６月10日の週のニューヨーク金市場は、安値拾いの買いが下支えになった。米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）のタカ派姿勢に上値を抑えられたが、米消費者物価指数（ＣＰＩ）でインフレの伸びが鈍化した。中心限月となる８月限は2,358.8ドルまで戻した。米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）で、フェデラルファンド（ＦＦ）金利の誘導目標を5.25~5.50％に据え置いた。最新の金利・経済見通しでは年１回の利下げが見込まれ、12月利下げの可能性が示された。パウエル米連邦準備理事会（ＦＲＢ）議長は、このところの月次データは「幾分か緩和した」ものの、インフレ率が２％に向けて持続的に低下するという「一段と大きな確信」を得るには十分ではないと述べた。一方、５月の米消費者物価指数（ＣＰＩ）は前年比3.3％上昇し、事前予想の3.4％上昇を下回った。また５月の米生産者物価指数（ＰＰＩ）は前月比0.2％下落と、事前予想の0.1％上昇に反して下げに転じた。下落幅は昨年10月以降で最大となった。６月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値は65.6と、前月の69.1（確報値）から低下した。事前予想の72.0を下回った。昨年11月以来の最低水準で、３カ月連続の低下となった。ＣＭＥのフェドウォッチでは、米ＦＲＢの９月利下げの確率が62.0％（前週46.6％）に上昇した。今週は５月の米小売売上高などの発表がある。
　バイデン米大統領は13日、パレスチナ自治区ガザでの停戦実現に向け行動するよう、イスラム組織ハマスに呼びかけた。イスラム組織ハマスの幹部は、ガザでの停戦交渉について、ハマスが求めている停戦案の変更は「重要なものではない」とし、イスラエル軍のガザ地区からの完全撤退が含まれると明らかにした。イスラエル軍は人道支援物資の搬入を増やすため、ガザ南部の一部地域で時間を限定した軍事活動の「戦術的一時停止」を15日から開始したと発表した。一方、イスラエル軍はレバノン南部の村を空爆し、レバノンに拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラの現場司令官と戦闘員３人が死亡した。ヒズボラは13日、イスラエルの軍事施設９カ所にロケット弾と武装ドローン（無人機）による組織的な攻撃を行った。フランス、米国、イスラエルの３カ国は、イスラエルとヒズボラの緊張緩和に向けてフランスが年初に提示したロードマップ（行程表）を推進させる取り組みを強化する方針で合意した。
　６月14日のニューヨークの金ＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は前週末比10.36トン減の825.31トンとなった。米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）のタカ派姿勢を受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、６月11日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは23万3,926枚となり、前週の23万7,302枚から縮小した。今回は手じまい売りが7,797枚、買い戻しが4,421枚入って3,376枚買い越し幅を縮小した。

　ニューヨーク・プラチナ７月限は米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）のタカ派姿勢を受けて売り優勢となり、５月１日以来の安値945.7ドルを付けた。米消費者物価指数（ＣＰＩ）が予想以下となったが、米ＦＯＭＣでは年１回の利下げ見通しが示され、利下げ開始は12月になるとされた。一方、４月の中国のＣＰＩは前年比0.3％上昇した。３カ月連続のプラスとなり内需の改善を示す結果となった。事前予想の0.2％上昇を上回った。上海プラチナの出来高が増加し、中国勢の安値拾いの買いが入ったことは下支え要因である。
　プラチナＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は、13日のロンドンで24.84トン（前週末24.83トン）、14日のニューヨークで32.37トン（同32.22トン）、13日の南アで11.84トン（同11.72トン）となった。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、６月11日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは１万5,698枚となり、前週の２万2,566枚から縮小した。

　ニューヨーク金８月限は安値拾いの買いが下支えとなり、2,358.8ドルまで戻した。ただ米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）のタカ派姿勢に上値を抑えられた。５月の米消費者物価指数（ＣＰＩ）は前年比3.3％上昇し、事前予想の3.4％上昇を下回ったが、目標とする２％を大きく上回っている。今週は５月の米小売売上高などの発表がある。７日安値2,304.2ドルが目先の支持線である。