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金は米FRBの利下げ期待が支援
2023/12/25
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は市場と米金融当局者の見方のかい離を警戒
12月18日の週のニューヨーク金市場は、米金融当局者の早期利下げをけん制する発言が目立ったが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待を受けて堅調となった。中心限月となる2月限は4日以来の高値2,083.0ドルを付けた。米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長の発言を受けて、金融市場で米FRBが早期かつ迅速に利下げに踏み切るとの見方が急速に高まったことは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の機能とは相反するものと述べた。CMEのフェドウォッチで、来年3月の米FOMCの利下げ確率は78.1%(前週62.7%)に上昇した。また来年は米金融当局者が3回(75ベーシスポイント(bp)利下げの予想に対し、市場は6回(150bp)利下げを織り込んでいる。米資産運用会社ブラックロックのグローバル債券担当チーフインベストメントオフィサー、リック・リーダー氏は、債券市場は来年の米FRBの利下げに過度な期待を寄せているとし、行き過ぎだと指摘した。今後発表される経済指標と金融政策の見通しを確認したい。
第3四半期の米国内総生産(GDP)確報値は年率換算で前期比4.9%増と、改定値の5.2%増から下方改定された。伸び率は2021年第4四半期以来の高水準だが、事前予想の5.2%を下回った。コア個人消費支出(PCE)価格は2.3%上昇から2.0%上昇に下方改定された。11月の米個人消費支出(PCE)デフレータは前年比2.6%上昇し、伸びは前月の2.9%から鈍化した。伸びが3%を下回るのは2カ月連続。米連邦準備理事会(FRB)が来年3月に利下げに着手するとの見方が一段と高まった。米10年債利回りは3.83%と7月24日以来の低水準となった。
欧州市場でも債券買いが継続し、イタリア10年債利回りが3.55%と1年3カ月超ぶりの低水準を付けた。ドイツ10年債利回りは一時1.94%と9カ月ぶりの低水準となった。11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値は前年比2.4%上昇と前月の2.9%から伸びが鈍化した。ただコアインフレは3.6%と高水準で推移しており、欧州中央銀行(ECB)は高金利を維持するとみられている。ECBのデギンドス副総裁は、利下げについて語るのは時期尚早との認識を示した。
日銀金融政策決定会合で、マイナス金利を含む大規模な金融緩和政策の現状維持を全員一致で決めた。金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)も変更せず、先行きの政策修正は示唆されなかった。市場で政策修正が示唆されるとの見方も出ていたが、期待外れとなったことで円相場は1ドル=145円直前まで円安に振れた。ただ米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待を受けて円を買い戻す動きが続き、141円台後半まで戻した。JPX金はニューヨーク市場の堅調が支援要因だが、円高が続くと、上値を抑えられることになりそうだ。
英石油大手BPは18日、紅海を通過する全ての運航を一時停止したと発表した。イエメンの親イラン武装組織フーシ派による週末の攻撃を受けた措置。オースティン米国防長官は19日、フーシ派による船舶への攻撃が相次いでいることを受け、紅海における商船の安全確保に向けた多国間の取り組みを発表した。フーシ派幹部は、米主導の取り組みに対抗し、イスラエル関連の標的を攻撃し続けると表明した。また米国がイエメンを標的とすれば、米軍艦を攻撃すると警告した。ただ米主導の取り組みは実践面での詳細に欠き、多くの商船が引き続き紅海を迂回もしくは運航を停止する状況で、海運業界の安心感につながっていないという。
12月22日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比1.44トン減の878.25トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止見通しが強いが、米金融当局者の早期利下げをけん制する発言を受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月19日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは20万1,339枚となり、前週の18万8,233枚から拡大した。今回は新規買いが7,436枚、買い戻しが5,670枚入り、1万3,106枚買い越し幅を拡大した。
プラチナは1,000ドル直前まで上昇
ニューヨーク・プラチナ4月限は米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待や株高を受けて堅調となり、9月1日以来の高値998.4ドルを付けた。中国経済の先行き懸念が残っているが、上海プラチナの出来高が急増する場面も見られ、高値で中国勢の買いが続いていることも支援要因である。ただ金利先物市場での利下げを織り込む動きは行き過ぎとの見方も出ており、ドルを買い戻す動きが出ると、調整局面を迎えるとみられる。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、21日のロンドンで11.31トン(前週末12.29トン)、22日のニューヨークで31.04トン(同31.04トン)、21日の南アで12.20トン(同11.89トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月19日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万6,998枚となり、前週の7,709枚から拡大した。
ニューヨーク金は米FRBの利下げ期待が支援
ニューヨーク金2月限は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待を受けて堅調となり、4日以来の高値2,083.0ドルを付けた。米金融当局者の早期利下げをけん制する発言が目立ったが、米国内総生産(GDP)の下方修正や米個人消費支出(PCE)デフレータでインフレの伸びが鈍化したことを受けて利下げ期待が強い。米国債の利回りが低下し、ドル安に振れた。ただ市場と米金融当局者の見方はかい離しており、今後発表される経済指標で金融政策の見通しを確認したい。
12月25日からの週の注目ポイント
25日 | 豪州、香港、欧米、南ア休場 | ☆ |
景気動向指数(10月改定状況) | ☆ | |
26日 | 豪州、香港、欧州、南ア、カナダ休場 | ☆ |
米S&Pケース・シラー住宅価格指数(10月) | ☆☆ | |
27日 | 中国工業利益(11月) | ☆☆ |
28日 | 鉱工業生産指数(11月速報) | ☆☆ |
小売業販売額(11月速報) | ☆☆ | |
米卸売在庫(11月速報) | ☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
米中古住宅販売仮契約指数(11月) | ☆☆ | |
29日 | シカゴ購買部協会景気指数(12月) | ☆☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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