１月８日の週のニューヨーク金市場は、予想以上の米消費者物価指数（ＣＰＩ）を受けて調整局面を継続したが、米英軍がイエメンの親イラン武装組織フーシ派を空爆し、中東の緊張が高まったことに加え、米生産者物価指数（ＰＰＩ）が予想外に下落したことを受けて押し目を買われた。中心限月の２月限は昨年12月13日以来の安値2,017.3ドルを付けた。12月の米ＣＰＩは前年比3.4％上昇と前月の3.1％から伸びが加速し、事前予想の3.2％上昇を上回った。家賃が上昇傾向を維持した。一方、米ＰＰＩは前月比0.1％下落と事前予想の0.1％上昇に反して下落した。財（モノ）の価格が下落する一方、サービス価格は変わらずとなった。前年比は1.0％上昇と前月の0.8％上昇から伸びが加速した。ＣＭＥのフェドウォッチでは３月から利下げを開始し、年末までに年７回、175ベーシスポイント（ｂｐ）利下げを織り込んだ。米クリーブランド連銀のメスター総裁は、３月の連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）会合での利下げを検討するのは時期尚早との見解を示しており、米金融当局者と市場の見方はかい離している。今週は12月の米小売売上高などの発表がある。
　米議会で期限切れとなった企業向け優遇税制の更新および子供税額控除の拡充を巡り、協議を続けている。ただ一部の共和党議員は、政府機関の閉鎖を回避する条件として大幅な歳出削減を求めている。現行のつなぎ予算の期限は一部が１月19日まで、それ以外は２月２日までとなっている。税優遇措置に関する法案が可決されれば、インフレ圧力を再燃させるリスクがある。一方、中東の緊張の高まりを受けてスエズ運河を通る輸送ルートが混乱し、アジアから欧州への海上輸送運賃が跳ね上がった。中南米のパナマ運河でも、干ばつの影響で通航できる船舶の数が制限されている。サプライチェーンはこれまでと変わらず脆弱だと指摘されており、インフレが再燃する可能性が出ている。
　イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での攻撃に対し、米英軍はフーシ派の軍事拠点に対して空爆を実施した。フーシ派の報道官は反撃しないわけにはいかないと述べ、バイデン米大統領は「攻撃継続なら報復」と警告した。またイランはオマーン湾でイラク産石油を積載し、トルコに向かっていたタンカーを拿捕したと発表した。イスラエルのガザ攻撃も続いており、中東情勢の行方も引き続き確認したい。
　１月12日のニューヨークの金ＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は前週末比5.76トン減の863.84トンとなった。予想以上の米消費者物価指数（ＣＰＩ）を受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、１月９日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは18万8,614枚となり、前週の20万7,649枚から縮小した。今回は手じまい売りが１万9,041枚、買い戻しが６枚入って1万9,035枚買い越し幅を縮小した。

　ニューヨーク・プラチナ４月限は、予想以上の米消費者物価指数（ＣＰＩ）などを受けて売り優勢となり、昨年12月７日以来の安値914.0ドルを付けた。米英軍のフーシ派空爆や米生産者物価指数（ＰＰＩ）が予想外に下落したこと受けて押し目を買われる場面も見られたが、株安を受けて戻りを売られた。12月の中国の消費者物価指数（ＣＰＩ）は前年比0.3％下落し、３カ月連続のマイナスとなった。デフレ圧力が強く、中国経済の先行き懸念が出ていることもプラチナの圧迫要因である。今週は第４四半期の中国の国内総生産（ＧＤＰ）の発表がある。
　プラチナＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は、11日のロンドンで12.16トン（前週末12.18トン）、12日のニューヨークで31.02トン（同30.87トン）、11日の南アで11.89トン（同11.89トン）となった。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、１月９日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは２万3,541枚となり、前週の２万9,039枚から縮小した。

ニューヨーク金２月限は、予想以上の米消費者物価指数（ＣＰＩ）を受けて調整局面を継続し、昨年12月13日以来の安値2,017.3ドルを付けた。ただ米英軍がイエメンの親イラン武装組織フーシ派を空爆し、中東の緊張が高まったことに加え、米生産者物価指数（ＰＰＩ）が予想外に下落したことを受けて押し目を買われた。米連邦準備理事会（ＦＲＢ）の利下げ見通しに変わりがない。今週は12月の米小売売上高などの発表がある。