金は安全資産として買われ、史上最高値を更新
更新:2025/4/14
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米国のトリプル安が続くと支援要因に
4月7日の週のニューヨーク金市場は、リスク回避の動きを受けて急落したのち、米国が相互関税の一部停止を発表したことを受けて押し目を買われた。また米中の貿易戦争激化による米国のトリプル安も支援要因となって一代高値を更新した。中心限月の6月限は3月12日以来の安値2,970.4ドルを付けたのち、急反発して一代高値を更新し、3,263.0ドルまで上昇した。
トランプ米大統領は、中国が米国産品に対する報復措置を撤回しない場合、中国からの輸入品に50%の追加関税を9日から課すと警告した。中国財政省は、米国からの輸入品に対する追加関税率を当初発表していた34%から84%に引き上げると発表した。米大統領は9日、中国に対する追加関税を125%に引き上げ即時発効すると発表した。米ホワイトハウスは、中国に対する追加関税の税率が合計145%になると発表した。合成麻薬フェンタニル対策に絡み年初に発動した20%の関税を合わせた累計と説明した。米大統領は貿易戦争に終止符を打つために、中国とディール(取引)を実現させたいと述べたが、中国は11日、米国からの輸入品への関税を84%から125%に引き上げると発表し、強硬姿勢を崩していない。一方、ベッセント米財務長官は、新たな関税は必要な措置だと主張し、関税が米経済の景気後退(リセッション)を招くとの見方を否定した。また50カ国余りが交渉を求めて政権に連絡を取ってきたとしつつ、いかなる交渉も時間がかかると述べた。米大統領は9日、貿易相手国に対する相互関税について、国・地域ごとに設定した上乗せ部分を90日間停止すると発表した。一律10%の基本関税は維持する。各国との交渉の行方を確認したい。ただ投資家は米国資産を敬遠して欧州やその他の先進国市場を選好し、米国のトリプル安となった。ドル安が続くと、金は引き続き安全資産として買われるとみられる。
3月18〜19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、米経済は高インフレと成長鈍化が同時に起こるリスクに直面しているとの見解でほぼ一致していたことが分かった。一方、3月の米消費者物価指数(CPI)は前年比2.4%上昇し、前月の2.8%から伸びが鈍化した。前月比では0.1%下落し、2020年5月以来、約5年ぶりの下落となった。3月の米生産者物価指数(PPI)は前月比0.4%下落と予想外に下落した。市場予想は0.2%上昇。2月は変わらずから0.1%上昇に上方修正された。4月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値は50.8と3月確報値の57.0から低下し、市場予想の54.5を下回った。貿易摩擦激化への不安を背景に2022年6月以来の水準に低下した。1年先の期待インフレ率は6.7%と、前月の5.0%から急上昇し、1981年以来の高水準に達した。米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、トランプ米政権の貿易政策が今年のインフレを加速させるとし、米連邦準備理事会(FRB)にとって長期的な物価安定期待が揺らぐのを防ぐことが重要だとした。
4月11日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比20.35トン増の953.15トンとなった。米国が相互関税の一部停止を発表したことや米中の貿易戦争激化を受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、4月8日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは20万0,715枚となり、前週の23万8,434枚から縮小した。今回は手じまい売りが5万8,103枚、買い戻しが2万0,384枚入り、3万7,719枚買い越し幅を縮小した。
プラチナはリスク回避で一代安値を更新
ニューヨーク・プラチナ7月限はリスク回避の動きを受けて一代安値878.3ドルを付けたのち、米国が相互関税の一部停止を発表したことや金急伸を受けて下げ一服となった。米中の貿易戦争激化でリスク回避の動きとなったが、米国が相互関税の一部停止を発表すると、リスク回避が一服した。ただ中国の強硬姿勢から米国のトリプル安となると、金が安全資産として買われ、プラチナの下支えになったが、株安で上値は限られた。米国の自動車販売見通しが下方修正されたことも上値を抑える要因である。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、10日のロンドンで19.19トン(前週末18.97トン)、11日のニューヨークで32.49トン(同33.36トン)、10日の南アで10.74トン(同10.62トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、4月8日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の取組は794枚売り越しとなり、前週の1万4,975枚買い越しから売り越しに転じた。
ニューヨーク金は米国のトリプル安で一代高値を更新
ニューヨーク金はリスク回避の動きを受けて急落したのち、米国が相互関税の一部停止を発表したことを受けて押し目を買われた。また米中の貿易戦争激化による米国のトリプル安も支援要因となって一代高値を更新した。中心限月の6月限は3月12日以来の安値2,970.4ドルを付けたのち、急反発して一代高値を更新し、3,263.0ドルまで上昇した。トランプ米大統領は、米国に報復措置を講じていない国・地域を対象に相互関税を90日間停止すると発表した。しかし、投資家は米国資産を敬遠して欧州やその他の先進国市場を選好し、米国のトリプル安となった。ドル安が続くと、金は引き続き上値を試すとみられる。
4月14日からの週の注目ポイント
14日 | 中国貿易収支(3月) |
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15日 | 英雇用統計(3月) |
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ユーロ圏鉱工業生産(2月) |
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独ZEW景況感指数(4月) |
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米輸出入物価指数(3月) |
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米ニューヨーク連銀製造業景況指数(4月) |
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16日 | 機械受注(2月) |
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中国住宅価格指数(3月) |
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中国国内総生産(1-3月期) |
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中国小売売上高(3月) |
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中国鉱工業生産(3月) |
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英消費者物価指数(3月) |
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ユーロ圏消費者物価指数(3月確報) |
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米小売売上高(3月) |
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米鉱工業生産・設備稼働率(3月) |
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米企業在庫(2月) |
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対米証券投資(2月) |
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カナダ銀行政策金利発表 |
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17日 | 貿易収支(3月速報) |
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欧州中央銀行(ECB)理事会 |
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米住宅着工・許可件数(3月) |
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米新規失業保険申請件数 |
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米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(4月) |
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18日 | 豪州、香港、欧米、南ア休場 |
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消費者物価指数(3月) |
※重要度を3段階で表示
金 (現物1oz.あたり) 日足 6ヵ月

<参照>SBI証券>マーケットデータより
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