ニューヨーク金は一代高値更新後に調整局面
ニューヨーク金はトランプ米大統領がパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の解任を検討していることを受けて一代高値を更新したのち、利食い売りが出て調整局面を迎えた。中心限月の6月限は一代高値3,509.9ドルを付けたのち、上げ一服となった。米大統領はFRB議長を解任する意向はないとした。また米中貿易戦争の緩和期待が高まった。米国と各国の関税交渉の行方を確認したい。
4月28日からの週の注目ポイント
28日 | 南ア休場 |
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香港貿易収支(3月) |
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29日 | 昭和の日 | |
米卸売在庫(3月速報) |
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米S&Pケース・シラー住宅価格指数(2月) |
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米消費者信頼感指数(4月) |
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30日 | 鉱工業生産指数(3月速報) |
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小売業販売額(3月速報) |
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日銀金融政策決定会合1日目 |
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中国製造業購買担当者景況指数(4月) |
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中国非製造業購買担当者景況指数(4月) |
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中国財新製造業購買担当者景況指数(4月) |
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ユーロ圏域内総生産(1-3月期速報) |
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独消費者物価指数(4月速報) |
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ADP全米雇用報告(4月) |
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米国内総生産(1-3月期速報) |
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米雇用コスト指数(1-3月期) |
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シカゴ購買部協会景気指数(4月) |
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米個人所得・支出(3月) |
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米中古住宅販売仮契約指数(3月) |
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1日 | 中国、香港、欧州、南ア休場 |
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日銀総裁記者会見 |
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米新規失業保険申請件数 |
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米ISM製造業景況指数(4月) |
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2日 | 中国休場 |
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失業率(3月) |
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ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(4月確報) |
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ユーロ圏消費者物価指数(4月速報) |
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ユーロ圏雇用統計(3月) |
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米雇用統計(4月) |
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米耐久財受注(3月確報) |
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米製造業新規受注(3月) |
※重要度を3段階で表示
金 (現物1oz.あたり) 日足 6ヵ月

<参照>SBI証券>マーケットデータより
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